群青のマグメル~情報収集と感想

ウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』で連載中の『群青のマグメル』を非公式に応援するブログです。

群青のマグメルを応援する

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ウェブコミック配信サイトの少年ジャンプ+で中国人漫画家第年秒先生が連載中の『群青のマグメル(原題:拾又之国)』を非公式に応援するブログです。
隔週連載の感想は毎回できるだけ更新の翌日までに投稿するのを目標とし、その他何か情報が書くべきことがあった場合は不定記に投稿します。
『5秒童話』や『長安督武司』など第年秒先生作の他の漫画の感想もできれば書いていきたいです。
基本的に情報解禁日時は日本に合わせますが、ウェブ上でわかる範囲で中国での情報をお届けすることもあります。

画像等の引用について

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権利者様側からの削除の依頼や警告には速やかに対処いたします。

群青のマグメル第39話感想 ~破滅の回避

2017/06/16 写植の追加について追記

第39話 失敗 20P

本題の感想の前にまずクーの服の模様について。今回の7ヶ月前のクーの服の模様を見る限り、作画ミスなのか替えの服を持っていたのかはともかく、時期によるクーの服の模様の違いというのは第年秒先生が特に注意を払っている部分ではないようです。つまり伏線ではなさそうだということで、今までこの部分に関して私が書いた内容は的はずれであったようです。

閑話休題

今回は前半の「目標」を巡る3勢力の激突から後半のクーのヨウとの回想と決意に至るまで、緩急がついていながらも緊張感のある流れが滞ることのない完成度の高い1話となっています。状況の提示は前回でほぼ終えている分ドラマの密度を上げることに注力されていて、読んでいて純粋にとてもワクワクできました。

3勢力の激突は既に目標を手に入れた上での敵の掃討を狙う黒獄小隊の副隊長たち、目標を奪おうとし続ける原皇の配下、危険を察知し即座の撤退を決断したクーたちという対比が明快でのめり込みやすく、バトルシーンというよりアクションシーンと言うべき内容ながらも手に汗握って読みました。見開きの使い方も非常に効果的で、間延びせずに最大限の迫力を出しています。

黒獄小隊の隊員が核構造を使用したことから、構造力による黒い渦に包まれたあるいは渦のそのものである目標とは、第35話で神明阿アミルとルシスが言及していた目標と同一の物だとわかりました。黒獄小隊の隊員たち4人は有能さも然ることながら、特に副隊長のにじみ出る性格の悪さが悪役として格好良く魅力的です。副隊長の皮肉のきいた挑発はセンスが良く、翻訳者がかなり気を使って言葉を選んだのを感じます。4人の口調もやり過ぎにならない程度に個性的でいい塩梅でした。隊員同士の会話は短い中にもユーモアがあってこれからのキャラクターの深まりが楽しみです。副隊長の幻想構造は害をなすものの透過を機能として持つようですね。他の3人は現実構造者であるようなので姿を消す(気配を消すことまで含めたいわゆる隠身・隠形に近い概念?)機能も彼のものでしょう。総合すると完璧なシェルターの幻想というような能力でしょうか。

また、クーの側も状況の把握の早さ、次善の選択の的確さがきちんと描写されています。激しいバトルを見せていた前回よりもむしろ今回のほうが彼の能力の高さが印象付けられました。目標を奪われ同胞の1人を殺されてと任務は完全に失敗に終わってしまっていますが、最後にヨウとの連絡を考えたことは話の全体を考える上では希望の持てる行動であり、後味の悪さを残さないストーリー構成です。

核構造を回避してからの、クーのヨウとの会話の回想はまさに『群青のマグメル』のストーリーにおける白眉のシーンともいうべき出来栄えです。的確に情感を持って仕上げられた港の風景、吹く風や流れる空気を想像させる長い髪のたなびき、何よりも友への別れの言葉の切なさ。そういった全てがいやが上にも詩情を掻き立てます。「ここでの日々は 我にとってもそこそこ楽しかった」と言っているあたりまでは背を向けていてまだ少し格好つけようとしている分、振り向いてヨウと目を合わせての「我の敵にならないでくれ」とそれに続く言葉が何の飾り気もない彼の本心であることが際立ち、胸に迫るものがあります。そしてヨウたちと離れ一人になったと思ってからの、端正に伏られた目元からこぼれ落ちるような悲しみとヨウに生きていて欲しいという祈り。

