群青のマグメル ~情報収集と感想

『群青のマグメル』と第年秒先生を非公式に応援

群青のマグメル 第18話振り返り感想 ~それぞれの「らしさ」

第18話 決断 20P

原題:战士的空想(直訳:戦士の空想)

双生タイタンだけが相手でも窮地に陥っていたヨウたちの戦闘に実は爆発を生き延びていた3頭身のエリンのお頭までも加わり、絶体絶命の状況に追い込まれます。ここで一徒がヨウを即死級の攻撃から逃がすためにあえて攻防体の衝撃波を当てるという機転を利かせる場面があり、前回の動揺を挽回してきちんと頭の切れる探検家であるところを見せてくれます。単行本収録版では写植のスペースの関係か台詞が削られてしまいましたが、ヨウの「助かったよ…」という感謝に対し「どういたしまして」と返しつつも「恩に着れよ」と思っているところも食えない男である彼らしさを上手く表していて面白みがありました。この部分は少年ジャンプ+版のほうが中文版の台詞に近かったですね。

ただ即死は避けられたもの依然として正攻法では勝ち目のない状況にはかわりなく、これを切り抜けるためにヨウは一計を案じ、双生タイタンら相手に一対一での決闘を申し入れます。その後の連携の手際の良さから考えてこの直前の一徒と通信役のゼロにこっそり話しかけていた場面で、実は作戦についても耳打ちしていたとみるべきでしょう。この時にヨウがいかにも「少年漫画の漫画の主人公らしい」格好いいことを珍しく言って一徒たちが複雑な表情を見せるのですが、読者にはまるで一徒たちがヨウの覚悟に驚いているように見せつつも、本当はヨウの口の上手さに引きつつも感心しいる場面ということになります。

一騎打ちの提案はエリンの2人には利益のない提案のはずなのですが、戦士としての誇りを刺激する内容だったことで、双生タイタンは今までも理知的な性格を覗かせていた3頭身のエリンのお頭の忠告を振りきって提案に乗ってしまいます。圧倒的に優位な立場にあることでの油断もあったのでしょう。こうしたただの化物とは違う「人らしい」面が彼らの破滅を招いたのは皮肉な話です。

そしてヨウは全力の善戦で双生タイタンの注目を正面の自分だけに向けさせ、側面からの攻防体の奇襲を成功に導きます。瞬間移動可能な攻防体の性質と思わぬ方向からの攻防体の衝撃波という今回の前半で出てきた要素が上手く作戦に活かされいます。「少年漫画の主人公らしからぬ」卑怯さではありますがこうした機転こそがヨウらしさです。こんなヨウがいわゆる少年ジャンプの三大原則を宣言するギャグは彼が主流からやや逸れた人物像であることを浮き彫りにしつつも、苦戦を突破したことでの純粋な爽快感があります。作戦が上手く嵌り得意気になるヨウ、ヨウの魅力を再確認するゼロ、2人に若干引いている一徒という3人の個性が出た場面もユーモラスです。

目の比較(第34話まで)

因又(イン ヨウ) 因又(イン ヨウ)
因又(イン ヨウ)(第33・34話) 因又(イン ヨウ)(第33・34話)
拾因 拾因
ゼロ ゼロ
ゼロ(第33・34話) ゼロ(第33・34話)
エミリア・チェスター エミリア・チェスター
クー・ヤガ・クラン クー・ヤガ・クラン
クー・ヤガ・クラン(人間形態) クー・ヤガ・クラン(人間形態)
クー・ヤガ・クラン(第34話) クー・ヤガ・クラン(第34話)
クー・ヤガ・クラン(マスク装着・激昂時) クー・ヤガ・クラン(マスク装着・激昂時)
喰い現貯める者(クラウド・ボルグ) 喰い現貯める者(クラウド・ボルグ)

原皇ブレス

原皇ブレス
ティトール(人間形態) ティトール(人間形態)
トト・ビックトー トト・ビックトー
トト・ビックトー(第33・34話) トト・ビックトー(第33・34話)
オーフィス・ビックトー(第33・34話) オーフィス・ビックトー(第33・34話)
神名阿アミル 神名阿アミル
ルシス ルシス
一徒 一徒
ボルゲーネフ ボルゲーネフ
キミアイオン キミアイオン
蛍火 蛍火
黒獄小隊隊員(長官) 黒獄小隊隊員(長官)
黒獄小隊隊員1 黒獄小隊隊員1
黒獄小隊隊員2 黒獄小隊隊員2
田伝親父 田伝親父

