群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第40話感想 ~魂は複製されうるのか

第40話 完全 20P

追記 原題:神明的力量 (直訳:神の力量)

『群青のマグメル』第4巻が7/4(火)に発売されます

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今回は各勢力から「目標」とされていた何かが「完全構造力」というものだと判明しました。前回で完全構造力を巡る争いの導入に一区切りつけたことで、改めて現状の整理と争いの本格化に向けた布石の提示が行われています。

文字の多い説明回なので、絵での説明や凝ったアングルのコマも多くして、頭と締めをギャグで挟むことで退屈させないように気を配られています。なのですがそのギャグが単に構成上必要というだけでなくかなりかっ飛ばしたものになっています。

ヨウはいつもながらヒッデェことをしますね。クーとのギャグ会話は一方的にヨウが振り回してばかりなのですが、ガキっぽく甘えるヨウと怒りながらも許容しているクーという信頼関係が読者にはわかっているのでギャグとして成立しています。クーが故郷でも交友関係をちゃんと築けているのを踏まえるとなおさら2人の関係は興味深いですね。デュケは現時点では貴重な自分から力になってくれそうな大人(それでもおそらく青年の範疇)ということで、面白い立ち位置です。数値的なスペックではクーやミュフェに軍配が上がりそうですが、デュケの他者への接し方には好感が持てて信頼したくなります。

ヨウがクーだけでなくミュフェやデュケとも友好的に接触できたことで、聖国真類全体とも協調路線を取れそうなのも嬉しいポイントです。本来であれば、特に常識的そうなデュケは人類に深入りするのは避けたいはずですが、ヨウが初手の爆弾発言によって主導権を握ったことでそこを完全に有耶無耶にできています。方向性はどうあれクーが人類と親密にしていたこともこれ以上なく伝わっています。

キャラ描写でいえば黒獄小隊の夕国が飛行する舟から足をプラプラさせている様子も、少しわがままで気まぐれっぽい性格が見て取れていいですね。一コマ気の利いた女性の仕草の描写があるだけでも話全体が随分と華やぎます。言葉に棘があるのも悪役女性キャラとしては立派な華です。

本題の完全構造力については、その性質自体が明らかになる一方で、使用に関する謎も浮かび上がりました。

まず性質については、拒絶する力を中和できる「受絶する力」を持つというのが重要です。「目標」が神明阿一族の第8大隊の後始末のため探していた目標だというのは前回で判明していました。そしてヨウが調べようとしていた探検家をマグメル深部に送り込むための拒絶する力を回避する方法、それを実現するべく奪われたものなのだとも今回で判明しました。

しかしクーの知る限りでは量などの問題でそうした利用は不可能なはずだと言うことです。神明阿一族がどうやってこの実用上の問題をクリアし、ヨウたちがどうやって阻止しようとするかが、次の展開の焦点となりそうです。マグメル各地で拒絶する力が強まったのは完全構造力が人類の手に渡った余波なのか、それとも完全構造力が大量発生させられてしまう予兆なのか、そういった点も気になります。

また、永遠の現実や生命すら構造できるという完全構造力の性質は先々の展開で間違いなく話の軸となる部分です。「永遠」の「現実」「構造」という言葉は、第31話であの拾因が言及していた内容とも一致します。数々の状況証拠から黒い瞳のヨウが完全構造力を手に入れ聖心に接触したのは確定的なのですが、具体的に何をしたのかはまだほとんどわかっていません。

具体的な行動でありえるものとして、第一に実は並行世界間や時間軸の移動はなく、黒い瞳のヨウが戦争終結後に完全構造力によって金の瞳のヨウたちをつくっただという案を考えてみました。しかし隠蔽したにしてもマグメルとの戦争やエリンが一般人に全く知られていない点や有名人であるオーフィスが2回出現することになってしまう点などの齟齬が多く、間違った考えだと断定してもいいでしょう。やはり並行世界間の移動は存在したと仮定したほうが矛盾の少ない案を考えやすいです。

第二に金の瞳のヨウの世界そのものを完全構造力によってつくったという案も思いつきました。しかし説明を読む限りでは世界をつくるには世界と同じ量の完全構造力が必要となってしまうので、これは今のところ不適当です。

第三にさしあたって矛盾の少ない案として立ててみたのが、ヨウが拾因として認識している人物とは実は黒い瞳のヨウが完全構造力でつくった自分のコピーの現実構造だというものです。この場合彼は聖心の拒絶する力を回避しつつ接触して目的(並行世界間移動?)を果たすために完全構造力の受絶する力を利用したことになります。その際に黒い瞳のヨウの「あの鍵」もコピーされていれば、「あの鍵」が3本存在することも説明できます。「あの鍵」にも受絶の力があるのなら終盤で金の瞳のヨウが聖心に接近する時などに役立つのかもしれません。またメタ的な視点ではありますが、夢限境界で(拒絶する力によって?)死亡してたのが黒い瞳のヨウだとすれば、拾因の再登場が期待できます。ただしその場合、黒い瞳のヨウはお決まりの魂による再登場さえ望むべくもない状況であり、本当の意味で死亡していることになります。