あの「彼ら」が別れたのも海の見える場所でのことでした。あの彼も黒い瞳のヨウを見送る際には生き延びてくれることを願ったのかもしれません。しかしそれを願った彼自身がおそらく死んでしまったことを私たちは知っています。彼らは殺し合ったのでしょうか?それとも殺し合うことさえできずに、彼は他の人間たちの手にかかって殺されてしまったのでしょうか?どちらにせよ友の生を願ったはずの彼の死が、願われた友が死に臨んだ一因となったのであろうことは皮肉としか言い表すことができません。

こうしたシリアスを全てぶち壊すのが現在のヨウのマイペースさです。できるのはわかっていましたが、剣に乗って飛んでいるのは改めて見るとすっげえシュールです。からかってやるなよクーは真剣なんだからさ、真剣なほどからかいたくなる気持ちもわかるけどさ、と言いたくなる感じのコメディ的な会話で心が温まります。ここで手渡され、激怒しつつもなんだかんだクーが受け取ったイヤホンが現在もクーとヨウを繋げ続けています。この繋がりによってヨウとクーの敵対に至る未来へのルートは回避できたとみて間違いないでしょう。しかしクー生存ルートが確定したとみていいものかどうか、油断していると痛い目に遭わされそうな作風だけに不安が残ります。

『群青のマグメル』の設定は複雑で一見とっつきづらく思えますが、それも登場人物のドラマを引き立てるためには必要な背景です。私も別に複雑な設定自体が好きなわけではないのですが、それを解きほぐすことで見えてくる彼らの心情とぶつかり合いには惹きつけられてやみません。あの世界とは、ヨウとクーに起こり得るかもしれない未来であり、「彼ら」には既に起きてしまった過去なのです。

ところで核構造を回避する際にクーと密着したミュフェが風圧を表現する線に紛れる形でさりげなく頬を染めているのが可愛らしかったのですが、19Pの1コマ目のクーの頬の斜線も汚れと紛らわしくしてはありますがタッチの違いを見る限りでは実は赤面の表現であるようです。クーは可愛い。

 

写植の追加について

2017/06/16の未明に読み返してみたところ、06/15の夕方には存在しなかった写植が6・7Pの3箇所で追加されていました。

具体的には「三重合構(デルタラクト)!!!」「触れられざる隣人(フラスコネスト!!)」「核構造(アトムラクト)!」という構造名に関する部分です。

能力名は能力バトルでは重要な部分なので気をつけて欲しいところです。

変更後と変更前のスクリーンショットです。

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群青のマグメル第38話までのまとめ

■2つの世界と3本(?)の鍵■

前提:偽造不可能な黒い鍵とオーフィスがマグメルに隠した小切手入り宝箱の存在

前提

2つの世界

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黒い瞳のヨウの世界は、黒髪(?)のゼロが宝箱を開けた世界。

