群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第44話感想 ~殺る気

第44話 潜入 20P

追記 原題:十八狱中队 (直訳:壱八獄中隊)

扉絵は並んで進むヨウたち5人と遠くの後ろ姿の神明阿アミルという構図がいずれ訪れる激突を予感させるものになっていて、新編の開幕にふさわしいものになっています。白系のスーツと床に落ちた黒い影の対比もバッチリ決まり、クールな中にも力強い印象があります。アオリ文の「我行我素」もいい味を出してますね。中国語の四文字熟語には欧文系の厨二感とはまた違った厨二感があっていいものです。意味は「自分のやり方を貫く・我が道を行く」となります。

扉絵を見る限りではミュフェはクーに付き添って人界にやって来るようです。デュケは性格から考えてもマグメルに残ってそちらの現状を伝える役割となりそうです。

今回は潜入編の導入ということで嵐の前の静けさを感じさせる回ではあるのですが、ヒリヒリとする不穏感の強さに期待が煽られます。

まず海底からの侵入という刺激的なシチュエーションを静謐かつ空間的なレイアウトによる演出が見事に盛り立てています。その最中にヨウが察知した深い闇の向こうにある何か、それがこの先の展開にどう関わってくるのか今から楽しみになります。距離的にはだいぶ離れていますが、島の地下に建造物があることと併せて考えると、もしかしたら巨大海底遺跡があるかもしれないと言った想像が膨らみワクワクします。

また静かな中にも当たり前のように暴力がひしめき殺意さえもありふれている空気感の描写が緊張を高めてくれます。トトがガラの悪い探検家チームに取り囲まれる場面はコミカルな演出をされてはいるものの結構シャレになっていない危険さです。それに周囲が取り立てて騒ぎ立てる訳でもない様子も、カタギの人間ではない探検家という存在を改めて感じさせてくれます。そして一転して探検家たちが直前まで弱者と思い込んでいた老人に文字通り瞬殺され、むき出しの惨事が突きつけられます。私は前回素性が判明したばかりの神明阿の上祖がいきなり探検家に混じっているとは想定していなかったこともあり、この不意打ちにはいろいろな意味で驚かされました。地位のある老人ということでてっきり腰の重いキャラだと思っていたのですが想像以上に行動派ですね。弱い老人の演技をする茶目っ気やトトに対して友好的に接する点と大勢の探検家の四肢を飛び散らせて平然としている点の落差が思考の読めなさを生んでいて、次の行動が気になるキャラです。

一方でヨウは神明阿の役付きの構造者からパスを奪うため、招待を受けただけの探検家も含めて片端から構造者を昏倒させていきます。少年漫画の主人公らしからぬダーティな手段ではありますが、乱闘を当然のこととする空気感とスマートに事を運べるわけではないという状況の提示が、反則の優越よりも生命に肉薄するスリリングさを際立たせているのが興味深いです。ヨウの挑発を受けた役付きの構造者たちが反抗分子の報告よりも売られた喧嘩を買うことを優先するあたりのチンピラ感もなかなかの暴力性です。ラストのコマは四者のポージングも構図も格好良く仕上がっていてドキドキさせられます。元より無法の側に身を置いていたとは言え、日常を送っていた拾人館にしばしの別れを告げたヨウが、人間同士の陰謀と暴力の世界に踏み込もうとしている一瞬が切り取られたコマです。

今回は潜入ということでヨウの衣装替えも行われているのですが、空気感に合わせて装備も今までのイメージを大きく崩さないままよりリアル調のものになっているのが面白いです。上半身の黒い服・帽子・手袋という服装にマスクが加わることで、拾因やあちらのヨウを彷彿とさせる取り合わせになっているのにもニヤリとさせられます。