群青のマグメル ~情報収集と感想

『群青のマグメル』と第年秒先生を非公式に応援

トンデモ仮説:34話のクーは喰い現貯める者の中の人に

考察

①クーは因果限界を伝って人界に来た

転移する以前のダーナの繭の種はクーの監視対象であった。しかし種が遭難中のスカイホエールに転移し人界に運ばれてしまったため、クーも種を追って人界にやって来た。スカイホエールが極星社クスク支部に到着するまでは、種の運搬自体は問題なく行われたとみられることから種と一緒にスカイホエールに転移したとは考えられない。クーは人間と同席してヘリに乗ることをヨウたちとさえ拒否しており、もし種とともに転移していたならば航行が不可能になるほどのトラブルを起こしたはずである。

クーは種の転移以外の方法で人界にやって来たはずだが、第24話でそれまでマグメル外縁に行ったことがなく外縁の要塞都市を見たこともないと発言している。そのため人界に来る際には通常の方法で陸や海、空を渡ったわけではない。

他のエリン達と同様に因果限界を伝って行けば空間を超えて人界に来ることができる。

②17話でクーの言った間諜とは喰い現貯める者のこと

第17話でクーは自分がダーナの繭の現状についてかなり詳しい情報を得ている理由について「種の傍に間諜を置いていたからだ」と述べている。

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人界に帰還したスカイホエールと連続して喰い現貯める者(クラウド・ボルグ)の目が描写されていることから、喰い現貯める者は本体のクーとは異なり種ととともにスカイホエールに転移して人界にやってきたと解釈が可能である。

喰い現貯める者は第23話においてクーがヨウとの通信に利用したように、視聴覚をはじめとした感覚をクーと共有できる。また喰い現貯める者は頭部のみに縮小することや浮遊が可能なのでスカイホエールの人間に気付かれずに種を監視することもできる。

自分の幻想構造を間諜と呼ぶのはやや擬人化した言い方にも感じられるが、クーは他の場面でも喰い現貯める者を自分から独立した存在であるように語ることがある。

③喰い現貯める者は自律行動ができる

第20話においてゼロは喰い現貯める者のことを「独立して戦闘可能な珍しい幻想」だと解析している。単純に本体から離れての操作・攻撃が行えるというだけでは幻想構造の性質として珍しくないので、文字通りに独立して行動可能な性質が珍しいということを解説している可能性がある。

第24話でクーはゼロの部屋からゲームを勝手に奪ったことを咎められた際に「我は入ってないぞ 幻想構造が取ってきたんだ」と発言している。ゼロの言ったようにただの言い訳とも取れる言葉だが、言い訳でないとしたら喰い現貯める者がクーの判断とは無関係に自己判断で取ってきたことになる。この後喰い現貯める者はクーと2人(?)でゲームに興じていた。

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④喰い現貯める者はコントロールの難しい特異な幻想構造

幻想構造は基本的に能力に目覚めた後のコントロールが容易だとされている。しかしヨウがマグメルで拾因とともに生活している間のクーは既に構造能力自体には目覚めていたにもかかわらず幻想構造を使用することが出来なかった。

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中文版ではその時点では幻想構造をまだ完全覚醒させていないという発言がある。

喰い現貯める者は力の掌握が簡単なはずの幻想構造にもかかわらず、天才のクーが完全にコントロールできるようになるまで時間を必要とした。 

⑤第11話時点のクーはヨウやエミリアの情報を持っていない

第11話時点の人界ではダーナの繭以外に行ったことのないクーはヨウについての情報を持っておらず、構造者の知識があるというだけで完全に初対面のエミリアを強引に同行させ幾度もヨウについて聞き出そうとした。この時点でクーが持っている情報は因果限界の主である拾因と弟子のヨウがこの事件に関わっている可能性があるといった程度のものでしかない。少なくともヨウの居場所に全く心当たりはない。