引用

因又 31話 3P    
因又(33・34話) 33話 12P    
拾因 16話 1P 単行本第3巻(kobo版) 6P
ゼロ 2話 1P 単行本第1巻(kobo版) 78P
ゼロ(33・34話) 33話 5P    
エミリア・チェスター 12話 4P 単行本第2巻(kobo版) 113P
クー・ヤガ・クラン 30話 17P    
クー・ヤガ・クラン(人間形態) 27話 11P    
クー・ヤガ・クラン(34話) 34話 16P    
クー・ヤガ・クラン(マスク装着・激昂時) 20話 20P 単行本第3巻(kobo版) 105P
喰い現貯める者 5話 20P 単行本第1巻(kobo版) 145P
原皇ブレス 26話 21P    
ティトール(人間形態) 33話 19P    
トト・ビックトー 25話 10P    
トト・ビックトー(33・34話) 33話 15P    
オーフィス・ビックトー(33・34話) 33話 15P    
神名阿アミル 30話 14P    
ルシス 31話 18P    
一徒 27話 5P    
ボルゲーネフ 19話 10P 単行本第3巻(kobo版) 75P
キミアイオン 19話 10P 単行本第3巻(kobo版) 75P
蛍火 27話 3P    
黒獄小隊隊員(長官) 29話 20P    
黒獄小隊隊員1 29話 20P    
黒獄小隊隊員2 29話 20P    
田伝親父 5話 3P 単行本第1巻(kobo版) 128P

トンデモ仮説:34話のクーは喰い現貯める者の中の人に

考察

①クーは因果限界を伝って人界に来た

転移する以前のダーナの繭の種はクーの監視対象であった。しかし種が遭難中のスカイホエールに転移し人界に運ばれてしまったため、クーも種を追って人界にやって来た。スカイホエールが極星社クスク支部に到着するまでは、種の運搬自体は問題なく行われたとみられることから種と一緒にスカイホエールに転移したとは考えられない。クーは人間と同席してヘリに乗ることをヨウたちとさえ拒否しており、もし種とともに転移していたならば航行が不可能になるほどのトラブルを起こしたはずである。

クーは種の転移以外の方法で人界にやって来たはずだが、第24話でそれまでマグメル外縁に行ったことがなく外縁の要塞都市を見たこともないと発言している。そのため人界に来る際には通常の方法で陸や海、空を渡ったわけではない。

他のエリン達と同様に因果限界を伝って行けば空間を超えて人界に来ることができる。

②17話でクーの言った間諜とは喰い現貯める者のこと

第17話でクーは自分がダーナの繭の現状についてかなり詳しい情報を得ている理由について「種の傍に間諜を置いていたからだ」と述べている。

群青のマグメル

人界に帰還したスカイホエールと連続して喰い現貯める者(クラウド・ボルグ)の目が描写されていることから、喰い現貯める者は本体のクーとは異なり種ととともにスカイホエールに転移して人界にやってきたと解釈が可能である。

喰い現貯める者は第23話においてクーがヨウとの通信に利用したように、視聴覚をはじめとした感覚をクーと共有できる。また喰い現貯める者は頭部のみに縮小することや浮遊が可能なのでスカイホエールの人間に気付かれずに種を監視することもできる。

自分の幻想構造を間諜と呼ぶのはやや擬人化した言い方にも感じられるが、クーは他の場面でも喰い現貯める者を自分から独立した存在であるように語ることがある。

③喰い現貯める者は自律行動ができる

第20話においてゼロは喰い現貯める者のことを「独立して戦闘可能な珍しい幻想」だと解析している。単純に本体から離れての操作・攻撃が行えるというだけでは幻想構造の性質として珍しくないので、文字通りに独立して行動可能な性質が珍しいということを解説している可能性がある。

第24話でクーはゼロの部屋からゲームを勝手に奪ったことを咎められた際に「我は入ってないぞ 幻想構造が取ってきたんだ」と発言している。ゼロの言ったようにただの言い訳とも取れる言葉だが、言い訳でないとしたら喰い現貯める者がクーの判断とは無関係に自己判断で取ってきたことになる。この後喰い現貯める者はクーと2人(?)でゲームに興じていた。

群青のマグメル

④喰い現貯める者はコントロールの難しい特異な幻想構造

幻想構造は基本的に能力に目覚めた後のコントロールが容易だとされている。しかしヨウがマグメルで拾因とともに生活している間のクーは既に構造能力自体には目覚めていたにもかかわらず幻想構造を使用することが出来なかった。

群青のマグメル

中文版ではその時点では幻想構造をまだ完全覚醒させていないという発言がある。

喰い現貯める者は力の掌握が簡単なはずの幻想構造にもかかわらず、天才のクーが完全にコントロールできるようになるまで時間を必要とした。 

⑤第11話時点のクーはヨウやエミリアの情報を持っていない

第11話時点の人界ではダーナの繭以外に行ったことのないクーはヨウについての情報を持っておらず、構造者の知識があるというだけで完全に初対面のエミリアを強引に同行させ幾度もヨウについて聞き出そうとした。この時点でクーが持っている情報は因果限界の主である拾因と弟子のヨウがこの事件に関わっている可能性があるといった程度のものでしかない。少なくともヨウの居場所に全く心当たりはない。

⑥喰い現貯める者の紋章は第34話のクーの服の紋章と一致

クー・ヤガ・クラン

喰い現貯める者の紋章は上に膨らむXであり、下に膨らむXである第32話までのクーの実物の服の紋章とは不一致である。一致するのは第34話のクーの衣類の紋章である。
もし第33・34話がそれ以前の世界の並行世界だとすると、喰い現貯める者は並行世界のクーと繋がりを持つ可能性がある。

