群青のマグメル ~情報収集と感想

『群青のマグメル』と第年秒先生を非公式に応援

群青のマグメル第80話感想 ~掌上の戦い

第80話 ラウンド2再び 12P

今回は前回では振ったところで終わったネタの方向性を示す話です。今回も12Pであり、前回と合わせて1つの内容と考えてもいいのかもしれません。

地下空間へ聖国真類による捜索隊の派遣が決定し、ヨウたちの取るべき行動は黒獄小隊を振り切ってそちらに合流することだと具体化されました。

手に落ちる

ヨウは龍息穿甲弾で岩を掘り進むクーとともに黒獄小隊からの逃亡を図ります。単に地下空間から脱出するだけならこの方法で問題ないらしいところはいかにも超級危険生物である聖国真類といった強靭さです。それでも流石に追手から逃げ切るためには無策では駄目なようで、途中ヨウがクーに声を掛けるのですが、その際ヨウの提案が変に健気なものである可能性をクーが懸念しているのがおかしかったです。逆の立場なら自分が言うだろう内容をプライドの高いクーなりに想像したのかもしれません。もちろんヨウはふてぶてしいヨウらしく2人とも助かるための作戦を考えています。その案に対しクーが見当違いの発言をした恥ずかしさもあり反対してみるといった、2人の気心の知れた意見の交換は緊迫した状況ながら見ていて面白いです。しかし逃亡の試みも黒獄小隊の予想の内であり、リヴの幻想構造である泡沫の遊びによって2人は再び囚われてしまいます。

泡沫の遊びは掌に乗るほどの卵状の幻想構造の中の異空間に自分と対象を閉じ込める能力で、直接の攻撃力はないタイプのようですが、条件を満たせば遠距離でも強制的に転移させられる非常に厄介なものです。単純なバトルならさておき、複数の能力者による協力も絡んだ戦争寸前の現状では最優先に始末すべき相手ですね。下手に逃してしまうといつどんな横槍が入るか予想不可能になります。内部はリヴとの決闘を強いられる空間ということで、闘技場めいたステージとなっています。この人数差でまともに戦えばヨウたちが乗り切るのは難しいでしょうし、決闘に1対1などの闘技的なルールがあるのが能力の枷になっているか、閉じ込めた油断により1対1で戦おうとするかなどの隙を見せてくれることを期待したいです。幸いかなりの隊員がタイマンを希望していると前回判明しています。こうなると残酷で怜悧なカーフェと別空間に隔離されている現状はむしろ希望に思えます。

手の内の把握

聖国真類の側では、普通の人員はティトールの仕業と決めつけているものの、指導者層である強者会のサイは背後に企てがあるのをちゃんと察し、敵の正体を突き止めて捕らえるように命令します。サイの幻想構造の鬼の居る間は物体の透過ができないようで、地下の様子を完全には把握できていませんが、未知の幻想が地下へ向かったことは感知できており、地下へも関心を向けていて抜け目がないです。

一方のカーフェも詳細はともかく聖国真類が監視の幻想構造を持っているのは把握しているので、程なく追手がかかることを当然見越しています。自分は泡沫の遊びを持ったまま聖国真類の捜索隊から逃げ切り、部下にクーとヨウを殺害させつもりです。彼の幻想構造である触れられざる隣人の性質を考えると逃げに専念されるのは非常に厄介です。

両勢力ともに相手の手の内は読めるだけ読んでおり、方策においての落ち度は見受けられないだけに、現場での実際の手際と粘りこそが焦点となる局面です。

TVアニメ「群青のマグメル」のメインビジュアル公開、ED主題歌情報も

TVアニメ「群青のマグメル」のメインビジュアルが公開されました。エンディング主題歌についても、a flood of circleによる書き下ろし曲「The Key」になると発表されています。

natalie.mu

群青のマグメル第79話感想 ~進路の選択

第79話 “いざ”の時 12P

ヨウたちの側の、前々回の続きに話は戻ります。ヨウたちの側とティトールの側の描写が数話ごとに交互に行われていますが、端末であるゼロを通じて両局面でティトールがリンクしているので、視点が散漫になることなく読み進められます。クライマックスではこのリンクが鍵になるような展開も期待できるだけに先が楽しみです。