金の瞳のヨウの世界は、原皇が宝箱を開けた世界。

黒い瞳のヨウの世界に存在する1本の鍵

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キーヘッドに紐付き。

金の瞳のヨウの世界に存在する3本(?)の鍵

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原皇が拾因の死体の近くで手に入れヨウに渡した鍵。

 キーヘッドに紐付き。

オーフィスの遺品でトトが持つ鍵。

 キーヘッドに紐なし。

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ヨウがゼロに渡した鍵。

 キーヘッドに紐付き。

ヨウがルシスと初めて顔を合わせた時点で既に持っていて、古い友人が詳細を教えずに託した鍵なので、原皇から渡されたのとは別物。

古い友人は当時行方不明の人物なので拾因のことである可能性が高いが、その場合拾因の鍵が何故か2本存在することになる。

黒い瞳のヨウ=拾因ならばトトの鍵と拾因の鍵が1本ずつ存在することは説明できるが、拾因の鍵が2本存在する、または別の事情によってそう見える理由は説明できない。

また、ゼロの予感通りにこの鍵が使用される時は来るのか。

それはどんな状況で、鍵の使用によって何が起きるのか。

仮説

  1. 3つ以上の並行世界が存在して拾因も2人以上存在し、鍵も3本以上存在する。
  2. 3つ以上の並行世界が存在し、拾因は複数の存在が重なり合うなどして1人だが、鍵は並行世界の数だけ存在する。
  3. 並行世界の数は2つで、ヨウが拾因から託されゼロに渡した鍵は拾因の卓越した技巧による現実構造である。
  4. 実は鍵は2本しか存在しない。何らかの叙述トリックが使われている。

■2つの世界と登場人物■

2つの世界と登場人物

■第38話までの相関図■

相関図

■引用■

2つの世界と3本(?)の鍵

1 36話 7P    
2 33話 3P    
3 25話 11P    
4 33話 4P    
5 36話 8P    
7 33話 7P    
8 36話 7P    
10 26話 24P    
11 26話 24P    
12 36話 9P    
13 10.5話 2P 単行本第2巻(kobo版) 69P
14 10.5話 20P 単行本第2巻(kobo版) 87P
16 8話 4P 単行本第2巻(kobo版) 9P
17 8話 5P 単行本第2巻(kobo版) 10P

 

2つの世界と登場人物

ヨウ(左) 33話 12P    
ヨウ(右) 28話 1P    
拾因 30話 20P    
ゼロ(左) 33話 5P    
ゼロ(右) 7話 2P 単行本第1巻(kobo版) 171P
クー(左) 34話 17P    
クー(右) 37話 17P    
クラウドボルグ 20話 8P 単行本第3巻(kobo版) 93P
聖国真類3人(左) 34話 19P    
聖国真類3人(右) 34話 11P    
ミュフェ(左) 34話 19P    
ミュフェ(右) 38話 9P    
聖国真類6人 32話 17P    
デュケ 37話 19P    
エミリア 1話 48P 単行本第1巻(kobo版) 51P
オーフィス(左) 33話 16P    
オーフィス(右) 26話 24P    
トト(左) 33話 16P    
トト(右) 25話 10P    
ティトール(左) 33話 16P    
ティトール(右) 36話 12P    
神明阿アミル 31話 19P    
リー長官 29話 20P    
黒獄小隊隊員(左) 29話 20P    
黒獄小隊隊員(右) 29話 20P    
一徒 13話 10P 単行本第2巻(kobo版) 139P
ボルゲーネフ 13話 10P 単行本第2巻(kobo版) 139P
キミアイオン 13話 10P 単行本第2巻(kobo版) 139P
蛍火 27話 3P    
?(神明阿配下) 38話 20P    

 

第38話までの相関図

イン ヨウ 31話 14P    
ゼロ 2話 15P 単行本第1巻(kobo版) 92P
拾因 29話 20P    
クー・ヤガ・クラン 31話 14P    
ミュフェ 38話 9P    
デュケ 37話 19P    
クーン 37話 19P    
聖国真類集合 32話 17P    
聖国真類の瞳孔 22話 19P 単行本第3巻(kobo版) 144P
神明阿アミル 31話 19P    
神明阿一族の紋章 6話 15P 単行本第1巻(kobo版) 162P
一徒 13話 10P 単行本第2巻(kobo版) 139P
ボルゲーネフ 13話 10P 単行本第2巻(kobo版) 139P
キミアイオン 13話 10P 単行本第2巻(kobo版) 139P
蛍火 27話 3P    
ルシス 10.5話 16P 単行本第2巻(kobo版) 83P
リー長官 29話 20P    
黒獄小隊隊員(上) 29話 20P    
黒獄小隊隊員(下) 29話 20P    
黒獄小隊隊員集合 31話 7P    
エミリア・チェスター 1話 48P 単行本第1巻(kobo版) 51P
極星社社章 1話 20P 単行本第1巻(kobo版) 23P
トト・ビックトー 25話 10P    
原皇 ティトー 36話 12P    
原皇の紋章 26話 1P    
フォウル国集合 29話 6-7P    