⑦喰い現貯める者は仮面をかぶっている

喰い現貯める者(クラウド・ボルグ)

下に口があることから淡色(薄紫?)の顔のように見えている部分は仮面である。

⑧マスクを被ったクーが特殊な描写をされた場面がある

クー・ヤガ・クラン

クー・ヤガ・クラン

第20・21話でクーはヨウに対して正体を隠すためにマスクを被った。その際にヨウに対する怒りが特に高まったと思しき場面でのみ通常のクーとは異なる瞳孔と服の紋章の描写が行われた。虹彩の境界が消失した目の描き方も、第32話以前ではこのコマのみしかない実物の服のXが上に膨らむ描き方も、喰い現貯める者と同一の描き方である。

まとめ

①第7話での拾人館への喰い現貯める者の襲撃はクーの制御下を離れた喰い現貯める者が自分の意思で行った

第7話の襲撃は拾人館の屋上で行われたため、もしクーが喰い現貯める者と感覚を共有させていたらヨウの居場所を知ることができたはずである。ヨウは襲撃後に拾人館へ戻り、エミリア救出の依頼を受けて拾人館に留まっている様子を喰い現貯める者から注視されてさえいる。しかしクーは急いで拾人館に向かうような素振りを見せておらず、ヨウの所在の情報も得ていない。

襲撃時はクーがまだマグメルにいたため距離が離れすぎていた、または因果限界を伝って空間的に不安定となっていたなどの理由で喰い現貯める者がクーの制御下を離れていたと考えるのが自然である。ヨウの落下後に追撃がなかったのは竜息穿甲弾の構造によって構造力が単独行動での限界に達したためと考えられる。「屋上で俺達を襲った現実構造者のエリンはあんたか」と問いかけられた際にクーが答えあぐねたのはクーが幻想構造者で襲ったのが幻想構造のためとも解釈できるが、襲撃のことを知らなかったためと解釈することもできる。

つまり喰い現貯める者は第7話の戦闘における大規模な構造やヨウを視界から逃さないようにするなどの複雑な駆け引きを自律的に行っていると考えられる。これは意思と読んで差し支えないほどの高度な判断能力を持つといえる。

実は喰い現貯める者に意思があると考えると、通常は仮面を被った状態、則ち正体を隠した状態だというのは示唆的である。襲撃時のシルエットのみしか確認できない状態の喰い現貯める者は一見これ以上ないほど正体を隠しているようでありながら、仮面を実質的に失うことでその正体をさらけ出した状態にある。

②喰い現貯める者がヨウを襲撃したのは並行世界のヨウである拾因に対して遺恨があるから

群青のマグメル

群青のマグメル

群青のマグメル

  ※拾因の一人称の翻訳は30話以降「俺」に修正

喰い現貯める者が初めて言語的な意思を発露させた際にまず呼んだのが拾因の名であり強い執着をうかがわせる。ヨウの名を呼んだのはインの次である。もしクーの意思が喰い現貯める者を通じて表れたというならクーが拾因よりもヨウを優先して探したのは不自然になる。また中文版ではクー自身が拾因をイン(因)と呼んだ場面はない。

喰い現貯める者がヨウに対して発したのは殺意や敵意に類する感情であるが、拾因の正体は並行世界のヨウである可能性が高く、そのヨウはその世界のクーと敵対する立場となっていた。更に拾因が自分のせいで家族を守れなかったと発言したことから拾因の世界のクーは拾因が関係して死亡したと考えるのが妥当であり、拾因の行動が直接の死の原因となった可能性さえある。

幼いクーがヨウと拾因を目撃した際に喰い現貯める者は拾因の正体に気付き、遺恨を深めたと考えられる。

そして仮面を被り正体を隠したのは喰い現貯める者だけではない。それは他ならぬ喰い現貯める者の本体であるクー自身である。

クーがマスクを被った状態でヨウと対峙して憤りを特に昂らせた際に、クーの目は虹彩の境界を失って喰い現貯める者と全く同じ描き方をされた。これは喰い現貯める者の怒りがクーの怒りを侵食した描写と解釈できる。さらにこの場面の1コマでのみ衣服の紋章が上に膨らむXとなっていた。俯瞰視点での遠近法による変形というのが表向きの理由だろうが、紋章が喰い現貯める者の構造物の証であるものに変化したということは、このコマにおいてクーは喰い現貯める者の怒りに完全に飲み込まれて支配・被支配の関係が完全に転倒させられてることを意味する。

