群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル 第13話振り返り感想 ~言葉を理解するエリンたち

第13話 目覚め 20P

原題:空想阴影(直訳:空想の陰影)

エミリアの口からダーナの繭もエリンも通常はマグメル奥地でしか見られないことが説明され、その両方が市街地を占拠している現在の異常さが確認されます。エミリアとクーの会話はここでも上手く成立せずにクーは高圧的な態度をとり続けますが、やたら高いところへ登りたがるなど妙に愛嬌のある部分は既に見せ始めています。

ヨウたちは構造力の説明を前回の基礎的な段階からある程度実践的な段階まで進めていますが、この部分の説明は翻訳の際に用語の混乱がありわかりにくくなってしまっています。「マグメルに愛された」人という言葉の初出は第7話で、そこでは中文版では「圣洲眷顾」之人という言葉が使われています。「眷顾」とは目をかける、ひいきにするという意味なので第7話での訳自体は妥当です。その部分は構造者を目覚めさせることを目的とした神名阿アミルが9人の探検家の資質について言及する場面であり、第30話の中文版では拾因がヨウと自分の構造者の才能は聖洲から授けられたものという意味のことを述べているので、「圣洲眷顾之人」とは構造者の資質がある人だということと捉えて良いでしょう。

問題は「圣洲馈赠」者という言葉まで「マグメルに愛された」者と訳してしまったことです。「圣洲馈赠者」はマグメルが贈り物をした者という意味で、常人を超えた身体能力を持つ人を指す際に使用された言葉なので、一見この言葉も「圣洲眷顾之人」と同じ内容であるように思えます。しかし正しく読めば強身薬で身体強化している人のことを指す言葉だとわかります。今回の話でも蛍火の身体強化に関するヨウからのコメントで「圣洲馈赠者」という言葉が使われて、既に蛍火が使用していた強身薬と比べると目覚めたての構造力による強化の上乗せは効果が微弱すぎてまだ能力に目覚めた実感が湧かないだろうという意味の説明をしています。しかしヨウが言った「マグメルに愛された」者という言葉と神名阿アミルが言った「マグメルに愛された」人という言葉が別の意味だと日本語版ではわからないので、意味が掴みづらくなってしまったのです。

ヨウたちがこうした会話をしている間にエリンに見つかってしまい、再び事態が切迫します。そしてエリンたちが次々と登場するのですが、これまでの化物然とした描写のされ方ではなく意志のあるキャラクターとしての描写のされ方をしています。特にわかりやすいのが3頭身の種族のエリン達です。この種族は最初に出た3人は体が小さく比較的頭も悪いようですが、今回ヨウに殺された個体は体が大きくややたどたどしいながらも彼らなりの言語的な思考もきちんと出来ています。さらにお頭である個体は体が相当に大きく、おそらく繭の中で見つけたのであろう人間の言語で書かれた本を読んでみるなどかなりの知的好奇心を持っていることがうかがえるほぼ人物描写と言っていい表現があります。エリンたちが一種の「人」であるという事実は『群青のマグメル』においてこれ以降も重要な要素となっていきます。