群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル 第17話振り返り感想 ~拾因の企み

第17話 二つの死闘 20P

原題:奇人的空想(直訳:怪人の空想)

拾因がどんな雰囲気の人間かというのは幾分か触れられていましたが、今回は拾因が何をした人間なのかというのが焦点の話です。

拾因が聖国真類の領地に侵入してダーナの繭に接触したことが遠因となって人界での萌芽を招いたとクーはエミリアに語ります。中文版のニュアンスだとクーは拾因が繭に因果限界を融合させたのは何かの企みを持ってのことであっても、クスク諸島に転移したこと自体は繭が拾因の気配を追ったことによる偶発的なものだと推察しています。だから付近に拾因とその弟子のヨウがいると考えていたようですが、実はこの時点で既に拾因は死亡しています。では繭はなぜヨウのいるクスク諸島に転移したのかという話なのですが、第27話の日本語版で省略された台詞にクーが拾因とヨウの気配が同じだと語る部分があり、どうやら繭は拾因の代わりにヨウの気配を追ったのではないかと考えられます。もしかしたら拾因は自分がいなくなって繭が成長すればやがてヨウの付近に転移することを予測していたのではないでしょうか。それ裏付けるように繭はまずマグメル付近で直前までヨウがいたスカイホエールに転移しています。だとすればクスク諸島での繭の萌芽は拾因が予め計画していたものなのかもしれません。

他にクーが拾因について語る内容によれば彼には聖国真類には贈り物をしてみるなど友好的に接せないか探っていた節があることや、逃げるのが上手だったことなどの特徴があるようです。私はこれらの要素にも拾因とヨウに共通する部分が示唆されていると感じます。拾因とヨウの共通性は、拾因の死の発覚で有耶無耶になったままの繭に接触した目的と並んで、『群青のマグメル』全体の話に関わるポイントとなりそうです。

エミリアは拾因の謎についてはひとまず深く追求するのをやめ、クーの行動についての疑問点を更に質問します。これにもクーは意外と付き合いよく答えてくれます。まずクーは敵の殺害が目的と答えますが、その敵とはこの時点で読者にはヨウのことかと思わせて実際は拾因と神名阿一族のことですね。そしてこの場面でクーの語った間諜とは喰い現貯める者のことでしょう。クーが喰い現貯める者を自分の一部としてではなく、自分から独立した存在であるように語る場面は他にもあります。喰い現貯める者はクーがやってくるより先にスカイホエールと共に人界に着いていますし、クーと視聴覚を共有して周囲を探ることができます。更にクーと合流したと考えられるものは他にありません。ヨウたちを急襲した人影とクーに関係があるというヒントはこの時語られた内容や両者の特徴的な瞳孔で十分出されているのですが、あの人影が双生タイタンだというミスリードに引っかかったままだと、双生タイタンから距離をおいたクーがあの人影の主人だと気が付くことができません。この場面でクーと喰い現貯める者の繋がりを隠したのはバトルで種明かしをして盛り上げるためでもあるでしょうし、両者の関係には後で詳しく言及されそうな部分があるのでこの時点ではそこを読者に意識されないようにする意図もあったのでしょう。

別の場所でヨウは双生タイタンとの戦いで一徒たちの協力があってさえ苦戦しています。ヨウは双生タイタンに何度攻撃を加えてもダメージを与えることはできないながらも、戦いながら何か別の手段を講じようとします。一方で一徒は自分の実力が通じない相手の登場に動揺します。能力に目覚めてからは完全に自分のペースで攻撃出来ていた分ショックが大きいようです。能力に目覚める前にエリンたちに囲まれた時さえ、自分の身の危険よりも能力の方に関心がいっていた彼にしては珍しく感情が表に出ていますね。