群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第0話感想 ~振り返る

第0話 因 10P

今回は第0話で、10Pです。中国では先日第年秒先生の微博にて、最近執筆ペースが不安定になっている理由とそれを解決する目処が立った旨がアナウンスされていました。イレギュラーだろう話数とページ数ではありますが、アニメ放送直前の今は物語の始まりを確認するのにうってつけの時期でもあります。

重要な登場人物ながら謎の多い「彼」の内面が明かされます。

因果の出発点

第52話でヨウの脳裏に再生された他の誰かの記憶、それがその「誰か」の視点で語られます。「誰か」とは第33・34話で因又(インヨウ)と呼ばれていた黒い瞳のヨウ、いつものヨウとは別のヨウです。彼はクー・ティトール・オーフィス・トトをすでに失っていて、最後の家族であるゼロさえ眼の前で亡くすという悲劇に見舞われました。周囲の様子からすると広範囲、あるいは世界全体で空間崩壊が起きたようで、逃れられたのは因果限界で空間転移できる黒い瞳のヨウのみです。おそらく神明阿一族が聖心を手に入れたことによる文字通りの世界滅亡の結果でしょう。ノイズまみれの黒いコマ、足のクローズアップからひとりぼっちで空白へ向けて遠ざかる後ろ姿に切り替わるコマの流れ、いずれも彼の喪失感をこれ以上無く伝えてきます。そこから思い直し、新たな可能性に向かってもう一度歩き出す決意の瞬間も、生命力の感じられる美しい風景によって静かながら力強く胸を打つ場面となっています。そして彼がもうひとりの彼と出会う瞬間、つまり拾因がいつもの金の瞳のヨウと出会った瞬間が、拾因の視点からも改めて描かれます。

拾因の正体とはやはり黒い瞳のヨウでした。彼の心情はこれまでに断片的に示されていた内容からおおよそ察することはできていたとはいえ、ようやく彼の本心を彼自身の視点から知る瞬間がやってきたことには、しみじみと感慨深くなるものがあります。彼がヨウに託さざるを得なかった使命や希望の重みも改めて心に染みます。『群青のマグメル』は設定面ではまだわからない部分ばかりですが、今まで読み続けてきて良かったと確かに思える内容でした。

世界と3人の因又・拾因

ヨウが複数存在するのは他の世界が存在するためだと以前から推測できていた通り、ようやく別の世界の存在が明言されました。かつて滅んだ黒い瞳のヨウの世界と、いつもの金の瞳のヨウの世界という、少なくとも2つの世界が存在することは間違いありません。さらに世界について考えるにあたっては、今回は描写されていない第53話の遥かのマグメル深部の、ヨウと同じ身体的特徴の少年の存在も思い出す必要があります。この少年はいつものヨウではなく、全く事情を知らないと思しい様子から黒い瞳のヨウ=拾因でもありません。つまりヨウに類する存在が3個体確認できることになります。遥かのマグメル深部の少年は第58話でいつものゼロと同じ身体的特徴の少女から「ご主人」と呼ばれています。この2人は第10.5話のゼロ・「ご主人」と同じ服装であり、同一個体である可能性が高いです。

ここで問題となるのは同じ人間が3人いるなら世界も3つかそれとも2つか、いつものヨウと遥かのマグメル深部の少年が存在するのは違う世界か同じ世界なのかという点です。

世界と3本の鍵

手がかりとして注目すべきはやはり念動結晶でできた黒い鍵でしょう。トト・ビックトーの父であるオーフィスが宝探し用の宝を用意するためにつくったあの宝箱の鍵です。

①いつもの世界のオーフィスは世界に1つしかないという黒い鍵をトトに渡しました。

黒い瞳のヨウの世界のオーフィスは鍵をヨウ・ゼロに渡し、それは身につけていたゼロが亡くなる瞬間にヨウの元へ紐の一部を付けたままちぎれ飛びました。

②そして拾因は世界を超え、その遺体のそばから紐のついた鍵をティトールが拾い、ヨウに渡しました。

③同じく紐のついた鍵は、遥かのマグメル深部の少年も持っています。この少年と同一個体の可能性が高い第10.5話の「ご主人」は、今は行方不明の古い友人からこの鍵をもらったといいます。

また、紐のついた2つの鍵のどちらかは完全構造力による複製だと、第65話でヨウは推察しています。この回では鍵と世界についてのより核心的な言及もあります。

「こうしていると確かに他の結晶の存在を感じる トトが持っている鍵を含めて三つ…」
「二つ目は宝箱 残る一つは3本目の鍵…」

このヨウのセリフを最初に読んだときは、遥かのマグメル深部はいつもと同じ世界に位置する可能性が高いと思っていました。もしあの少年が別の世界にいるのに、いつものヨウが鍵の存在を感知できるのなら、他の世界の宝箱も同じように感知できるだろうと考えたからです。しかし黒い瞳のヨウの世界は空間ごと破壊されたようで、当然宝箱も完全に破壊されたはずです。さらに遥かのマグメル深部の少年の世界にはビックトー親子が存在しないなどの理由で宝箱がつくられなかった可能性もあります。ならばいつもの世界と遥かのマグメル深部が別の世界でもおかしくはありません。第10.5話の「ご主人」とゼロも拾人館を営んでいる点を考慮に入れるなら、別の世界であるほうが自然でしょう。この場合、今回の8P(アプリの表示では9P)の「の世界が残ってる」とは、「」と「の世界」でなく、「」の「世界」、つまり(=いつものヨウ)の世界と(=遥かのマグメル深部の少年)の世界が残っているという意味になります。

ただ一人の因又

どちらが正しいにせよ、「ただ一人運命を許された君に」というのですから、運命を変えられるのがいつものヨウだけなのは間違いありません。いつものヨウと遥かのマグメル深部の少年には何か運命改変に関わる違いがあるのでしょう。その理由の可能性としては、構造能力の違いがひとまず思いつきました。黒い瞳のヨウ=拾因は、現実構造と、神の見えざる手と因果限界という2つの幻想構造、合計3つの能力を使用できます。そうした摂理を超えた構造が可能なのは、自分の構造の理解を通じて別の自分の構造を理解したためだという仮説が立てられます。仮説に仮説を重ねることになりますが、いつものヨウがベースとしては現実構造者であることが、例えば完全構造力の操作などで何か決め手となるのかもしれません。ただし確信の持てる答えはまだ思いつかないので、今は素直にこの先の展開を心待ちにしたいところです。