この後クーはヨウからの攻撃の直撃を受けかけて一度頭を少し冷やし、ヨウと対峙し直した際には通常の描写方法に戻っていた。

結論 喰い現貯める者には並行世界のクーの魂が入っている

ヨウは異形のエリンから殺意をぶつけられたと感じたのは誤りであり、幻想構造を通じて旧友から参戦布告されたにすぎないと結論づけた。

しかしその結論こそが誤りなのではないだろうか?死して幻想構造というこれ以上ないほどの異形と化したエリン、それこそが喰い現貯める者の正体なのだ。ヨウは幻想構造とクーの気配が同じと感じたがそれも当然である。なぜなら喰い現貯める者の真実の姿とは、クーの構造力を食らい現れたもう一人のクーそのものなのだから。

 

でもこの仮説はただの考えすぎだと思います。

クーが幼なじみだと読者に気付かれないようにわざと省いた描写や、異形のエリン=双生タイタンというミスリードのための描写を都合のいいように拡大解釈しただけの仮説です。
それでももしゼロの背景についてもこの説に沿って考えるなら並行世界のゼロは死んでしまって3歩後ろの子供たちの6号になっているという仮説でも立てられるでしょうか。言動の端々や第10.5話の鍵探しと第33話の宝箱探しの対比関係から、第32話までのゼロの方が第33・34話のゼロより「大人」に思えはしますし、ゼロには構造物を通じて経験の継承があると考えてみるのも面白いかもしれません。

 

仮説通りの場合のダーナの繭編でのクーの行動

クーが喰い現貯める者にダーナの繭の種を監視させる  
極星社のスカイホエールがマグメルで遭難 1話
繭の種が喰い現貯める者と一緒にスカイホエールへ転移  
スカイホエールがクスク支部ヘ帰還 5話
種が萌芽してダーナの繭が完成 6話
喰い現貯める者が自己判断でヨウとゼロを襲撃 7話
クーが因果限界を伝ってダーナの繭へ到着する  
クーがエミリアの前に現れる 9話
クーがエミリアを認識する 11話
クーが双生タイタンから離れるためにクスク支部から移動 12話
因果限界の前でクーがヨウに対してエミリアを人質にする 19話
クーが喰い現貯める者を制御してヨウと戦闘 20話
クーとヨウの戦闘が終了 22話

引用

1 5話 20P 単行本第1巻(kobo版) 145P
2 24話 14P    
3 22話 18P (中文版・漫画行+)  
4 20話 10P 単行本第3巻(kobo版) 95P
5 11話 20P 単行本第2巻(kobo版) 109P
6 34話 11P    
7 21話 7P 単行本第3巻(kobo版) 112P
8 20話 10P 単行本第3巻(kobo版) 95P
9 20話 19P 単行本第3巻(kobo版) 104P
10 7話 19P 単行本第1巻(kobo版) 194P
11 8話 2P 単行本第2巻(kobo版) 7P
12 8話 3P 単行本第2巻(kobo版) 8P

第34話までの伏線のまとめ

2016/06/29 微修正

登場人物の違い

因又(インヨウ)・拾因

因又(インヨウ)・拾因

因又(第33・34話)の特徴

  • 黒い髪と黒い瞳
  • 濃色を基調とした装備に淡色のマント
  • 星形のマント留めと星のポイントの入ったグローブ
  • 帽子に四角いキャラのモチーフ
  • 現実構造と2つの幻想構造(因果限界神の見えざる手)の能力を持つ
  • 因果限界とは空間移動能力であり神の見えざる手とは触れたものを巨大化させる能力である

拾因の特徴

  • 白髪と黒い瞳
  • 目とそれ以外の顔立ちは必ずページを分けて描写される
  • 濃色を基調とした装備に濃色のマント
  • 耳(か角)の生えた丸いキャラのマント留め
  • 幻想構造(因果限界)の能力を持ち現実構造との両立を模索していた

因又(第32話まで)の特徴

  • 黒い髪に淡色(金茶)の瞳
  • 淡色(淡カーキ)を基調とした装備
  • 帽子に耳(か角)の生えた丸いキャラのモチーフ
  • 右胸や鞄に星のマーク
  • 私服には丸いキャラのモチーフ、星のマーク、10(拾は十の大字)
  • 現実構造と幻想構造(遍く右手・左手)の能力を持つ
  • 遍く右手・左手はそれ自体が巨大化する手装である

ゼロ

ゼロ

ゼロ(第33・34話)の特徴

  • 能力は不明(通信系の能力を持っていない?)
  • 濃色(黒?)の髪と淡色の瞳

ゼロ(第32話まで)の特徴

  • 探査機の幻想構造である三歩後ろの子供達という能力を持つ
  • 三歩後ろの子供達は中心探査機の1号、モニターの2号、コントローラーの3号、マイク付きヘッドホンの4号、イヤホン型通信機の5号、ラストナンバーで切り札だが未登場の6号の計6体の機器類から構成される
  • トーン(オレンジ色)の髪と淡色(薄い青緑)の瞳

クー

クー・ヤガ・クラン

クー(第34話)の特徴

  • 実物の衣服と眼帯に刻まれる紋章はに膨らむX

喰い現貯める者の特徴

  • 第32話までのクーの幻想構造物
  • 他の現実構造者の構造物を奪い取って自身の構造物にする能力
  • 喰い現貯める者とその構造物に刻まれる紋章はに膨らむX