群青のマグメル第38話感想 ~乱戦を制するのは

第38話 構造戦 20P

前回からクーンという聖国真類が構造の能力によって理解しようとしている何かを巡ってのバトル回です。基本的には2対5、ラストはより多くの頭数が加わってのバトルということで、相当な乱戦となっています。

ミュフェの構造者としての力も読者に対して初めて披露されます。ミュフェは現実構造者ということですが、これまでに人間が出現させたリアル系の現実構造とは異なり、エリンらしいケレン味のある現実構造を出現させます。デザインはいわゆる巨大ロボットのようであるだけでなく、角や瞳孔など聖国真類(というかクー?)のモチーフの装飾が施され武器も山刀風と独特のものであり、民族特有の呪術人形のような趣きがあって面白いです。一から聖国真類が製造した物を元にしているのか、人類が製造して聖国真類が鹵獲・改造した物を元にしているのかは定かではありませんが、聖国真類が高い技術力を持っていることもうかがえます。また、今回ミュフェが構造するのは巨大人型兵器や刃の大量に付いた盾など無骨な物ばかりですが、彼女の紋章であるらしい蝶々のマークは女性的かつ繊細でギャップに可愛らしさがあります。

クーの方は久々の手加減無用での殺し合いということで相当にテンションが高く張り切っています。前回の仲間の女の子にオタク扱いされ押し倒されかけていた姿とは全く違う戦士としての面を存分に見せてくれます。バトルにおいては流石戦闘種族といった高揚ぶりで、これと比べるとダーナの繭でヨウと闘った時はヨウの調子に合わせながらきちんと抑えていたんだと今更ながらに思いました。大量のミサイル類や火器類の構造による破壊力やそれを可能とする構造力の技量も非常に高く、いずれの敵対勢力からも名指しでマークされているだけのことはあります。ただ、エリン同士の闘いだと身体耐久力のこともあって重火器だけでは決め手となりにくいようです。今回転霊類を殺害したのも至近距離からの首の切断によるものでした。なんだかんだでクーも小回りを効かすことはできるのですが、力を誇示したがることもあって大味な攻撃を好むところは詰めの甘さを招きがちです。ヨウがいればこのあたりを補い合えるので上手くいくんですけどね。
そしてエリン同士のバトルもクライマックスか、と思われたところで乱戦を利用して目標物を手中に収めたのは人間である神明阿一族配下の構造者たちです。初めて読んだ時は違和感がありつつも流してしまったのですが、読み返すと4P目の唇に傷のある含み笑いの口元と6P目の聖国真類を舐めたような目線で批評しつつ隙をうかがう両眼が彼らのリーダー格のものであるとわかり、背筋をゾクゾクさせてくれます。感知力が高い描写をされているクーにも気付かれなかった点から、彼ら4人の中に気配を消す機能を含んだ幻想構造の構造者がいそうです。

今回のように、残酷ではあっても正面対決を好むエリンに対し、人類が策略を仕掛けることで自らの悪辣さを顕にするという構図は『群青のマグメル』では度々強調されるものです。そのこともあって私は最終的なラスボスは原皇よりも神明阿アミルの方ではないかと思っているのですが、現時点では唯の空想ですね。また一勢力相手なら十二分に対抗できても、もう一勢力に背後をつかれてしまうという構図は、今の聖国真類が置かれている立場をそのまま表すものでもあります。黒い瞳のヨウのこともあり、クーたち聖国真類の行く末には不安感が高まりますが、それが読者の先の展開に対する興味を煽ってもくれます。
前回神明阿の動向を探ることを決めたヨウに対し、クーの方は神明阿から目標物を奪い返すことが当面の指針となりそうですが、この目標物とは何なのでしょうか。黒い渦巻きの描かれ方やフォウル国の配下は構造者が死ねば逃げるしかないと言われていることから、構造力関連の物なのは間違いないのですがそれ以上はまだ明確にはできません。もしかしたらこれが神明阿のいう拒絶する力を回避しつつ大勢の人類をマグメル深部へ送る方法と関係がある物で、第8大隊の後始末のための目標とも同一の物なのではとは考えていますが、確証はないですね。とりあえず、対神明阿という点でヨウとクーの早めの合流が期待できそうなのは嬉しいです。

