群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第77話感想 ~目覚めの時

第77話 ズレ 24P

黒獄小隊が作戦行動に入り、朝起きたばかりのヨウとティトールの意識が戻らないゼロの体、そしてもうひとりが拉致されます。

健康朝食

朝の聖心城での聖国真類の日常の様子が描かれます。壮年のサイと息子とのほのぼのとしたやり取りは直前の洗脳され家族で殺し合う山行類の凄惨さと対比されるものですが、露悪にならない程度のさりげない描写なのでかえって物悲しさが味わえます。異変の報告によってすぐに全体里が緊迫感に包まれるものの、朝食の話題が強者会の連絡でも何度も出ていてまだどこか目の覚めきっていない印象が残っています。冒頭のナレーション通りの強者ゆえの危機意識の低さと、100年間里が平和だったことによる油断が表れているのでしょう。あの厳格そうなラーストまでが以前にサイの勧めたという健康朝食を食べながら指示を出しており、妙なおかしさが出ています。健康朝食の描写はこれだけなら浮いたギャグなのですが、この記憶に残る感じが後半でクーがヨウに健康朝食を持ってきたため一緒に拉致されていたことの前振りとして活かされて面白かったです。言われてみれば拉致の瞬間ネストの右端に人影らしいものが見えます。思わぬ連鎖が予知に綻びを生じさせる鍵となりました。

強者会の面々のうちではサイの能力が明らかになり、ハクの能力も発言の真偽の確認に使える幻想だと推測できる描写がありました。

起き抜けの拉致

ヨウは朝食を出す店をクーに尋ねるものの、返事をもらう前に拉致されます。前回黒獄小隊が言及した目標とはヨウとゼロを端末としているティトールのことで、それを語る時にフラスコネスト内に見えた人影もカーフェたちでなくヨウとゼロだったのですね。確かにティトールに疑いの目が向いている状況で姿を消せば、犯人と断定されなかったとしても少なくとも同盟はご破産となるでしょう。地下1800Mでは構造をうまく使用できても脱出さえ困難です。

この場面での黒獄小隊の動きは、作戦については予知通りなのでうまくいくのは当然としても、手際の見事さには感心させられます。岩を飛ばすのに鋼とゴムというひたすらシンプルな構造を使用しているのがいかにもプロらしい無駄のなさです。カーフェの能力の詳細も明かされ、厄介な構造なのが改めて印象付けられました。ネスト内が不可侵となるだけでなく、物質を透過したまま移動可能で、一度に5つ出せるのですから応用の幅が広いです。ただ、ネストに入れるのは構造者と構造力のみであり、今回うっかりクーを連れてきてしまった点から出入りのタイミングは操作できるとしても対象までは選択できないようで、攻略の知恵を絞る余地はあります。なお厳密にすると目のやり場などで困る部分なので深く触れないのがお約束ですが、服と持ち物は通常の物質でも持ち込めています。

意識のない肉体

実力者のクーがいるとしてもヨウは負傷しておりティトールの意識も戻っていないのですから、黒獄小隊に正面突破で勝利するのはほぼ不可能な状況です。逃げ切るにしても相当な策が必要でしょう。ここで気になるのがティトールの本体がどういう状態なのかという点です。前回でウェイドが構造力が尽きたのはヨウが寝る直前の7時間後とされており、この場面とおよそ同時刻と考えられます。先に第四要塞に攻め込んだのはティトールの側ですが、ウェイドの目的は第66話によれば時間稼ぎであり、つまり何かを待っているのです。それが端末を無防備にした状態での拉致だとは限りませんが、ウェイドにも黒獄小隊への命令が報告されている可能性がある以上、タイミングを合わせて両方の任務の成功率を高めようとしていてもおかしくはありません。単に偶然だとしてもティトールにとって対処に困る状況なのは同じです。ティトールがいつゼロの体に意識を戻すのか、あるいは戻さざるを得ない状況になるのかは、この対峙において注目すべきポイントです。