前回が大増ページの48Pだっただけに、今回は減ページの12Pとなっています。

腹の内の向かう先

ヨウとクーは直接の脅威であり、地下1800mの空洞まで2人とゼロの体を拉致した黒獄小隊との対峙を余儀なくされます。

まずはお互いに出方を探り、双方の勢力の性格が出た会話の応酬が行われます。黒獄小隊副隊長でこの場のリーダーでもあるカーフェは、いつも通りの慇懃無礼な言動ながらも任務は忠実に遂行し、集団でクーを攻撃しようと隊員へ促します。しかし愚連隊的な個性の強さを持つ隊員たちが次々タイマンを希望し、話の腰を折られて苦笑させられてしまうところに、チームワークの凸凹さとそれ故の息の合い方が感じられて面白いです。タイマンしたくないと言う黒曜も、チームのためでなく自分のために主張しているとわかるのがいいですね。

ヨウとの会話ではカーフェの洞察力と底意地の悪さがはっきりと出ており、こちらも魅力のある会話です。応じるヨウも絶体絶命だろうと飄々としているふてぶてしさを見せてくれ、頼りがいがあります。曲者同士の駆け引きに惹き付けられる場面です。

地下から抜け出す道

黒獄小隊からヨウたちが総攻撃を受ける見開きでは、右上に挿入された朝食の溢れる皿のコマの効果で、アップからロングに切り替わるダイナミックさと一瞬の出来事であることが強調され、緊迫感があります。クーはヨウをかばいながら逃走しつつ現実構造での攻撃をしのぎきっていますし、ヨウの方も足手まといを自覚しながらもゼロを抱えて走り続けていて、お互いに出せる限りの力を合わせる熱い展開です。対して、語りかけながら追ってくるカーフェの不気味さも面白いです。なおかつ一連のセリフで現状と彼らの目的の確認をさせてくれるのも読者として嬉しいポイントでした。

クーの攻撃の十八番である龍息穿甲弾もこの場面では面白い使われ方をします。攻撃とみせて距離を空けさせ身構えさせたところで、縦横無尽に周囲に穴を穿って撹乱し、その穴のひとつから逃走するという作戦です。黒獄小隊の意表を突けたようで、一旦の足止めに成功しました。どの程度時間を稼げたのかはまだ不明瞭ですが、この隙に態勢を整えられれば逃亡の成功率はぐっと上がるはずです。

ヨウたちは現在地下1800mの空洞に連れ去られていますが、カーフェはたとえ命と引換えでも力を貸してくれるとは思えないので、自力で地上に出るか連絡を取るかする必要があります。危機的状況での地下空洞からの脱出といういかにも探検漫画らしい展開です。空気があることからするとここは地上と繋がる巨大洞窟の一部かもしれず、だとすればなおさらに探検の舞台にはうってつけです。ただ、現状だとエリンと構造力は使用できずとも強靭な身体を持つ構造者である2人ができることの幅に予想がつかないので、クーに具体的な計画を語ってもらうことでこの漫画なりのリアリティレベルを知りたいです。龍息穿甲弾による掘削のみで地上に到達できるのか、掘削は他の枝分かれした部分にたどり着ける程度で基本的には空洞をたどっていく必要があるのか、といった部分です。ゼロを端末としたティトールの力も加わればますます可能性が広がります。往々にして最初の計画は変更を余儀なくされるものですが、それでも極限状態で目的を果たすために試行錯誤を繰り返すのが探検の醍醐味です。なのでそれを楽しむためにもより多くの情報を知りたいところですね。

群青のマグメル第78話感想 ~各々の認識の内外

第78話 魔神 48P

今回のページ数は扉絵を含めて普段の倍の48Pです。そのボリュームを使い、各地に散らばったキャラたち一通りの現状と新たな局面が描写されています。多数の勢力とキャラが入り乱れている状況だけに、世界地図での改めてのキャラのリストアップと位置の明示で幾分見通しがよくなりました。情報整理やバトル演出でいつもにも増してふんだんに見開きが用いられ、状況の錯綜と激化が明快に表現されているのもこのページ数ならではです。

「若様」と認識される人物

まず、神明阿の次期あるいは現当主と黒獄小隊の隊長であるアミルとルシス、さらに黒獄小隊隊員フェルミオンの現状が描かれます。ルシスが気軽に人界へ向かおうとしてアミルに咎められる一幕があり、これが人界へ場面転換するためのギャグなのか後の展開の布石なのかに興味を惹かれます。人界では第68話の扉絵の女性がティトールの端末だと判明し、いかにも一波乱起きる気配です。もしかしてここにルシスが関わるのかもしれません。