群青のマグメル第37話感想 ~感情を抑えきる理性

第37話 不穏の火種 20P

前回は怒りの感情も交えてスケルガーゴンを攻撃したように見えたヨウでしたが、結局命は取らずに遠くへ追い払っただけで済ませました。どこか白けた顔をしているあたり攻撃をしてすぐに自分が八つ当たり紛いのことをしたと気が付いて、手を緩めざるをえなく感じたのでしょうね。命拾いしたスケルガーゴンさえも困惑気味で、むしろ特に思うところが無い時のヨウの方がサックリと始末していそうな雰囲気です。

事情を知らないトトの会話でも不機嫌さを引きずるようなことはせずに、努めてごく普通の態度で対応しています。今までのヨウを思い返してみても、感情を込めた行動を取ることはあっても、感情のみに振り回された行動を取ることはありませんでした。その分はじめは掴みどころのないように思えるのですが、一度取っ掛かりを見つけると思いの外ナイーブな心情が理解できるようになります。
同じく考えの読みにくい人物といえば拾因でしたが、ヨウとの会話の回想で少なくとも分別は見た目ほどには荒れ果てていないことがわかりました。特に自分とヨウが別の人間だと承知した上で幸せを願っていると提示されたことは彼を理解する上で大きな意味を持っています。しかし、だからこそ、拾因の端々での感情の覗かせ方が本当にヨウそのものだと感じてしまいました。彼の繊細さと踏み越えられなかったのであろう家族の死を思うに、理性が残っていることにホッとするよりも、悲嘆を内に抑えきれてしまうことに物悲しくなります。拾因は死ぬまでヨウ以外相手の前では仮面を被り続けたのでしょう。

拾因の現在の人間性について疑問を呈する文章をこの話を読む前に書ききっておいて本当に良かったです。拾因が人の道を踏み外す選択をしたのはほぼ間違いないとはいえ、彼のことを興味本位でわざと穿ち過ぎて見るようなまねは私にはもうできなくなってしまったからです。

拾因がオーフィスと接触することで探そうとした人物とはおそらくゼロのことですね。もしかしたらオーフィスとゼロの親族が拾因の世界で知り合いだったのかもしれませんが、背景の不透明さを鑑みるにオーフィスが高い地位を持つがゆえに知り得た何か特殊な事情がゼロにはあるのかもしれません。今回のゼロは読者と同じくヨウとトトに面識があったのを知らなかったということで、ショックを受けている様子が理解しやすくていつもより可愛く感じます。拾因の世界ではトトとほぼ同年代だったことを知っているせいで余計に幼く思えるということもあるかもしれません。ファミレスで皆で食事をしている姿にも親近感が湧きます。

また、一連の会話で神明阿一族の動向を探るという具体的な行動理由がヨウに生まれたことは『群青のマグメル』の展開全体での転機となりうるものです。第一部でのヨウは基本的に受け身な立場でしたし、「世界を救う」という目的もそれのみでは漠然としすぎていました。ヨウが自ら行動を起こすことでこの先どうなっていくのか、期待が高まらざるを得ません。
繊細なヨウパートから打って変わっての久々のクーの出番は、いつもながら印象が鮮やかです。オタク扱いされる掴みからしていい意味であざといと言う他ないです。ちらちら顔見せしていて今回が初の本格登場となる聖国真類の少女のミュフェとの絡みも青い春があまりにも青くて青くて甘酸っぱすぎです!中国で言う青梅竹馬ってやつですね!それにしても『群青のマグメル』の女性キャラはみんな肉食だなぁ。引きも派手なバトルを予感させるものでなかなかに盛り上がります。

一方でこの7ヶ月の間に成長に合わせて新調したのか、服の模様が大人の彼と同じく上に膨らむものとなっていたりと芸の細かい描写もされています。何もしなければ訪れる破綻は少しずつ近づいているのです。

