群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第79話感想 ~進路の選択

第79話 “いざ”の時 12P

ヨウたちの側の、前々回の続きに話は戻ります。ヨウたちの側とティトールの側の描写が数話ごとに交互に行われていますが、端末であるゼロを通じて両局面でティトールがリンクしているので、視点が散漫になることなく読み進められます。クライマックスではこのリンクが鍵になるような展開も期待できるだけに先が楽しみです。

前回が大増ページの48Pだっただけに、今回は減ページの12Pとなっています。

腹の内の向かう先

ヨウとクーは直接の脅威であり、地下1800mの空洞まで2人とゼロの体を拉致した黒獄小隊との対峙を余儀なくされます。

まずはお互いに出方を探り、双方の勢力の性格が出た会話の応酬が行われます。黒獄小隊副隊長でこの場のリーダーでもあるカーフェは、いつも通りの慇懃無礼な言動ながらも任務は忠実に遂行し、集団でクーを攻撃しようと隊員へ促します。しかし愚連隊的な個性の強さを持つ隊員たちが次々タイマンを希望し、話の腰を折られて苦笑させられてしまうところに、チームワークの凸凹さとそれ故の息の合い方が感じられて面白いです。タイマンしたくないと言う黒曜も、チームのためでなく自分のために主張しているとわかるのがいいですね。

ヨウとの会話ではカーフェの洞察力と底意地の悪さがはっきりと出ており、こちらも魅力のある会話です。応じるヨウも絶体絶命だろうと飄々としているふてぶてしさを見せてくれ、頼りがいがあります。曲者同士の駆け引きに惹き付けられる場面です。

地下から抜け出す道

黒獄小隊からヨウたちが総攻撃を受ける見開きでは、右上に挿入された朝食の溢れる皿のコマの効果で、アップからロングに切り替わるダイナミックさと一瞬の出来事であることが強調され、緊迫感があります。クーはヨウをかばいながら逃走しつつ現実構造での攻撃をしのぎきっていますし、ヨウの方も足手まといを自覚しながらもゼロを抱えて走り続けていて、お互いに出せる限りの力を合わせる熱い展開です。対して、語りかけながら追ってくるカーフェの不気味さも面白いです。なおかつ一連のセリフで現状と彼らの目的の確認をさせてくれるのも読者として嬉しいポイントでした。

クーの攻撃の十八番である龍息穿甲弾もこの場面では面白い使われ方をします。攻撃とみせて距離を空けさせ身構えさせたところで、縦横無尽に周囲に穴を穿って撹乱し、その穴のひとつから逃走するという作戦です。黒獄小隊の意表を突けたようで、一旦の足止めに成功しました。どの程度時間を稼げたのかはまだ不明瞭ですが、この隙に態勢を整えられれば逃亡の成功率はぐっと上がるはずです。

ヨウたちは現在地下1800mの空洞に連れ去られていますが、カーフェはたとえ命と引換えでも力を貸してくれるとは思えないので、自力で地上に出るか連絡を取るかする必要があります。危機的状況での地下空洞からの脱出といういかにも探検漫画らしい展開です。空気があることからするとここは地上と繋がる巨大洞窟の一部かもしれず、だとすればなおさらに探検の舞台にはうってつけです。ただ、現状だとエリンと構造力は使用できずとも強靭な身体を持つ構造者である2人ができることの幅に予想がつかないので、クーに具体的な計画を語ってもらうことでこの漫画なりのリアリティレベルを知りたいです。龍息穿甲弾による掘削のみで地上に到達できるのか、掘削は他の枝分かれした部分にたどり着ける程度で基本的には空洞をたどっていく必要があるのか、といった部分です。ゼロを端末としたティトールの力も加わればますます可能性が広がります。往々にして最初の計画は変更を余儀なくされるものですが、それでも極限状態で目的を果たすために試行錯誤を繰り返すのが探検の醍醐味です。なのでそれを楽しむためにもより多くの情報を知りたいところですね。