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『屍者の13月』第13話感想 ~忘川と三川

第13話 三川の従事 28P

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西暦500年で姜明子は旧友が法屍者となっていることを突き止め、彼らが法主を務める忘川法門を消し去りました。

前回の不逞軍人は度々兵士が消えるという噂の犯人は目の前にいる女(に化けた姜明子)ではと疑いましたが、真犯人は法術で姿を隠した忘川術院でした。軍人の暴虐を訴える趙炎の言い分は筋が通っていますし、ある程度本気でもあるのでしょう。しかし本当の目的は法屍者となった上官宵に生贄を捧げることだと姜明子に看破されます。

日本語版だと上官宵のことを姜明子が宵と呼び趙炎が姉さんと呼んでいます。そのため上官宵と趙炎の関係が確定できません。中文版だと姜明子が上官宵と呼び趙炎が师姐(師姐)と呼んでいるので、2人は親類ではなく段星煉・周六晴と同じ姉弟弟子の関係だとわかります。上官は希少な姓ですが、武侠小説『小李飛刀』の上官金虹・上官飛親子など、フィクションではそれなりによく見かける姓です。

三者視点から軍人と忘川法門を比較するなら前者のほうが醜悪だと言えなくもありません。実際に姜明子は行きがかりの不逞軍人をためらいもせず殺害しました。しかし獣の生死に無関心な彼の目的は人間社会の善悪などに置かれておらず、あくまで法屍者を根絶し、宿命に終止符を打つことにあります。かつての旧友で筋の通った言い訳を使う相手だろうと、屍者や屍者を匿う者は滅する覚悟を固めています。

ただし常人と価値観の違う姜明子とはいえども、今回の討滅には複雑な感情を覗かせています。回想からして、かつての姜明子と趙炎・上官宵は年が近いためか兄弟のような交遊を持っていたようです。それが西暦500年では強大な仙人である姜明子は若いままで、強くとも姜明子ほどではない趙炎は老いぼれています。そして上官宵は趙炎の口ぶりからすると2年前に老衰死し、万物屍仙(不屍王)の血が出現したことで蘇って、若い外見となったようです。3人の立場は昔と大きく変わってしまいました。こもごもの情とそれ故の悲憤は姜明子と趙炎・上官宵のお互いが感じてるようです。しかしそれでもいざ殺し合うとなれば覚悟を決めて潔くなれるところは武人らしくて小気味いいですね。演出も大胆な見開きの構図が決まっていて格好良いです。黒山村のような粘着質でじっとりした常人同士の殺し合いとはテイストが全く違います。また姜明子は屍者を法主が匿った忘川法門を消し去るにしても、一門皆殺しなどにはせず、弟子たちに対しては記憶と知識を奪うに留めます。

前々回の第11話で西暦2020年の三川市には巨大な岩が鎮座していることが描写されており、それが今回で彼らの戦いにより残されたものだと判明しました。忘川術院のあった場所がその後の三川市です。さらに段星煉が読んでいた高皓光の日記によれば、これから高皓光も三川鎮に訪れて何らかの事件に遭遇するようです。3人の伝承者の運命がどう絡んでいくのか楽しみです。