群青のマグメル第31話の2P目の追記

第31話の感想の追記ですが量が多くなったので独立したページを作成しました。

この話の2P目の文字だけのページでは重要な事柄が多く示唆されているのですが、特に日本語訳では伝えきれていない内容も多いので、全文を引用して注釈をつけさせていただきました。

 

 ヨウ

 もちろんヨウの名前で、5回出現しています。

中文版でも「又」という表記なのですが、漢民族にとって漢字一字の名前を敬称などもつけずに単独で呼び捨てにするのは、実の家族でさえ滅多に使わないほどの最上級の親密さを表す呼び方です。この場合は2人が師弟という親子に準じる関係であるためでしょうが、拾因にとってはヨウが自分と非常に近い存在であることから弟や息子のように感じてしまったためなのかもしれません。

拾因以外でヨウを呼び捨てにするのはクーのみです。流石のヨウも名だけを呼び捨てという特別な呼び方をされればすぐにクーを思い出せるため、中文版ではクーはマスクを外すコマまではこの呼び方をしません。クーの場合はヨウと親友だというだけでなく、漢民族の礼儀を理解しない「野蛮人」だという演出でもあるのでしょう。

ですが「野蛮人」のクーでさえも、中文版では喰い現貯める者を通じてという裏の読みうるコマ以外では、拾因のことは拾因という普通の呼び方をしています。

 

俺? 俺は拾因よろしくね

イン?それ俺のこと?
愛称なんて久しぶりだなぁ

上の文章の中文版を直訳すると「俺のことは拾因って呼ぶんだよ」、下は「なぜ阿因と呼ぶんだい?俺たちそんなに仲良くなったかな?」となります。

漢民族にとってはフルネームで呼び捨てにするのが最も一般的で当たり障りのない呼び方です。

日本語版のインという呼び方では愛称になりません。阿~という呼び方ならば、年下か同年代へ使うのが基本の愛称となります。年上の友人に使うこともありますが、師に対して使うことはまずありえません。ヨウとっての拾因は尊敬の対象というよりも、親しみを感じる友人や家族に近いものなのでしょう。もしかしたらヨウは拾因と自分の近さを本能的に察していたのかもしれません。

 

記憶力悪いねヨウは

 ヨウはマグメルの用語からクーの名前までなんでも忘れます。いわゆる話を進めるのに便利な設定というものです。ゼロがマグメルの設定を説明するのにも、作品として後で明かしたい設定を隠しておくのにも便利です。

 

これがダーナの繭
マグメルでも特別な場所さ

クスク諸島でダーナの繭が発生したのは拾因の故意によるものだという疑惑は晴れていません。繭がなければヨウとクーは再会できなかったかもしれないことは、拾因の計画の方向性を推察する上での重要な手がかりとなりそうです。

 

また負けたの?

幼いヨウとクーが喧嘩した時のコメントです。
拾因はヨウにエリンと接触しないように忠告していましたが、聖国真類の子供と出会ったことを告げられた後もしばし悩んでその相手と喧嘩し続けることを止めませんでした。相手がクーであることを察したのでしょうが、その時拾因の胸にはどんな想いが去来したのでしょうか。

 

ヨウは本当に逃げるのが上手だなぁ

幼いヨウとクーが喧嘩した時のコメントです。

拾因も黒い瞳のヨウも逃げ上手でした。しかし拾因の死体が発見されている以上、やむを得ない事情の故か自分の感情に従った故か、彼は最後まで逃げ続けることはできなかったのです。

 

もしあの人を見つけたら
その時は頼むよ

ヨウが人界に戻された後の行動についての指示だと思われます。あの人とはおそらくゼロもことでしょう。

 

あの父親と娘
面白いねぇ

中文版を直訳すると「あのオッサンと娘は?」となり、見知った顔を発見したときの言葉だと思われます。おそらくオーフィスとトトのことでしょう。ヨウが親子と出会ったことを忘れた理由に裏があるのかどうかはまだわかりません。

 

