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群青のマグメル~情報収集と感想

ウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』で連載中の『群青のマグメル』を非公式に応援するブログです。

群青のマグメル 第4話振り返り感想 ~兄弟の対比

第4話 魍魎の果 24P

原題:魑魅之果(直訳:魑魅の果)

3話連作の最終話、このシリーズの解明回となります。解決回、ではありませんね。「マグメルの本当に恐ろしい存在」によってクリクスまでもが殺害され、その正体が明かされます。「マグメルの本当に恐ろしい存在」とはマグメルの果てない富に対する人間の果てない欲望と果てない悪徳、つまり探検家の負の側面そのものです。クリクスが抱く夢に代表されるような探検家の正の側面とは対比的なものですが、結局この2つは同じ根から生まれたものでもあります。マグメル探検の夢と欲望とは『群青のマグメル』で繰り返し問いかけられるテーマの1つです。

そもそも探検家に認可を与える連合国というものがあの神名阿一族に支配されていると後の話で判明します。探検家の認可制度そのものがマグメルを隠蔽しきれなくなった神名阿一族によりマグメルの富を自分の管理下に留めおくための苦肉の策として始められたものでした。クリクスの憧れた探検家バッジとは神名阿一族の配下となることの象徴でしかなかったのです

ヨウは唯一の民間の拾人者として拾人館を営み、連合国からも神名阿一族からも距離をおいています。そして望めば大抵のマグメルの富を入手できる実力を持ちながら、マグメルから直接の利益を得ようとはしません。これは彼が拾因と過ごしたマグメルでの夢の様な探検の日々を汚さないままに守るための行動であり、その日々こそが彼の拾人者としての掟と誇りの原点です。

クリクスはヨウとあらゆる点で正反対の少年として設定されています。ヨーロッパ系人種で色素の薄いクリクスとアジア系人種で黒髪のヨウ、死病に侵され弱り切った体を引きずるクリクスと人間離れした身体能力を誇るヨウ、そして何よりもマグメルで実の兄に殺されたクリクスとマグメルで(少なくともヨウの視点では)初対面の拾因に救われたヨウ。この話はクリクスと彼の兄という対比があるだけでなく、彼ら兄弟の関係がヨウ・拾因の関係と裏で対比されていたということが今読めばわかるようになっています。拾因を実の家族のように、ひょっとして年の離れた兄のように慕っていたヨウだからこそ、目の前で実の弟を殺し過去には仲間や実の両親さえ殺していたクリクスの兄をどうしても許すことができなったのです。ヨウの判断基準が必ずしも法の内に沿ったものでないことは既に提示されています。

 この場面はそれまで読者に対してさえ格好つけて本心を隠していたヨウがはじめてむき出しの感情を露わにするシーンです。その後の話ではヨウが感情を出す場面も増えましたが、こと怒りについて言うなら現在でもこのシーン以上に激しいものはありません。帰宅後に当時は唯一の「家族」であったゼロの横で悲嘆にくれるシーンの静かさとの落差もあって、初読時はこの話の物悲しさがヨウの抱える家族上の問題をほのめかしているように感じられ、染み入るような印象が残りました。

 

日本語版で語句の省略によりわかりにくくなっている要素にはクリクスの兄がこの話で手に入れてようとしていたエポナの涙が2つ目のものだったということがあります。1つ目は両親を殺した際に手に入れた物で、ヨウとの戦いでやむを得ず口にするまではおそらく一年程度隠し持っていたようです。クリクスの衰弱はその間も進行し続けていたことでしょう。2つ目のエポナの涙はクリクスの兄がすぐに収穫して撤収していないことや、ヨウがクリクスに与えようとしなかったこと、クリクスの兄とヨウの会話のニュアンスなどからまだ効果の無い未熟果であったと考えるのが妥当でしょう。エポナの涙が生物の死体のそばで生長する植物であることと、仲間の死体をエポナの涙の比較的近くに放置していることを考慮すると、クリクスの兄がクリクスを見つけた場所に置き去りにせずに洞窟に連れて行ってから殺害したのはわずかでもエポナの涙の成熟が促されるのを期待しての行動だったのかもしれません。