クー(第32話まで)の特徴

  • 実物の衣服に刻まれる紋章はに膨らむX

ビックトー親子・原皇ブレス・ティトール

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トト・ビックトーの特徴

  • 第32話までのトトは女学生のような服装で10代の外見に思える
  • 第33・34話のトトは自活した探検家であり20代の外見に思える

オーフィス・ビックトーの特徴

  • 第32話までの舞台ではオーフィスは2年前に死亡している

ティトールと原皇ブレスの特徴

  • 両者とも末広がりのツリ目をしている
  • エリン形態のティトールと原皇ブレスのシルエットは角なども含めてほぼ一致する

第32話までと第33話・34話の世界は並行世界?

ヨウの虹彩の色や能力の内容、オーフィスの生死、ヨウ・ゼロは第32話までより年上に見えるがトトは年下に見えることなど、第32話までの舞台と第33・34話の舞台の違いはただの時間経過では説明の付かない事柄が多い。
またエリンと人間の対立が既に完全に表面化しているので単純な過去の話でもない。
並行世界におけるヨウ(=拾因)の過去の話、つまり「世界の敵」である拾因が世界を敵に回す前の話というのが比較的収まりの良い仮説となる。
この場合拾因は一時的なものではあるだろうが同一世界内での空間転移能力だけでなく、おそらく聖心によって並行世界への世界間転移能力を手に入れたことになる。

鍵の持ち主の変遷

第1の鍵

オーフィスヨウゼロ(第33話の4年前)

?→拾因

ヨウ(第10.5話の数年前)ゼロ(第10.5話)

第2の鍵

オーフィストト(第26話の2年以上前)

疑問点

拾因の目的

  1. 死後も能力を持続させていることや死を予見していたような発言から、拾因にとっては自らの死さえもが目的を果たすための計画の一部にすぎない可能性がある。
  2. 拾因はかつて家族を守れなかったことを悔いる発言している。この失った家族が目的に大きく絡んでいるのではないか。
    その家族とはゼロやクーのことか?
  3. もし拾因=並行世界のヨウならば拾因と並行世界のクーはヨウとクーのようにマグメルで出会って友になり一度別れたという仮定が立てられる。
    そして拾因が原因のダーナの繭事件が起こりようがないのでクーが人間界に来ることもなく全面戦争開始時に再会したことになる。
  4. なぜ拾因は人類からもエリンからも「世界の敵」と呼ばれるのか。
    拾因の計画にはどの陣営にも不利益となり世界中を敵に回すような内容が含まれるのか?
    もしくは元々いた世界全体を敵に回したことが第32話までの世界でも知られているのか?

  5. 「世界の敵」である拾因がヨウに「世界を救う」ことを約束してもらった意味とは何か?

ゼロの経歴

  1. ゼロはヨウとクーが幼なじみであることを知らないのでヨウが人界で生活するようになった後にゼロと出会ったのはほぼ確実。
    ヨウが拾人館を設立したことがきっかけでゼロと出会った、もしくはゼロと出会ったことがきっかけで拾人館を設立した可能性がある。
  2. 第31話で拾因の言った見つけたら頼みになってあげてほしい「あの人」とはゼロのことか?
  3. 第10.5話の「さようなら、~、私がいなくてもどうか幸せに生きてください…」はただのギャグでなく平行世界のゼロも同じようなことを言って死んだという前振りか?
    「何週目?」という台詞も意味深と捉えれば意味深。

原皇ブレスの目的

  1. ティトール=原皇ブレスならばその目的は何か。
  2. 拾因の計画と全くの無関係とは考えにくく、対立しているか協力しているかのどちらかだと思われる。
    エリンが1つの勢力に纏まらないことで聖国真類が危機的状況に陥るのか?
    あるいは人類とエリンの全面戦争に歯止めがかけられているのか?

ビックトー親子と拾因の接触

  1. 第24話から第26話のヨウとトトにはお互いにどことなく見覚えがある。
    第31話で拾因の言った「あの父親と娘」がビックトー親子のことなら幼い頃のヨウだけでなく拾因もこの世界のビックトー親子と接触していた可能性が高い。
  2. 2年前のオーフィスの死の原因とは一体何なのか?

クーの今後

  1. 第32話まででクーは人類の文化を学び、第31話ではヨウの願いを聞いて宿敵の神名阿アミルへの攻撃をやめるという行動までとった。
    このクーは今後聖国真類と神名阿一族の対立が激化した際にどういう対応をとるのか。
  2. 聖国真類が人類との戦争を選ぼうとした場合には賛同できるのか?

メタ的な能力の対比

クーは幻想構造者であるが幻想構造の能力で現実構造者と同質のことができ、訓練や物質との相性などの通常の現実構造者の受ける制限を受けずに、多種類の構造ができる。
ヨウは現実構造者であるが現実構造に幻想構造の能力をもたせることができ、既定の能力以外の構造をつくれないという通常の幻想構造者の受ける制限を受けない。
拾因と思われる人物が2種類の能力の幻想構造をつくれるのもおそらく同じヨウと原理によるものか?

