群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第25話振り返り感想 ~人がマグメルに抱く夢

第25話 父娘のロマン 20P

原題:再加几千如何?(直訳:あと何千でどうかな?)

扉絵のエミリアのキグルミの07は、第1話でエミリアとヨウの乗ったスカイホエールが07号だったことによる小ネタでしょう。ゼロの構造物は06までなので、ヒロイン対決をする2人で番号がかぶらないようになっています。
ヨウはけろりと強盗団を壊滅させますが、これだけ常人離れした強さなのに1000エクス(15000円前後)節約できたことに一喜一憂する姿は妙に小市民的で笑えてしまいます。その後も延々と値切りと譲歩が繰り返されるのですが、ヨウのこうした守銭奴振りもクーの冷静なツッコミやフォローが入ることで初期と比べると格段に面白く受け入れられるようになり、きちんとギャグとして昇華されています。正直に言うと初期のキャラが掴みきれていないうちの守銭奴ネタは、強いヨウに対して対等の立場からツッコミを入れられる相手がいなかったこともあって日本人の自分には引いてしまうところがあったのですが(中国では守銭奴ネタは定番中の定番らしいので向こうではむしろ良いツカミになっているのでしょう)、ネタとしての完成度が上がることで行動が変わらないままでも印象は全く違ったものとなっています。ヨウという人物像の一貫性は保たれつつも、読者からは格段に感情移入をしやすいキャラクターと感じられるようになりました。
また、エリンなのにも関わらずヨウ以上に「まともな人間」らしい行動を取るクーとの対比も面白いです。クーにとっても人間がマグメルに夢を抱くことそのものは好ましく感じられるようで、ロマンを語るトトに惜しげもなく高価な希少品を渡します。マグメル深部に侵攻する人間とは敵対する立場にあり人間を下賤な生物だと「考えて」はいても、下賤な生物だと「感じて」いるわけではないことがうかがえる細やかな描写です。これに限らずクーの行動は基本的に育ちの良さを感じさせるというか、まともに教育されたことが伝わるものが多いですね。戦闘種族という性質上もしかしたら肉親は既に他界しているのかもしれませんが、それでも社会の中できちんと育まれたのであろうことがよくわかります。逆説的ではありますが、クーが聖国真類という己の種族とマグメルで果たすべき役割に強い自負心を持っていることにも強く納得させられます。
この場面では普段はヨウ以外にはいつも毒舌なゼロも他人を褒めていて、珍しく好感が持てる描写となっています。ちなみに中文版ではトトの夢に感心するクーとゼロに対してトトの払った労力への値切りに後ろめたく思うヨウといった印象があり、ヨウの現実主義者さが強調されています。
余談とはなりますが、中文版によるとトトのいう七聖教の出てくる漫画の作者は白送命となっています。第27・28話に出てくる漫画家のムダジの名前は中文版では白送死なのでおそらく同一人物でしょう。誤植なのかペンネームを変えたなどの設定があるのかは現時点では判断できませんね。