群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第60話感想 ~行き先の確認

natalie.mu

第60話 それぞれの思惑 24P

今回はこの先の展開に向けての最終目標と中間目標の両方が明確に打ち出された回です。ヨウの聖心などに関する知識や体を渡そうとしたことの狙いの開示は一旦保留となりましたが、指針ははっきりしたのでとりあえず素直に現在の状況の進捗を楽しみにできるようになりました。謎の根幹の解明についてはストーリーの最終盤まで待つつもりでいるほうが良さそうですね。

ヨウの目的は、それをめぐる原皇との会話でわかりやすく整理されました。アクションはなくヨウも淡々としているシーンですが、脅しや駆け引きも含ませた原皇の言動には緊張感と迫力があって、思わず引き込まれます。原皇の適度にコミカルなリアクションも楽しいです。あえて道化を演じられるところには多部族連合の女皇らしい器の大きさも感じます。ヨウが多原国(これまでの日本語版の表記ではフォウル国)と聖国真類の同盟という両者の経緯を真面目に考えれば考えれるほどに困難な提案をしたときも、一旦は憤慨するもののすぐにおどけて受け入れてみた姿が印象的です。対して聖国真類は良くも悪くも硬そうなイメージが強いので交渉は簡単にはいかないかもしれませんが、さしあたってやるべきことを打ち出せたのは確かな一歩前進です。

ゼロの蘇生についてはヨウによると聖心の無限に近い完全構成力が必要ということですが、ただ量だけの問題ではないでしょうし、やはり聖心にはまだ隠された役割がありそうです。ゼロの蘇生にはもう1人のゼロからの理解と構造が必要になるだろうことを考えると、それに関わる役割なのでしょう。もしかしたら並行世界を繋ぐことができて、別の世界で生存しているゼロと接触できるようになるのかもしれません。あるいは聖心が暴かれれば世界が滅ぶということから、現在の世界そのものが生存するゼロのいる世界の現実構造であり、中枢である聖心に接触すればそれをコントロールできるようになる可能性も考えられます。この場合の世界の構造者とはマグメルの意識ということになるでしょうか。

今回マグメルの意識なるものが擬神構造の正体だと判明し、この存在を前にしたヨウと原皇が馴染みのある感覚を味わったことに納得がいきました。それが現在は人類である神明阿一族の手に落ちているということで、マグメル現住者のエリンたちの多原国にも聖国真類にも厳しい状況です。ただ、神明阿に完全服従しているわけではなさそうなので、働きかけ次第ではヨウやエリンたちの味方に付けられるか、せめて無力化はできるかもしれません。

神明阿たちの側では思いのほかアミルとルシスが「まともに」仲が良いらしいことに興味を惹かれました。いつもよくわからない冗談で振り回され、命との接し方や夢と欲望の考え方に相容れない部分があっても、アミルにとってルシスとは血縁者が亡くなって落ち込んでいる時には「お前のせいじゃない」と慰めたくなる相手であるようです。ルシスにとってもアミルは珍しく落ち込んだ時の本心を語れる相手のようです。ルシスは普段軽薄などほどに剽軽な分、ただ黙ってうつむいているということがこれ以上なく彼の悲嘆を表しています。前回のアミルに表情について私はルシスへ眉をひそめたのかもしれないと書きましたが、今回を見る限りでは全く違いますね。どれだけ悪感情的に捉えても複雑な思いがしたかもしれないくらいがせいぜいで、ルシスとともにアススの死を悼んだか、むしろいつも笑っている友人がめったに見せない涙を流したことで自分までつらくなってしまったか、といったことが正しいようです。この2人の関係はアススとリリに重なるようにもヨウとクーに重なるようにも思えますが、本当の姿についてはまだ謎です。ともにいる理由の核心に擬神構造へ聞きそびれた2つ目の質問の内容があるのは間違いないでしょうがそれもまだ推測さえ困難です。2人とも神明阿ではあるはずですが、全く似ていない兄弟なのか、親戚なのか、赤の他人なのかということも不明です。

また、現状は若様にミスリードされているものの黒獄小隊の隊長である可能性が濃厚なアミルから副隊長のカーフェが指令を受けており、そちらの様子も面白いです。久々の登場での相変わらずの人を小馬鹿にしたような言動も、通信の時に背後でナタル・黒曜・夕国の3人がこっそりピースしていているのも楽しいですね。放射能で下痢が酷いというとんでもないことを笑い話にしているのも悪の組織の幹部らしい毒があって刺激的です。まぁ腕の立つ構造者なので本当に大したことないのかもしれませんが。最後のシーンの黒獄小隊大集合もいかにも悪の組織で見たい定番の場面を抑えてくれたといった感じでワクワクします。みんな個性的な格好をしつつも目玉に似た模様のある装備をしている人間が多いのが神明阿の関係者らしくて目を引きます。この14人に堅龍要塞にいるリーたち3人とアミルを足せば18人で、黒獄小隊は総勢19人なので、残りの1人がこの原皇と聖国真類の同盟を阻止する任務から除くとアミルが言っていた人物だと思われます。この人物には後々特別な役割が与えられそうです。特別な役割のありそうな1人といえば、神明阿の先祖たちの中で218代目だけが再生死果を食べなかったことも気になります。第46話で顔を確認する限りでは、前回「美しく生き 美しく死ぬ」と言っていた人物がこの218代目です。この時は若返りに前向きだったように見えるので、彼もアススが亡くなったことでルシスと同じく何らかの心境の変化が起きたのかもしれません。