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『屍者の13月』第12話感想 ~西暦2020年の光と影

第12話 三川のあの日 26P

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西暦2020年の三真法門

3人目の伝承者である段星煉の暮らす2020年の三川が描かれました。

段星煉は一見おとなしそうなキャラですが、同月令を使って737人の法師を抹殺したいという過激な目的を持っています。ただし人数が具体的なので、単に大量殺人をしたいのでなく、何らかの理由で抹殺したい具体的な敵なり組織なりがいるようです。白小小の話を聞いてもなお大量殺人がしたいのですから、よほど強い動機と覚悟があるのでしょう。深い闇を覗くような経緯があるはずです。

西暦2020年は高皓光の理想とする科学の発達した世の中です。しかし理想はひとたび実現してしまえばただの現実になります。現実の世で生きる者には、理念の光の面だけでなく影の部分にも向き合う必要があります。

その動機と関係しているのか定かではありませんが、今回の冒頭ではおそらく未来の段星煉が瀕死の重症を負っています。ともに死にかかっている女性は姉弟子の周六晴でしょう。やはり残酷な運命に従うだけでは残酷な結末から逃れられないのです。ただし未来で親しい人の危機を前にして憤ったことで、段星煉は時間の壁を超えて同月令を起動させ、運命に抗う力を授かるようです。この力は前回で現在の段星煉が望んでいた力です。親しい人の危機を前にして憤ったことで力を授かる、という経緯は高皓光とも共通しています。得た力で段星煉にも親しい人を救ってほしいのはもちろんですが、どうにか彼自身も助かってほしいです。

周六晴は格好良いお姉さんタイプで自分のツボに入りました。やや傍若無人ですが、段星煉とのやり取りからは確かな絆を感じます。段星煉の過激な望みも好ましく受け取っており、なかなかクレイジーです。彼女が段星煉の動機の背景を知っているかどうか気になりますね。

西暦500年の忘川術院

西暦500年の姜明子は西暦525年の彼以上に性悪です。どうやら忘川術院という法術の本拠地に殴り込みをかけたようですが、幻術で隠された門を探すついでに女に化け、近くの不逞兵士たち数人を抹殺しています。彼の性格からすると、世直しのためというより、不逞兵士は嫌いな虫以上に汚らわしいので自分の目の前から排除したいということなのでしょう。西暦525年の姜明子は殺人でなくもっぱら無人の地で生活することで汚らわしい俗世から遠ざかっています。

第2話からすると三真同月令の術を完成させた姜明子のようですが、西暦500年の時点の彼は既に術を起動させているのでしょうか。彼にも他の2人のように同月令を起動させるきっかけはあったのでしょうか。そもそも同月令はいつどのような方法で作られたのでしょうか。謎はまだまだたくさんあります。

忘川術院の忘川とは中国の民間伝承でいう三途の川のことです。忘川河(忘川)を渡る魂はそれまでの記憶を失って新しい命に生まれ変わるといいます。また今回のエピソードの主な舞台となる地は三川のようです。三途の川という呼び方は基本的に日本特有のものですが、この三川という文字からも彼岸に渡る川が連想できます。さらに三川という地名は現実にも複数箇所存在するだけでなく、三人の三真同月令に選ばれし者を表す「三」と、それを90度回転させた「川」が組み合わさったものになっています。こだわりを感じる舞台設定です。