神名阿と原皇には関わるなよ

 この世界の拾因にとってはこの2つの勢力は邪魔者です。黒い瞳のヨウと、その世界のティトールとの関係はどうなったのでしょうか?そして別個体とは言え、なぜ2つの世界でティトールの立場は異なるのでしょうか?もしかしたら拾因が何か関与したのかもしれません。

 

これは喜びの顔さ

拾因はよく「~の顔」という表現を使います。仮面を被っているのであろう他人の前ではもちろんのこと、素顔で接しているはずのヨウの前でさえもよく使います。

拾因が白髪であることと合わせて考えると、家族を失った精神的ショックで上手く表情をつくることができなくなったのかもしれません。

 

現実構造の限界は
永遠の構造なんだよ

中文版を直訳すると「現実構造の極致とは永遠の現実なんだよ」となります。現実の物体だと思われていたものが実は現実構造だと発覚するといった展開がこの先にあるのかもしれません。

 

その剣 ヨウと相性が
いいみたいだね

中文版を直訳すると「その品物の持ち主のおかげで、ヨウを助けられたのかもね」となります。 ヨウが危険生物の腹から脱出する際に手に入れた愛用の剣と、その元の持ち主についての言及でしょう。

 

もう少しだよヨウ

修行中の師弟らしい会話です。

 

頼んだよ

あの約束……

拾因が願った「世界を救う」という約束が、現在のヨウにとっては一番の指針となっています。

群青のマグメル第36話感想 ~謎の鍵とは

第36話 二つの鍵 20P

追記 原題:承载过去之钥 (直訳:過去の鍵の重みを支える)

完全に中文版を追い越して掲載されている第36話です。

救助依頼の対象者はムダジの方でなくトトの方でしたね。男性と一緒に裸踊りをマスターしたということでムダジだと思ってしまい、まんまとミスリードに引っかかってしまいました。ムダジのところに来たシルエットがヨウではなく読者がそう誤認するように演出されたエリンだった時点で気が付くべきだったかもしれません。今思えばトトの裸踊りの情報とは今回の脱衣と同じく原皇からのハニートラップの一環だということになります。
トトのサービスシーンは貧乳娘の洗脳ストリップ(闇堕ち眼風味)というものすごいシチュエーションで初見は嬉しく思うよりただインパクトを感じることしか出来ませんでした。しかしヨウがそれには全く釣られずにお土産に釣られてしまうところが実に彼らしくて頼もしく、私も少し冷静になれました。ヨウの反応に対しトトと同じく原皇の端末になっているスケルガーゴンがビキビキ来ている様子もユーモラスです。では落ち着いたところで改めてトトをよく見てみましょう。貧乳でスレンダーな体型に泣きぼくろのように見える原皇の紋章がアダルトさを添えることでアンバランスなエロスが生まれています。上半身すべて脱いでいるのに肝心なところは見せないことでバストのなだらかなラインを際立たせているのも貧乳を逆手に取っていて高ポイントです。個人的にはもう少し恥じらいがあったほうが嬉しいのですが、それは中身があのオープンスケベな彼女、ティトールである以上は仕方がないでしょう。

そうです。ティトールはやはり原皇と同一人物であったのです。原皇の名前が明言されるシーンではブレスという日本語版で追加された名前が挟まっていることで少しだけ台詞の繋がりが読み取りづらくなっていますが、まだ出版されていない中文版では普通に「原皇」「安帝图儿」(「原皇」「ティトール」)という流れになっていると思われるので、原皇のティトールという名前を拾因から聞いたのを思い出すなどしていてヨウも知っているというだけのことですね。日本語版での原皇の名前はブレス・ティトールだと考えておけばいいのかもしれません。ただしティトールとは言ってもトーン髪でないことや話している内容から、第33・34話の彼女とは限りなく同ポジションの別個体であると断定してしまっていいでしょう。今回はこれまで謎とされてきた設定の多くが明かされ、ほのめかされるだけだった疑問点にもある程度の方向性が見えるようになりました。また、翻訳の際に省略してしまった設定で後の展開に関わりそうな要素のいくつかが提示し直されてもいます。

