群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第64話感想 ~帰郷

natalie.mu

第64話 深部へ 24P

マグメルの本当の深部である超空間移動プレートの内側へと物語の舞台が移ります。トトにとっては未知への冒険であり、ヨウにとっては帰郷と言ってもいい道程です。

超級危険生物とのチェイス

まず大転生の河の生物を追い払うため、あえて雷覇龍魔との追いかけっこに挑むヨウたちのアクションが繰り広げられます。空間的なスケール感を強調した構図のコマが重ねられ、小型な飛雲龍のすばしこさが伝わりつつ、巨体でそれに追いすがれる速度を持つ雷覇龍魔の恐ろしさも印象付けられます。飛雲龍も現状のヨウたちも対抗しようにない巨大怪魚の不気味さをしっかり描写してから、それを雷覇龍魔が一撃のもとに下すことで破壊力を強調する描写の手際も流れるように見事です。この見開きでは雷覇龍魔VS怪魚の強大さと飛雲龍の小ささの対比が大迫力で決まっているだけでなく、うろたえているトトの常人らしさと対比される形でヨウの冷静に状況を俯瞰している非凡な格好良さが改めて確認されます。トトの方もそのあとのコマでの小鉄の前途に願うのが平和だという場面から、等身大な価値観と優しさの魅力を感じることができます。

現在の家族と過去の家族

雷覇龍魔に追われながらもヨウたちはマグメルの本当の深部に到着します。アクションの勢いはそのまま引き継いでいるからこそ、かつて暮らした地にたどり着いたことをヨウが呟く際の静かな緊張感が際立ち引き込まれる場面です。伝えている相手が原皇さえ抜けた完全に空っぽの肉体しか残されていないゼロだということで、なおさらに澄んだ物寂しさに満ちています。蘇生の可能性が残っているとはいえ、現状魂の存在や定義が不確かな世界観だからこその、肌触りが感じられるようなリアリティのあるやるせなさです。現在の家族でありながらいずこかには在ると言っていいのかさえわからないゼロに対し、過去の家族である拾因との思い出を語りかけずにいられなかったヨウの溢れる感情が胸に迫ります。肉体的なものにしろ形而上学的なものにしろ、魂の在り処がはっきりしてしまっていたらこの不安感は出ないのではないでしょうか。

そして今回の最後の場面でヨウは第8話などで出ていたあの家を発見し、ここが本当の意味で故郷であることを確認します。この機会に第8話などの思い出の詳細に改めて触れてくれ、拾因の過去と正体という謎が一端でも明かされることに少し期待してみたいです。

超空間移動プレート

マグメル大陸と超空間移動プレートという言葉の謎については、今回である程度説明されました。

超空間とはプレートの内側の空間が歪み外部の観測からは信じられないほどの広大な土地がそこに格納されていることを指すようです。五大陸を合わせた以上の面積だと言われてるというのですから物凄いスケールの大きさです。かつてマグメルが島だった頃からエリンたちが高度な文明を持っていたという設定にも納得できます。この空間の歪みという点から考えるに、もしかしたらマグメル新生とは外縁部の空間の圧縮が何らかの原因で弱まってしまったことで起きた現象なのかも知れないですね。真相が気になります。もしそうだとしたらその原因は完全な偶発なのか、あるいは人為が関与しているのか、そういったことを考えてみるのも楽しいです。

移動という部分は、プレート自体が移動するというより、説明の中で言及されている激しい地形の変化のことを指していると考えたほうが良さそうです。マグメルには神とも呼ぶべき意識が存在するだけに、内部では生物の新陳代謝にも似た変化が起き続けているようです。ちなみに日本語版では省略された説明ですが、中文版の第31話ではマグメルの拒絶する力とは人体が進入した異物を排除するのと同じものだと触れられていました。ただ、もしかしたら移動の意味については後でより詳しい説明があるかも知れないので、これはあくまで現状の情報に対する推論ですね。

トトのスレンダーボディ

そんなこんなで拒絶力の影響を受けたトトがいきなりすっぽんぽんにされます。常人であるトトには災難の連続です。同行者が全裸に全く反応を示さないメンツなのは不幸中の幸いと言うべきか、作中でのラッキー感がまるで無いせいでサービス感が出ずに脱がされ損でやはり不幸と言うべきか、極めて判断の難しい局面となりました。一糸纏わぬ姿の女性を目の当たりにしながら、素の状態で完全に無反応なヨウは相変わらず常人には理解不能な底知れなさを湛えていると言うしかないのでしょうか!?もしもこの場面で何か断言できるとするならば、これはいわゆるひとつのシュールギャグであるということだけなのかもしれません。第36話といい、原皇(巨乳)だけでなくトト(貧乳)もサービス要員(貧乳)として妙にインパクトのある場面で起用されている印象があります。

この時すっ飛んでいったスモールビックトーをヨウがキャッチしている描写がわざわざ入っているのは、もしかしたら後で活用する機会が来るからかも知れないですね。期待してみたいです。また、いくらこのメンツとはいえ全裸のままでは可哀そうなので、早くトトに新しい服を見つけてあげて欲しいです。そういう意味でもあの思い出の家にヨウたちが立ち寄ることを期待しておきたいですね。