群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第83話感想 ~追う者と追われる者の思惑

第83話 優先順位 12P

第80話以来に聖国真類の強者会の動向が描かれます。複数の局面で事態が進行する興味深い状況ですが、減ページが続く中では少々もどかしくもあります。

地下の捜索隊

ティトール・ヨウ・クーを捜索する部隊の直接の指揮は引き続きサイが取っています。第80話での様子も合わせて考えると、黒い上衣で、中心に縦線が走った円形のバッジらしいものを左胸につけているのが部隊の正規のメンバーのようです。彼らは聖国真類の軍や警官などに相当する身分か、強者会直属の組織の人員なのでしょう。ただ、この制服らしい格好でない真類もミュフェを含め数人が捜索に参加しているので、彼らの社会での身分や職分が厳格に分離されているわけではなさそうです。強者会という統治組織の性質からしても、原則より個人の裁量や実力に重きを置く傾向はかなり強いと思われます。

また、今回の冒頭では『群青のマグメル』という作品の性質を考えるにあたって興味深い場面があります。聖国真類が使役するハリモグラに似た巨大生物が地中を掘り抜けてから捜索隊を体外に降ろすまでの一連の動きが丸々2P費やされてじっくり描かれています。架空の生物と架空の民族の生活での関わりはファンタジー要素の強い冒険ものの魅力であり、それが説明でなく描写によって丁寧に表現されていると感じました。話のつかみに相応しく力の入った場面だといえます。この後の捜索隊を背に乗せて地下空洞を前進する様子も印象深いです。

地下と地上の強者会

強者会のメンバーの描写も丁寧です。

職務は堅実に果たしつつ私生活での天然ぶりがうかがえるサイは相変わらず面白いです。

対して、フォウル国との同盟に反対するなどヨウたちの邪魔かつ粗暴な振る舞いの目立っていたトワは、彼なりに分別のあるところが描かれます。親しみの持てる新たな面が見えてきました。チンピラめいて偉ぶっている風なキャラだけに、クーと自分の実力について正確に把握できていると判明したのは好印象です。差し迫った状況である以上、味方につけようとしている相手が無能かどうかは好感を左右する重要なポイントになります。ラーストの口車に乗せられ気味な小物っぽさも、作戦遂行にプラスに働いている間は愛嬌として好意的に受け取れます。

乗せている側のラーストは流石の強者会主席らしい有能ぶりを発揮しています。クーの潜在力を一族の繁栄に関わるものと判断し、必要ならば孫の命より優先できると断言する冷徹さも立場に相応しいものです。いわゆる人間味のないキャラクターが、いけすかないが偉大な先達でもあるポジションについているのはいいですね。クーの実力を認めつつ自分の遥か下と認識しているのも、反感を覚えるよりむしろいつか越えるべき壁としての高みにワクワクできます。強者会入りを目指すクーを応援するにあたって燃える要素です。

カーフェの思惑

逃走中のカーフェは完全に振り切るための計画があるようです。まだ誘拐犯としての正体もバレていませんし、打てる手は多いですね。今は超級危険生物(クエスタ)の巣を目指していますが具体的には何をするつもりなのでしょう。捜索隊のひとりがショック状態に陥ってしまったことも意味ありげです。地下空間に毒が含まれていたとはいえ構造者にはあまり関係ない程度だったはずですが、もしそれが効いてしまったのだとしたら、やはりカーフェの策略が影響しているのでしょうか。