群青のマグメル~情報収集と感想

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群青のマグメル第43話感想 ~線引の決め方

第43話 1ダースと少しの安息 20P

ヨウのゼロとの世界旅行での会話を通じて、共に旅をした拾因へのヨウの思いが形になって表されます。ヨウの初めての友達であり師であったという拾因。別れを予感させる陰を纏っていたという拾因。ヨウにとっても思いを言葉にすることで改めて自らの気持ちを探りつつ自覚していくところがあるように思えます。

そして拾因の死に気持ちの整理をつけた上で、拾因の生きた意味である彼の願いを受け継いでいくと明言します。実際に世界を見て回りつつ発した「世界を救う」という言葉にはヨウの決意の重さを感じます。思いを決めた時の、成すことと成せないことを定めた時の、爽やかさと淡い寂寥感のあるシーンです。ここでこれほどヨウが線引をきちんと出来ているからには、実体を持った拾因との再会はもう無いものと思った方がいいでしょう。

また、ヨウは人類の統治者である神明阿一族への敵対を決断したからには、ゼロと別れてこれまでの生活を続けることを諦めるつもりだったようです。あるいは生きぬくことそのものを。かつての拾因も同じ決断をしたのかもしれません。しかしここではゼロの方がヨウを諦めませんでした。ゼロの発言はご主人様を追いたいと見えるのか少爷(坊っちゃん)を守りたいと見えるのかで読者にとってニュアンスが随分と変わってきますね。ゼロとしては自分は大人でヨウを守れるつもりのようです。ですがヨウと読者にはそう言われるほどにゼロの幼気さがしみてしまいます。だからこそヨウはゼロを守り共に生きぬくことへの決意を新たにするのです。大勝負に臨んでのこの前向きな決意には、かつて避けられなったはずの破滅的な結末とは全く異なる結末へたどり着くことへの希望を強く感じました。

一方でクーは任務失敗の罰により男女3人素っ裸でバラエティ番組の熱湯風呂氷風呂めいたものに入れられつつ、ヨウは自分に利用されているだけだという笑撃の発言を繰り出します。逆では?という点は置いておくとしても、この期に及んでもクーがヨウときちんと一線を引けていると考えているらしいことに微笑ましくなってしまいます。傍から見ると不適切な馴れ合いという段階さえ明らかに超えているのですが、クーの性格を考えるにミュフェを誤魔化しただけでなく半ば以上本気で言ってるのでしょう。クーにとってヨウとの接触で自分は既に十分に得をしているのだから、自分達の行く末にまでは巻き込みたくはないというのはまだ変わらないようです。その上で情報を得るためというお題目を唱えつつ、ヨウの神明阿への潜入に加わるつもりなのが面白いですね。罰が終わってから人界へ向かうとするとやや遅れての合流となるのでしょうか。

マグメル深部の聖国真類の社会の一端が描写されていますが、居住地の規模的にも上層部の合議の様子からも、ステレオタイプな未開の部族ではない国家然とした印象を受けます。むしろ発展し巨大化した組織にありがちな腰の重さが心配になってしまうほどです。任務を失敗した者に罰を与えつつも必要以上の問責はせず、成果については労いの言葉を述べるということからも、治世は現在のところ大きな滞り無く行われているようです。族長を含めた強者会の6人は、多少外見がリファインされてはいますが第32話で車座になっていたあの6人でしょう。

他方で神明阿一族が装置の中から目覚めさせた老人たちの描写もあります。500年前の神明阿一族の上祖だという彼らがどう展開に関わってくるのかはまだ読めませんが、いかにも中華の老人キャラ風な只者ではない雰囲気を纏っていて気分が盛り上がります。首領格らしい1人以外も顔の個性がしっかり描き分けられているのが逆に共通して目が死んでいる点を際立たせていておどろおどろしいです。

私が今回出た情報で一番気になっているのが拾因の明かした聖心を暴けば世界が滅ぶという言葉です。もちろんこれはヨウの一番の敵が神明阿一族だと確定させこの先の展開の指針を示す上で重要です。原皇の役割をヨウVS神明阿一族の構図にちょっかいを出す第三者ポジションと見なせることになり完全な三つ巴よりは勢力関係が把握しやすくもなりました。しかしむしろ私が引っかかっているのは、拾因の言葉が実際に世界が滅んだのを見たことがあるような迫真性を持っている点です。拾因の世界がやはり誰かが聖心を暴いたせいで滅んでいるのなら、「世界の敵」である拾因はそれにどう関わっているのでしょうか?