第33・34話の勢力図

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引用

1 33話 13P    
2 33話 12P    
3 16話 1P 単行本第3巻(kobo版) 6P
4 30話 20P    
5 31話 1P    
6 24話 12P    
7 9話 1P 単行本第2巻(kobo版) 26P
8 10.5話 19P 単行本第2巻(kobo版) 88P
9 32話 10P    
10 33話 5P    
11 34話 7P    
12 1話 7P 単行本第1巻(kobo版) 10P
13 3話 6P 単行本第1巻(kobo版) 83P
14 1話 7P 単行本第1巻(kobo版) 10P
15 2話 1P 単行本第1巻(kobo版) 78P
16 20話 7P 単行本第3巻(kobo版) 92P
17 7話 3P 単行本第1巻(kobo版) 172P
18 34話 11P    
19 34話 17P    
20 20話 8P 単行本第3巻(kobo版) 91P
21 7話 5P 単行本第1巻(kobo版) 174P
22 23話 8P    
23 11話 20P 単行本第2巻(kobo版) 109P
24 17話 6P 単行本第3巻(kobo版) 31P
25 33話 16P    
26 24話 17P    
27 25話 10P    
28 24話 17P    
29 33話 20P    
30 26話 21P    
31 29話 8P    
第33・34話の勢力図
イン ヨウ 33話 12P
ゼロ 33話 5P
トト・ビックトー 33話 16P
オーフィス・ビックトー 33話 16P
クー(?) 34話 17P
聖国真類女性 34話 19P
ティトール 33話 16P

群青のマグメル 第34話感想 ~彼は世界の敵となる

第34話 過去と今 20P

原題:続・决定过去的未来(直訳:続・過ぎ去りし未来での決定)

2016/06/26 日本語訳の問題点について追記

今回のヨウと呼ばれる人物は現実構造の能力だけでなく、因果限界と神の見えざる手という2つの幻想構造の能力も持っています。前回のゼロが気付いた冒険しつつ拾人館の依頼もヨウが受けられた理由というのは、ヨウが因果限界で瞬間移動していたということですね。ゼロは自分の知らない間に依頼の内容を聞くためヨウがトトと会っていたことが気に食わずトトに嫌味を言ったようです。このゼロが第32話以前のゼロと違い通信系の能力を持っていないために、ヨウとビックトー親子が直接会って連絡する必要があったのかもしれません。

瞳が黒く因果限界の能力を持つ人物というこれ以上ないヒントが出されましたので断言してしまいますが、私は第33・34話でヨウと呼ばれている人物は私たち読者が拾因という名で知っている人物だと考えます。その理由とこの舞台についての詳細は別のページで書かせてもらおうと思いますが、とりあえずこのページで感想を書かせてもらうにあたっては、キャラクターの名前の表記はその時点で彼らが呼ばれているものに合わせておきます。

今回の話の骨子は人類とエリンの間に全面戦争が起こり、それによってヨウとクー(名前は呼ばれていませんがクーに相当するキャラクターであることはほぼ確定なので)の個人的な関係が引き裂かれてしまうことです。クーは聖国真類としての己に自負を持つキャラクターであり、真類が参戦を決めたのなら運命を共にするしかなかったでしょう。エリンの戦士の中にクーを見つけてしまったヨウの衝撃は、見開きで右上から左中央に向かってクローズアップされるヨウの瞳が見つめる先と、右下から左中央に向かってエリンの1人がクローズアップされる流れが、クーの1ページの縦をぶち抜いた見開き最後のコマで合流するという二重のクローズアップ効果をもって表現されています。

ヨウはクーとの関係を知らない仲間の前では平静を装い彼らの避難を優先しますが、最後に自分が空間を超える順番となった時にクーの方を振り向いてしまいます。クーと視線が向かい合い、この大コマの迫力から2人の間に戦闘なりの激しい感情のやり取りが生まれることへの読者の期待が否が応でも高まります。しかし見開きをめくるとあまりの距離に2人は互いの表情を確かめ合うことは出来ず、目線を交えることすら出来ないという現実が描かれます。この距離はその時の2人が置かれている立場の隔たりをそのまま示すものです。ヨウはあまりにも遠くなってしまった幼馴染から名残惜しげに視線を外しその場を去るしかありませんでした。

そしてヨウは人間側の立場さえからも離れ、全面戦争へ完全に背を向けて拾人館の面々と船に乗り逃避行を始めてしまいます。ゼロの言ったとおりに行くあてなどない旅です。それでもヨウは旅を続ければ幼馴染と敵対する以外の答えにたどり着けるということを期待したのかも知れません。それとも幼馴染と既に立場を異にしているという答えから逃げ続けようとしたのでしょうか。第33話の冒頭と似たナレーションが今回の締めにあり、この舞台についての言及がひとまず終わったことが読者に告げられます。しかし私たち読者は彼が何らかの答えに追いつかれてしまっただろうことを言われずとも知っています。彼は拾因であるかもしれないからです。「ヨウ」が拾因と出会った時、拾因の髪は色を失っていました。そして拾因は「世界の敵」でした。