一方でトトが前から持っていた鍵に加え、原皇が拾因の死体の傍から見つけた鍵という思いもよらなかった謎が出てきました。これにヨウが拾因から貰いゼロにあげたあの鍵を足せば、合計3本の非常によく似た鍵があることになります。とりあえず整理してみると、原皇が拾った鍵は本当にただの鍵なのでしょうし、トトの物もそうでしょう。もし仕掛けがあるとしたら、原皇が今回確認せずに、ヨウから渡される際にゼロが意味深な予感を覚えたあの鍵に何かがあるのかもしれません。拾因が永続する現実構造の模索をしていたらしいことも意味深です。

今回のヨウは拾因の情報が原皇によってダシに使われたということで、珍しく終始余裕がなく不機嫌で、相当に怒っています。助けられた自覚がまだないとは言え、スケルガーゴンを攻撃するヨウのただならない迫力にトトが震え上がってしまう程です。いくら表面上はいつも通り振る舞えるようになったといっても、ヨウにとって拾因の死が与えた傷はまだまだ根深いですね。

ムダジの遭難も後で何らかの回収をするのでしょうがどういう形になるかはまだわからないです。前回新たに出てきてた話題で未回収のものとしては、神明阿一族のうまくいっていない第8大隊の後始末とやらがあるので、そのあたりを絡めてくるのかもしれません。

明かされた謎

  • 第33・34話の世界が今回の話と同一世界ならば、登場人物の成長などの様子から第36話以前であることはありえず、原皇が宝箱を開封して小切手を持ち去ってしまったので第36話以降であることもありえない。従って第33・34話の世界と第35・36話の世界は別の世界である。登場人物の外見などから考えて、第1~32話と第35・36話の世界、そして第33・34話の世界という2つの並行世界が存在している。
  • ティトールとは原皇ブレスの名前の一部だが、この世界の原皇と第33・34話のティトールは別個体である。
  • ビックトー親子とヨウ・拾因は過去に接触していたために、トトとヨウには互いにどことなく見覚えがあった。

(再)提示された疑問点

  • ヨウと拾因の外見がよく似ている理由。
  • ヨウは拾因のことを自分との類似性も含めてどの程度理解しているのか。
  • 偽造不可能な材料でできているはずなのにほぼ同一の鍵が3本存在する理由。
  • 原皇がヨウの構造力を解析したがった具体的な理由とその結果。
  • ビックトー親子とヨウ・拾因の接触の際に何が起きていたのか。

日本語版では省略されていたが提示し直された設定

  • 小切手の入った宝箱をマグメルに設置したのはオーフィス・ビックトー
  • ヨウと拾因は雰囲気や構造力の質が似ている。

 

2017/06/04 翻訳について追記

中文版について確認しました。

やはり日本語版で「原皇ブレス」「ティトール」となっていた部分は、中文版では「原皇」「安帝图儿」となっていました。なお、この部分で「原皇」が「原白王」という表記になっているのはただの誤植だそうです。

また「二つの鍵」というサブタイトルは、確かに今回出てくる鍵は2本なのですが、まるで「群青のマグメル」全体で今までに出てきた鍵が2本だと断定しているかのような印象を与えてしまうためあまり好ましくないかもしれません。

もう一箇所だけ中文版との比較で気になった点は原皇の能力に関する説明です。私は日本語版を読んだ時点では、原皇自身の構造はあの分析のための幻想構造で、他生物を端末とする力は構造力とは別種のものかもしれないと考えていました。しかし中文版では怪獣を使役するのに余計に構造力を消費したと書かれており、やはり原皇の端末化の能力は構造力によるものであるようです。また、13Pの「これは私の幻想構造」という台詞も、中文版では「这是朕手下的幻想构造。」であり、「これは私の管理下にある幻想構造」という意味です。この台詞は分析の幻想構造が原皇自身のものであるというより、原皇が端末化している構造者のものか原皇の配下の構造者のものであると解釈するほうが適当だと思います。どちらの場合でも原皇が実質的に自由に使える幻想構造であるため日本語版の台詞も間違いとは言い切れないのですが、誰がどんな能力を使えるかが重要となる能力バトルものでは、こうした微細な差異が後々に大きく影響してくることがあります。