アミルが若様と呼ばれていることも気になります。アミルは日本語版では「若様」と呼ばれた場面はありますが、中文版ではこれまでそれを意味する「少爷」と呼ばれる人物がアミルだと断言できる場面はなく、アミルだと断定できる場面では「长官」などと呼ばれています。ルシスが神明阿の血を引いていると思しく、神明阿の 「少爷」の正体はルシスかもしれないという憶測が立てられることから、もしそうなら「少爷」と「长官」の呼び分けは正体のヒントだということになります。なので「若様」の元の言葉は中文版を読むときに注目しておきたいポイントです。ただ、神明阿の現代のトップがアミルであれルシスであれ、神明阿アミルと名乗れる立場である以上はアミルが若様・少爷と呼ばれても不自然な点はないのです。だから呼び分けはヒントの可能性を疑えても、正体の決め手にはできない部分ですね。あと、6P目(アプリ上ではアニメ告知込みで7P目)でアミルがルシスから「アルミ」と呼ばれているのも、単なる誤植なのかルシスがふざけてわざと間違えているのか、中文版を読んで確認したいポイントです。

彼女たちの会話の裏表

ティトールとウェイドの側では、第76話での会話の裏側での探り合いと、あの場面からの続きが描かれます。あの2人の人影の正体とは、再生死果の若返りの眠りから目覚めた神明阿の当主2人でした。言われてみれば助太刀に足る戦力としてもウェイドの時間稼ぎの目的としてもそれ以上に妥当な存在はないのですが、彼女たちの裏の思惑が明かされるまではティトールの有利が続いているように見えたため盲点でした。ウェイドは因縁の相手との決着を2人の当主へ合理的に譲り、端末にした部下で彼らの到着を認識していたティトールも冷静に対応します。踏んだ場数の表れた無駄のない判断と言えるでしょう。その上で、理に則しつつも、それだけではない感情の綾がこの会話からは感じられました。永別の言葉に名残惜しさがにじむウェイドと、茶化しつつも自分の生還と再会に前向きなティトールのやり取りは趣深いです。

この空気からうって変わり、高笑いとともに戦闘へなだれ込む当主2人とのティトールの会話も、超越をひた走るテンションの弾けぶりに痺れます。遠景の圧縮されたコマの連続から一転、見開き2連続での激闘に移る思い切りのいい演出が楽しいです。ティトールには生還してもらわないと同盟はさておきゼロの体が維持できなくなってしまうのですが、この状況を切り抜ける方法はまだ見当がつかないですね。同時刻のヨウの側も困難な状況なものの、複雑な協力は望むべくもなさそうです。人界に残した端末が偶然一般人らしい男性に接触されたことが、あるいは解決の思わぬ糸口となるのでしょうか。

限界の認識

こまめに描写されていた一徒たちはともかく、同じく堅龍要塞に派遣された黒獄小隊のリーたち3人はかなり久々の登場です。うっかりこの3人のことを考慮に入れそこねた感想を以前書いてしまった覚えがあり、彼らには申し訳ないことをしてしまったかもしれません。短い出番ながら今回の彼らは精鋭らしい戦闘力を発揮し、印象に残る活躍をしてくれました。一徒も、エリンたちに為す術無く挑み瞬殺されるような構造者と比べれば、戦闘力や判断力そして感性の面で頭ひとつ抜けているところを見せてくれます。ですがそれだけに真に超越的な存在の引き立て役にうってつけであり、ある意味で損な役回りが任されがちです。バトル漫画の脇役としては、このままでも、汚名返上の活躍をしても、あるいは功を急いて悲惨な末路を迎えても役割を全うしたと言えるだけに、これからが気になります。

また、第35話でエリンたちと遭遇して以来行方不明になっていた漫画家のムダジは本当に久しぶりの登場となりました。それにちなんでか今回の扉絵はメタギャグ的です。もしかしたらあの悪口は彼の漫画に対する評価なのでしょうか。ただ、それにしても自分にとっては刺激の強すぎる内容で一瞬ギョッとしました。こういう自虐的なギャグは受け取り方も含めてさじ加減が難しい分野かもしれません。それはともかく、生存が判明したからにはムダジには無事に帰還して欲しいところです。彼のいる場所は物資保存エリアであり、どうやら生きた肉として捕獲されているようで、どうにかこの危機を切り抜ける必要があります。大局への影響も含め、わかりやすく“思わぬ”活躍の期待される役どころですが、見え見えでも期待に応えてもらえたら何だかんだ嬉しいものです。

