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ファミリーゲーム第4話感想 ~神の真実と主人公の再起

ROUND4 19P

挫折した三月は自ら人形を捨てようとしたところを神である作者キャラに止められ、彼がバトルロイヤルものにジャンルを変更した理由の真実を教えられます。

三月にモデルの彼を説明する際に動物園のエピソードを前置きにしたのは上手い導入です。三月の個性を端的に表したこのギャグがモデルの彼にも当てはまると示されることで、今までの三月に対する読者の感情移入がスムーズに彼にも向います。なおかつ亀の部分で差異を出すことで漫画内漫画である三月たちの世界と、漫画内現実である作者キャラやモデルの彼の世界ではリアリティレベルに違いがあることもさりげなく納得させられます。これよって彼の「リアルな」いじめと家庭崩壊の描写が相応の重みを持って読者の胸に迫ってきます。家の中でさえ居場所をなくしながらベランダで身を縮めて漫画を読む姿はまさに悲痛の一言です。

そして三月は作者キャラに諦めないで欲しいと語りかけられ、自分の家族を守るために立ち上がることを決意します。家族のことを回想するシーンの叙情的な雰囲気づくりの上手さは流石で、多少ヤンデレだろうが乱暴だろうが性転換願望があろうがかけがえのないものであることの疑いのなさが静かに染み入ってきます。戦場と化した街に戻った時、当初の強い男になる願いを叶えて「もらう」という目的は三月の頭からは完全に消えているのですが、挫折を乗り越えた三月は既に自分の力で強い男になっているといってもいいのではないでしょうか。

テーマ的には今回の燃えるラストシーンでほぼ完成していますが、ストーリー的には次回の最終回こそが一番大切です。愛と勇気の異能力バトルであることについてはもはや(!?)のような疑いをつける余地などありませんが、コメディが取り戻せるかどうかは三月の動きに全てがかかっています。なんだかんだと言って家族全員が三月のことを気にかけているのでどうにかはできるはずだと思うのですが、いかんせん増ページがあったとしても残り一話なので着地が気になります。

『ファミリーゲーム』が漫画内漫画を扱った作品なのは、メタネタを扱いたかったからというよりも、「もうひとりの自分」を扱うためにもうひとつの世界を生じさせる仕組みが必要だったからという印象があります。争いに立ち向かわずに「家族」を失ってしまった「もうひとりの自分」を知り、自分自身の「家族」を守るために争いに立ち向かうというテーマは、テイストこそ異なりますが第年秒先生のあの作品とも共通するもののように思えます。ここでこのテーマが再確認できたことは今後の第年秒先生の作品全体を見ていく上で興味深いです。

作者キャラの本当の姿が老人なのは彼が安西先生…ではなく、いわゆる作者の分身としての漫画家キャラとは違って、『ファミリーゲーム』の漫画内現実で生きる「登場人物」の1人だということを強調するためでしょう。また彼がこの一家にとっての祖父的な存在だということでもあるのかもしれません。そう思うと今回は祖父が孫の人生相談にのっている話という風にも見えます。服装は完全に「漫画の神様」である手塚治虫先生のリスペクトですね。