群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル 第21話振り返り感想 ~ヨウの強さ

第21話 未完の過去 20P

原題:最后的空想(直訳:最後の空想)

この回ではヨウが善戦はしつつも事前のダメージのせいで一方的に追い詰められ、クーの戦闘能力の高さが読者に印象付けられます。喰い現貯める者は現実構造なら構造が起こした現象からでも吸収ができるということで、まさに現実構造者の天敵ですね。大量の銃火器やミサイルの構造物も現実構造者との戦いで収集していったのだと考えると相当に場数も踏んでいることがうかがえます。おそらく相手は黒獄小隊でしょうか。

ただこの回で本当に重要なのはそんな勝ち目のなさそうな相手でも諦めず活路を見出そうとするヨウの姿勢のほうですね。最後の構造もただ力を振り絞っただけでなく、作戦を立てた上で立ち向かったことが次回わかります。流石にこの場合はクーが本気だったら対抗しようがありませんでしたが、普段ならばどんな相手でも勝てはしなくとも死にはしないだろうと思わせてくれるいい意味での往生際の悪さが単に優れた構造者であることにとどまらないヨウの最大の強さです。

戦闘能力といえば第29話から本格登場となる黒獄小隊のあの3人もこの回で登場してその実力の一端を見せています。ヨウが相当に傷めつけたとはいえ、通常の軍隊では歯のたたない双生タイタン相手に余裕の態度さえ取って三重合構という能力で圧倒したようです。神明阿一族がこの先ヨウたちの前に立ちはだかるであろうことを考えると、この3人はなかなかの強敵となりそうです。

この回のヨウ対クーは命の掛かったバトルと読者に見せかけて実は違うわけですが、違うと知って失った分の緊張感を差し引いても、2人の事情がわかった今に読んだ方が素直に駆け引きが楽しめますね。何せ初めて読んだ時はバトル自体は迫力を持って描かれているのに、いかにも因縁のある敵であるはずのクーの事情がよくわからずにもどかしい部分があったものです。それも次回のオチを知ればすぐに腑に落ちる点ではあるのですが。

この回は次回のオチに向けての説明や布石の意訳が多いのですが、意訳が上手く機能している回だと思います。「ヨウ(又)」の呼び方などのどうしても中文版のニュアンスが伝えにくい部分を別の形で補えています。この回で明らかになった「喰い現貯める者(クラウド・ボルグ)」というクーの能力名もよく考えてあるアレンジですね。アイルランド神話用語と能力の性質がきちんと織り込んであってこだわりを感じます。元の中文版ではクー・ヤガ・クランの名前が牙牙格双魄で能力名が真实收割者です。こちらも「双魄」(魂魄がふたつ?)の部分や「真実の収穫者」(現実構造を収穫する能力だがあえて真実という言葉を使っている?また「收割者」とは一般に魂の収穫者である死神のことを指す)という意味の能力であることが深読みできそうで、色々と考察したくなる名称です。