群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第78話感想 ~各々の認識の内外

第78話 魔神 48P

今回のページ数は扉絵を含めて普段の倍の48Pです。そのボリュームを使い、各地に散らばったキャラたち一通りの現状と新たな局面が描写されています。多数の勢力とキャラが入り乱れている状況だけに、世界地図での改めてのキャラのリストアップと位置の明示で幾分見通しがよくなりました。情報整理やバトル演出でいつもにも増してふんだんに見開きが用いられ、状況の錯綜と激化が明快に表現されているのもこのページ数ならではです。

「若様」と認識される人物

まず、神明阿の次期あるいは現当主と黒獄小隊の隊長であるアミルとルシス、さらに黒獄小隊隊員フェルミオンの現状が描かれます。ルシスが気軽に人界へ向かおうとしてアミルに咎められる一幕があり、これが人界へ場面転換するためのギャグなのか後の展開の布石なのかに興味を惹かれます。人界では第68話の扉絵の女性がティトールの端末だと判明し、いかにも一波乱起きる気配です。もしかしてここにルシスが関わるのかもしれません。

アミルが若様と呼ばれていることも気になります。アミルは日本語版では「若様」と呼ばれた場面はありますが、中文版ではこれまでそれを意味する「少爷」と呼ばれる人物がアミルだと断言できる場面はなく、アミルだと断定できる場面では「长官」などと呼ばれています。ルシスが神明阿の血を引いていると思しく、神明阿の 「少爷」の正体はルシスかもしれないという憶測が立てられることから、もしそうなら「少爷」と「长官」の呼び分けは正体のヒントだということになります。なので「若様」の元の言葉は中文版を読むときに注目しておきたいポイントです。ただ、神明阿の現代のトップがアミルであれルシスであれ、神明阿アミルと名乗れる立場である以上はアミルが若様・少爷と呼ばれても不自然な点はないのです。だから呼び分けはヒントの可能性を疑えても、正体の決め手にはできない部分ですね。あと、6P目(アプリ上ではアニメ告知込みで7P目)でアミルがルシスから「アルミ」と呼ばれているのも、単なる誤植なのかルシスがふざけてわざと間違えているのか、中文版を読んで確認したいポイントです。

彼女たちの会話の裏表

ティトールとウェイドの側では、第76話での会話の裏側での探り合いと、あの場面からの続きが描かれます。あの2人の人影の正体とは、再生死果の若返りの眠りから目覚めた神明阿の当主2人でした。言われてみれば助太刀に足る戦力としてもウェイドの時間稼ぎの目的としてもそれ以上に妥当な存在はないのですが、彼女たちの裏の思惑が明かされるまではティトールの有利が続いているように見えたため盲点でした。ウェイドは因縁の相手との決着を2人の当主へ合理的に譲り、端末にした部下で彼らの到着を認識していたティトールも冷静に対応します。踏んだ場数の表れた無駄のない判断と言えるでしょう。その上で、理に則しつつも、それだけではない感情の綾がこの会話からは感じられました。永別の言葉に名残惜しさがにじむウェイドと、茶化しつつも自分の生還と再会に前向きなティトールのやり取りは趣深いです。

この空気からうって変わり、高笑いとともに戦闘へなだれ込む当主2人とのティトールの会話も、超越をひた走るテンションの弾けぶりに痺れます。遠景の圧縮されたコマの連続から一転、見開き2連続での激闘に移る思い切りのいい演出が楽しいです。ティトールには生還してもらわないと同盟はさておきゼロの体が維持できなくなってしまうのですが、この状況を切り抜ける方法はまだ見当がつかないですね。同時刻のヨウの側も困難な状況なものの、複雑な協力は望むべくもなさそうです。人界に残した端末が偶然一般人らしい男性に接触されたことが、あるいは解決の思わぬ糸口となるのでしょうか。

限界の認識

こまめに描写されていた一徒たちはともかく、同じく堅龍要塞に派遣された黒獄小隊のリーたち3人はかなり久々の登場です。うっかりこの3人のことを考慮に入れそこねた感想を以前書いてしまった覚えがあり、彼らには申し訳ないことをしてしまったかもしれません。短い出番ながら今回の彼らは精鋭らしい戦闘力を発揮し、印象に残る活躍をしてくれました。一徒も、エリンたちに為す術無く挑み瞬殺されるような構造者と比べれば、戦闘力や判断力そして感性の面で頭ひとつ抜けているところを見せてくれます。ですがそれだけに真に超越的な存在の引き立て役にうってつけであり、ある意味で損な役回りが任されがちです。バトル漫画の脇役としては、このままでも、汚名返上の活躍をしても、あるいは功を急いて悲惨な末路を迎えても役割を全うしたと言えるだけに、これからが気になります。

また、第35話でエリンたちと遭遇して以来行方不明になっていた漫画家のムダジは本当に久しぶりの登場となりました。それにちなんでか今回の扉絵はメタギャグ的です。もしかしたらあの悪口は彼の漫画に対する評価なのでしょうか。ただ、それにしても自分にとっては刺激の強すぎる内容で一瞬ギョッとしました。こういう自虐的なギャグは受け取り方も含めてさじ加減が難しい分野かもしれません。それはともかく、生存が判明したからにはムダジには無事に帰還して欲しいところです。彼のいる場所は物資保存エリアであり、どうやら生きた肉として捕獲されているようで、どうにかこの危機を切り抜ける必要があります。大局への影響も含め、わかりやすく“思わぬ”活躍の期待される役どころですが、見え見えでも期待に応えてもらえたら何だかんだ嬉しいものです。