⑥喰い現貯める者の紋章は第34話のクーの服の紋章と一致

クー・ヤガ・クラン

喰い現貯める者の紋章は上に膨らむXであり、下に膨らむXである第32話までのクーの実物の服の紋章とは不一致である。一致するのは第34話のクーの衣類の紋章である。
もし第33・34話がそれ以前の世界の並行世界だとすると、喰い現貯める者は並行世界のクーと繋がりを持つ可能性がある。

⑦喰い現貯める者は仮面をかぶっている

喰い現貯める者(クラウド・ボルグ)

下に口があることから淡色(薄紫?)の顔のように見えている部分は仮面である。

⑧マスクを被ったクーが特殊な描写をされた場面がある

クー・ヤガ・クラン

クー・ヤガ・クラン

第20・21話でクーはヨウに対して正体を隠すためにマスクを被った。その際にヨウに対する怒りが特に高まったと思しき場面でのみ通常のクーとは異なる瞳孔と服の紋章の描写が行われた。虹彩の境界が消失した目の描き方も、第32話以前ではこのコマのみしかない実物の服のXが上に膨らむ描き方も、喰い現貯める者と同一の描き方である。

まとめ

①第7話での拾人館への喰い現貯める者の襲撃はクーの制御下を離れた喰い現貯める者が自分の意思で行った

第7話の襲撃は拾人館の屋上で行われたため、もしクーが喰い現貯める者と感覚を共有させていたらヨウの居場所を知ることができたはずである。ヨウは襲撃後に拾人館へ戻り、エミリア救出の依頼を受けて拾人館に留まっている様子を喰い現貯める者から注視されてさえいる。しかしクーは急いで拾人館に向かうような素振りを見せておらず、ヨウの所在の情報も得ていない。

襲撃時はクーがまだマグメルにいたため距離が離れすぎていた、または因果限界を伝って空間的に不安定となっていたなどの理由で喰い現貯める者がクーの制御下を離れていたと考えるのが自然である。ヨウの落下後に追撃がなかったのは竜息穿甲弾の構造によって構造力が単独行動での限界に達したためと考えられる。「屋上で俺達を襲った現実構造者のエリンはあんたか」と問いかけられた際にクーが答えあぐねたのはクーが幻想構造者で襲ったのが幻想構造のためとも解釈できるが、襲撃のことを知らなかったためと解釈することもできる。

つまり喰い現貯める者は第7話の戦闘における大規模な構造やヨウを視界から逃さないようにするなどの複雑な駆け引きを自律的に行っていると考えられる。これは意思と読んで差し支えないほどの高度な判断能力を持つといえる。

実は喰い現貯める者に意思があると考えると、通常は仮面を被った状態、則ち正体を隠した状態だというのは示唆的である。襲撃時のシルエットのみしか確認できない状態の喰い現貯める者は一見これ以上ないほど正体を隠しているようでありながら、仮面を実質的に失うことでその正体をさらけ出した状態にある。

②喰い現貯める者がヨウを襲撃したのは並行世界のヨウである拾因に対して遺恨があるから

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  ※拾因の一人称の翻訳は30話以降「俺」に修正

喰い現貯める者が初めて言語的な意思を発露させた際にまず呼んだのが拾因の名であり強い執着をうかがわせる。ヨウの名を呼んだのはインの次である。もしクーの意思が喰い現貯める者を通じて表れたというならクーが拾因よりもヨウを優先して探したのは不自然になる。また中文版ではクー自身が拾因をイン(因)と呼んだ場面はない。

喰い現貯める者がヨウに対して発したのは殺意や敵意に類する感情であるが、拾因の正体は並行世界のヨウである可能性が高く、そのヨウはその世界のクーと敵対する立場となっていた。更に拾因が自分のせいで家族を守れなかったと発言したことから拾因の世界のクーは拾因が関係して死亡したと考えるのが妥当であり、拾因の行動が直接の死の原因となった可能性さえある。