日本語訳の問題では前回オーフィス・ビックトーが「手掛かりもワシが掴んだ」と言ったことになってしまった件へのフォローがないままティトールが中文版通りに「ビックトーの宝」について言及してしまったため会話が若干ちぐはぐになっています。ヨウがビックトー親子の方を見ながらビックトーの宝である小切手をちらつかせて金の話をしていたのも酔狂でこれだけ出せるなら本気だともっと出せるだろうと暗に催促していたからで、その了承の返事としてビックトー親子は得意げな表情をしていたのですが、この点も日本語版ではわかりませんね。

それと日本語版は翻訳の難しいシリアスな会話を省略して代わりに元々あるギャグを水増しする傾向にあるのですが、今回は少々ギャグが多くなりすぎて話のバランスが崩れてしまったように感じます。ティトールのおどけつつも油断のできない雰囲気が消えてしまい、話の骨子であったはずのクーとの離別もむしろ増えすぎたギャグから浮いてしまっています。残ったシリアスな会話もセリフ回しが上手く行っているとは思えません。ティトールの年齢に関する「一两百年」という語も私の調べた限りでは「一、二百年」つまり「百年か二百年」と理解するのが適当だと思います。「千二百年」*1としたのは誤訳ではないでしょうか。

 

追記

今回の日本語訳で一番問題なのは、『群青のマグメル』、というより『拾又之国』のテーマ性が把握できるような訳がなされていないことです。

前回のゼロが14Pから15Pの間に話していた内容は本来日本語版のように軽いものではなく、何があろうともマグメルの富を諦めること出来ない人類の欲望への呆れと諦観、そしてその欲望を負の側面として持つ探検家の救助を生業とし続けている己への自嘲が読み取れるものでした。ここで人類の欲望というテーマが強調されることにより、マグメルへの侵攻に耐えかねた原住者のエリンたちが人類に対して全面戦争を仕掛けるという今回の内容が迫真性を増すことになっていました。

しかし翻訳者は、ビックトーの宝というものをよく理解していないこともあって、その一連のゼロの台詞を単に金儲けに関するものでしかなく今回の逃避行の資金源の会話に繋がるものだと勘違いして訳してしまったようです。当然中文版では人界と全面戦争を起こしたばかりのマグメルで何の問題もなく拾人者としての金稼ぎができると思っているようなヨウの台詞は存在しません。ヨウはこんな状況でも拾人者の仕事を続けようとするかもしれませんが、ここまでに脳天気に宣言できる場面ではないはずです。翻訳者はわかりやすくする意図で台詞を足したのでしょうが、その内容が誤っています。先に述べたとおり、この台詞は本当の逃避行資金源であるオーフィス・ビックトーに暗に資金の催促をするための内容でした。

前回から今回にかけては明らかに発言者を取り違えたと思われる台詞の翻訳が散見され単語レベルでの違いも多く、翻訳者に信頼のある状況ならアレンジとして納得できたこれらの要素も現状だとひどく目についてしまいます。

*1:千二百年を中国語で表すなら一千两(百)年が普通です。調べたところ一部の翻訳エンジン(Google翻訳など)が一两を一、二でなく十二と誤訳してしまい、それにともなって一两百年も千二百年と誤訳してしまうようです。

群青のマグメル 第17話振り返り感想 ~拾因の企み

第17話 二つの死闘 20P

原題:奇人的空想(直訳:怪人の空想)

拾因がどんな雰囲気の人間かというのは幾分か触れられていましたが、今回は拾因が何をした人間なのかというのが焦点の話です。

拾因が聖国真類の領地に侵入してダーナの繭に接触したことが遠因となって人界での萌芽を招いたとクーはエミリアに語ります。中文版のニュアンスだとクーは拾因が繭に因果限界を融合させたのは何かの企みを持ってのことであっても、クスク諸島に転移したこと自体は繭が拾因の気配を追ったことによる偶発的なものだと推察しています。だから付近に拾因とその弟子のヨウがいると考えていたようですが、実はこの時点で既に拾因は死亡しています。では繭はなぜヨウのいるクスク諸島に転移したのかという話なのですが、第27話の日本語版で省略された台詞にクーが拾因とヨウの気配が同じだと語る部分があり、どうやら繭は拾因の代わりにヨウの気配を追ったのではないかと考えられます。もしかしたら拾因は自分がいなくなって繭が成長すればやがてヨウの付近に転移することを予測していたのではないでしょうか。それ裏付けるように繭はまずマグメル付近で直前までヨウがいたスカイホエールに転移しています。だとすればクスク諸島での繭の萌芽は拾因が予め計画していたものなのかもしれません。