群青のマグメル第77話感想 ~目覚めの時

第77話 ズレ 24P

黒獄小隊が作戦行動に入り、朝起きたばかりのヨウとティトールの意識が戻らないゼロの体、そしてもうひとりが拉致されます。

健康朝食

朝の聖心城での聖国真類の日常の様子が描かれます。壮年のサイと息子とのほのぼのとしたやり取りは直前の洗脳され家族で殺し合う山行類の凄惨さと対比されるものですが、露悪にならない程度のさりげない描写なのでかえって物悲しさが味わえます。異変の報告によってすぐに全体里が緊迫感に包まれるものの、朝食の話題が強者会の連絡でも何度も出ていてまだどこか目の覚めきっていない印象が残っています。冒頭のナレーション通りの強者ゆえの危機意識の低さと、100年間里が平和だったことによる油断が表れているのでしょう。あの厳格そうなラーストまでが以前にサイの勧めたという健康朝食を食べながら指示を出しており、妙なおかしさが出ています。健康朝食の描写はこれだけなら浮いたギャグなのですが、この記憶に残る感じが後半でクーがヨウに健康朝食を持ってきたため一緒に拉致されていたことの前振りとして活かされて面白かったです。言われてみれば拉致の瞬間ネストの右端に人影らしいものが見えます。思わぬ連鎖が予知に綻びを生じさせる鍵となりました。

強者会の面々のうちではサイの能力が明らかになり、ハクの能力も発言の真偽の確認に使える幻想だと推測できる描写がありました。

起き抜けの拉致

ヨウは朝食を出す店をクーに尋ねるものの、返事をもらう前に拉致されます。前回黒獄小隊が言及した目標とはヨウとゼロを端末としているティトールのことで、それを語る時にフラスコネスト内に見えた人影もカーフェたちでなくヨウとゼロだったのですね。確かにティトールに疑いの目が向いている状況で姿を消せば、犯人と断定されなかったとしても少なくとも同盟はご破産となるでしょう。地下1800Mでは構造をうまく使用できても脱出さえ困難です。

この場面での黒獄小隊の動きは、作戦については予知通りなのでうまくいくのは当然としても、手際の見事さには感心させられます。岩を飛ばすのに鋼とゴムというひたすらシンプルな構造を使用しているのがいかにもプロらしい無駄のなさです。カーフェの能力の詳細も明かされ、厄介な構造なのが改めて印象付けられました。ネスト内が不可侵となるだけでなく、物質を透過したまま移動可能で、一度に5つ出せるのですから応用の幅が広いです。ただ、ネストに入れるのは構造者と構造力のみであり、今回うっかりクーを連れてきてしまった点から出入りのタイミングは操作できるとしても対象までは選択できないようで、攻略の知恵を絞る余地はあります。なお厳密にすると目のやり場などで困る部分なので深く触れないのがお約束ですが、服と持ち物は通常の物質でも持ち込めています。

意識のない肉体

実力者のクーがいるとしてもヨウは負傷しておりティトールの意識も戻っていないのですから、黒獄小隊に正面突破で勝利するのはほぼ不可能な状況です。逃げ切るにしても相当な策が必要でしょう。ここで気になるのがティトールの本体がどういう状態なのかという点です。前回でウェイドが構造力が尽きたのはヨウが寝る直前の7時間後とされており、この場面とおよそ同時刻と考えられます。先に第四要塞に攻め込んだのはティトールの側ですが、ウェイドの目的は第66話によれば時間稼ぎであり、つまり何かを待っているのです。それが端末を無防備にした状態での拉致だとは限りませんが、ウェイドにも黒獄小隊への命令が報告されている可能性がある以上、タイミングを合わせて両方の任務の成功率を高めようとしていてもおかしくはありません。単に偶然だとしてもティトールにとって対処に困る状況なのは同じです。ティトールがいつゼロの体に意識を戻すのか、あるいは戻さざるを得ない状況になるのかは、この対峙において注目すべきポイントです。

『群青のマグメル』ジャンププラスにて一挙全話無料開放

ジャンププラスにて、群青のマグメルのTVアニメ化を記念して一挙全話無料開放が行われています。キャンペーン期間は1ヶ月後の2019年1月21日までです。

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