群青のマグメル~情報収集と感想

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群青のマグメル 第22話振り返り感想 ~解明された謎と新たな謎

第22話 幻想の閉幕 26P

原題:在空想消失之前(直訳:消失の前を空想している)

ダーナの繭編の最終話です。クーとヨウの過去が明かされ、今まですっきりとは理解できなかった事柄の多くが納得できるようになります。

まずは前回のヨウとクーの対峙を受けての2人の対決があります。クーのミサイルの構造による攻撃が左下へ向かう読者の目線移動と一致して、勢いに乗って描写されます。それに対するヨウの巨大な遍く左手が目線移動と完全に正対した方向での迎撃体制に入ることで、勢いが滞ることなく正面対決への期待が高められて次の見開きへと移ります。その後のコマでカメラの位置が変わっても双方の進行方向は維持されたままスピード感と緊張感のある演出が続きますが、ヨウはミサイルとの激突をあえて避け、遍く左手を縮小させて喰い現貯める者を直接攻撃することでその無力化に成功します。ヨウの全力とは力押しではなく、頭の回転の速さと特異な構造を制御しきる技量だということがよく表れています。

ここでヨウはクーの背後から遍く左手で反撃を図るのですが、先ほどとは正反対に遍く左手の左下へ向かう勢いに乗った正拳が、生身のクーの掌に真っ向から受け止められてしまいます。ヨウが全力を出せていないのは間違いないとはいえ、トン単位の威力を出す遍く左手を余裕で受け止めるのですからクーの身体能力は計り知れません。遠隔攻撃が得意というと日本の能力バトルものでは接近戦に弱く設定されがちですが、クーの場合は単純なパワーだけなら遠近ともに隙がありませんね。この短い激突で搦手に優れるヨウとストレートに戦闘力の高いクーという両者の特性が端的に表されています。

そしてマスクが外れてヨウがクーの正体に思い至り、因縁が明らかになった上での絶望的な第二ラウンドを読者が予想してページをめくっていくと、クーがヨウの手当をしているという意外な展開が待ち受けています。読者もゼロとエミリアの驚きに思わず共感してしまいます。ですが2人を納得させるためのヨウからの説明があり、クー視点でのヨウに振り回された過去の告白もあって、読者にもダーナの繭編でのクーの行動や動機がすんなり飲み込めるようになります。また繭事件での要救助者を連合国が見捨てたことを匂わせて人間同士での不協和を見せてから、エリンであるクーが生存者の居場所をヨウに教え結果的に救助の手助けとなることで、人間対エリンという単純な対立関係は一面的なものにすぎないことが明示されます。これらの描写によりクーの仲間入りが読者にも抵抗なく受け入れられます。

クーとヨウの関係は『群青のマグメル』の今後のストーリーで重要な焦点となっていきそうですが、この時点でのクーの仲間入りの意味として大きいのはヨウと対等な視点を持つ仲間が初めて表れたことです。幼少期をはじめとした過去がかなり解明されたことも含めて、ヨウの歳相応で人間らしい面の描写がぐっと増えていきます。回想での幼いヨウとクーがとても子供らしくて可愛いのも素晴らしいですね。

また拾因を信じきってその行動に疑問を持たないヨウに対して、クーの拾因をより客観的で否定的に考える視点が入ることも重要です。拾因はヨウにさえ明かせない目的を持って行動しており、多少は正体の推察ができるようになった現在でも謎のほうが多い人物です。今回でクーの素性が明らかになったかわりに、クーの視点で明確化した拾因の謎が今後の展開を牽引してく要素の1つになります。ヨウとクーの会話で拾因が現実構造上での幻想構造の効果の永続を試みていたと中文版では明らかになったことも、今後の布石となることが予想されます。また拾因の目的の1つに贖罪があるという情報も出てきますが、ダーナの繭の市街地での出現に関与したという疑惑が事実なら一般人の死者を大量に出すことを想定していたということになり、拾因が「誰」に贖罪するために「誰」を犠牲にするつもりかということは気に留めておいたほうが良さそうです。

ダーナの繭編の最後のページでは訳知り気に拾人館の面々を見つめる人物が何度かの登場をします。この謎の人物はこれまでの話の流れとヨウを知っていそうな人物ということで拾因かとミスリードさせられますが、神明阿アミルという正体とヨウとは直接の面識がないという事実がわかってから読むと、別の謎が生じてきます。神明阿アミルが語っている「相変わらず」勘の鋭い「拾人館」の人物が誰なのかということです。おそらく黒い瞳のヨウ、つまり拾因のことではないかと思うのですが、だとすれば神明阿アミルはいつ、どこで、拾人館を営んでいた頃の拾因を知ることが出来たのでしょうか。