他にクーが拾因について語る内容によれば彼には聖国真類には贈り物をしてみるなど友好的に接せないか探っていた節があることや、逃げるのが上手だったことなどの特徴があるようです。私はこれらの要素にも拾因とヨウに共通する部分が示唆されていると感じます。拾因とヨウの共通性は、拾因の死の発覚で有耶無耶になったままの繭に接触した目的と並んで、『群青のマグメル』全体の話に関わるポイントとなりそうです。

エミリアは拾因の謎についてはひとまず深く追求するのをやめ、クーの行動についての疑問点を更に質問します。これにもクーは意外と付き合いよく答えてくれます。まずクーは敵の殺害が目的と答えますが、その敵とはこの時点で読者にはヨウのことかと思わせて実際は拾因と神名阿一族のことですね。そしてこの場面でクーの語った間諜とは喰い現貯める者のことでしょう。クーが喰い現貯める者を自分の一部としてではなく、自分から独立した存在であるように語る場面は他にもあります。喰い現貯める者はクーがやってくるより先にスカイホエールと共に人界に着いていますし、クーと視聴覚を共有して周囲を探ることができます。更にクーと合流したと考えられるものは他にありません。ヨウたちを急襲した人影とクーに関係があるというヒントはこの時語られた内容や両者の特徴的な瞳孔で十分出されているのですが、あの人影が双生タイタンだというミスリードに引っかかったままだと、双生タイタンから距離をおいたクーがあの人影の主人だと気が付くことができません。この場面でクーと喰い現貯める者の繋がりを隠したのはバトルで種明かしをして盛り上げるためでもあるでしょうし、両者の関係には後で詳しく言及されそうな部分があるのでこの時点ではそこを読者に意識されないようにする意図もあったのでしょう。

別の場所でヨウは双生タイタンとの戦いで一徒たちの協力があってさえ苦戦しています。ヨウは双生タイタンに何度攻撃を加えてもダメージを与えることはできないながらも、戦いながら何か別の手段を講じようとします。一方で一徒は自分の実力が通じない相手の登場に動揺します。能力に目覚めてからは完全に自分のペースで攻撃出来ていた分ショックが大きいようです。能力に目覚める前にエリンたちに囲まれた時さえ、自分の身の危険よりも能力の方に関心がいっていた彼にしては珍しく感情が表に出ていますね。

群青のマグメル 第16話振り返り感想 ~拾因の瞳の黒

第16話 拾因の繭 20P

原題:空想之因(直訳:空想の因)

エリン3種族の首領格がヨウの残した文字に好奇心を発揮したばかりに、策略に嵌って爆風に巻き込まれます。第8話で触れていた1時間おきにダーナの繭の壁に穴が開けられるという伏線をしっかり回収しています。プーカ族の首領は同族の他の個体と違って人の服に着替えずエリンらしい格好のままなので、人を捕食するよりも同族を統率することを優先していたようですね。それでいて不敵な雰囲気もあり、生真面目そうな鬼に似たエリンと合わせて、この回で死亡するキャラクターもしっかり個性を出しておくところに第年秒先生の丁寧さを感じます。

ところでエリンたちの気を引くのに使った壁文字ですが、日本語版では「さよなら 張元首!」ー5秒童話となっている箇所は中文版だと「本座从小习武就是为了能在光天化日调戏良家妇女的梦想」ー某漫画となっています。長安督武司の第25.5話の2Pの台詞とほぼ一致するのでここが他の漫画のパロディでなければこれが元ネタで、出版社を移籍したので某漫画とぼかしているようです。日本未発表作品であることと字数の関係で日本語版では変更となったのでしょう。また、変更といえば日本語版の単行本では壁の文字の答え合わせ部分でタッチの台詞が削除されましたね。壁の文字そのものに変更はないのですが、明言するに当たっては問題があったようです。

策で7割のエリンを戦闘不能にした後は残りとの正面対決となります。流れるようなアクションで殲滅していき、一段落ついたと思われたところで新手である双生タイタンが出現してしまいます。ヨウの反応で双生タイタンが第7話のエリンではないことが読者にほのめかされつつも強敵であることには違いなく、再びの危機的状況です。

一方でエミリアはクーとの会話で彼の興味のある構造者がヨウであることを知り、読者にもヨウがこの事件に救助依頼を受けただけでない関わりがあることがわかります。そして拾因という名前が出てきてきます。今まで第7話と第8話で「イン」という名前が意味ありげに触れられてはいましたが、「拾因」というフルネームが出てきたのはこの話が初めてですね。現時点でも謎が多い人物ですが、この時点では子供のヨウと暮らしていたらしいこと以外は全くの謎でした。そんな拾因という人物が、今回のタイトルが『拾因の繭(空想之因)』という言葉であることもあって、ダーナの繭事件に関与していることが読者に明かされていきます。今回の扉絵の人物もヨウと似てはいますが、第8話で描写されたのと全く同じ黒い瞳や、目が描写される場合は他の顔立ちがぼかされる描き方から考えて間違いなく拾因ですね。

今回の2つの伏線はどちらも第8話のものを回収しているので、片方を発見して読み直せばもう片方にも気がつけるようになっています。