幼いクーがヨウと拾因を目撃した際に喰い現貯める者は拾因の正体に気付き、遺恨を深めたと考えられる。

そして仮面を被り正体を隠したのは喰い現貯める者だけではない。それは他ならぬ喰い現貯める者の本体であるクー自身である。

クーがマスクを被った状態でヨウと対峙して憤りを特に昂らせた際に、クーの目は虹彩の境界を失って喰い現貯める者と全く同じ描き方をされた。これは喰い現貯める者の怒りがクーの怒りを侵食した描写と解釈できる。さらにこの場面の1コマでのみ衣服の紋章が上に膨らむXとなっていた。俯瞰視点での遠近法による変形というのが表向きの理由だろうが、紋章が喰い現貯める者の構造物の証であるものに変化したということは、このコマにおいてクーは喰い現貯める者の怒りに完全に飲み込まれて支配・被支配の関係が完全に転倒させられてることを意味する。

この後クーはヨウからの攻撃の直撃を受けかけて一度頭を少し冷やし、ヨウと対峙し直した際には通常の描写方法に戻っていた。

結論 喰い現貯める者には並行世界のクーの魂が入っている

ヨウは異形のエリンから殺意をぶつけられたと感じたのは誤りであり、幻想構造を通じて旧友から参戦布告されたにすぎないと結論づけた。

しかしその結論こそが誤りなのではないだろうか?死して幻想構造というこれ以上ないほどの異形と化したエリン、それこそが喰い現貯める者の正体なのだ。ヨウは幻想構造とクーの気配が同じと感じたがそれも当然である。なぜなら喰い現貯める者の真実の姿とは、クーの構造力を食らい現れたもう一人のクーそのものなのだから。

 

でもこの仮説はただの考えすぎだと思います。

クーが幼なじみだと読者に気付かれないようにわざと省いた描写や、異形のエリン=双生タイタンというミスリードのための描写を都合のいいように拡大解釈しただけの仮説です。
それでももしゼロの背景についてもこの説に沿って考えるなら並行世界のゼロは死んでしまって3歩後ろの子供たちの6号になっているという仮説でも立てられるでしょうか。言動の端々や第10.5話の鍵探しと第33話の宝箱探しの対比関係から、第32話までのゼロの方が第33・34話のゼロより「大人」に思えはしますし、ゼロには構造物を通じて経験の継承があると考えてみるのも面白いかもしれません。

 

仮説通りの場合のダーナの繭編でのクーの行動

クーが喰い現貯める者にダーナの繭の種を監視させる  
極星社のスカイホエールがマグメルで遭難 1話
繭の種が喰い現貯める者と一緒にスカイホエールへ転移  
スカイホエールがクスク支部ヘ帰還 5話
種が萌芽してダーナの繭が完成 6話
喰い現貯める者が自己判断でヨウとゼロを襲撃 7話
クーが因果限界を伝ってダーナの繭へ到着する  
クーがエミリアの前に現れる 9話
クーがエミリアを認識する 11話
クーが双生タイタンから離れるためにクスク支部から移動 12話
因果限界の前でクーがヨウに対してエミリアを人質にする 19話
クーが喰い現貯める者を制御してヨウと戦闘 20話
クーとヨウの戦闘が終了 22話

引用

1 5話 20P 単行本第1巻(kobo版) 145P
2 24話 14P    
3 22話 18P (中文版・漫画行+)  
4 20話 10P 単行本第3巻(kobo版) 95P
5 11話 20P 単行本第2巻(kobo版) 109P
6 34話 11P    
7 21話 7P 単行本第3巻(kobo版) 112P
8 20話 10P 単行本第3巻(kobo版) 95P
9 20話 19P 単行本第3巻(kobo版) 104P
10 7話 19P 単行本第1巻(kobo版) 194P
11 8話 2P 単行本第2巻(kobo版) 7P
12 8話 3P 単行本第2巻(kobo版) 8P