群青のマグメル 第1話振り返り感想 ~謎と魅力
第1話 拾人館 50P
原題:拾人馆
中文版の第一部に当たる部分が終わったことですし、時間のある時にまだ書いていない回の感想を書こうと思います。書く時点での知識を前提としていますので、後の話のネタバレも含みます。
『群青のマグメル』第一話はマグメル(=聖洲)という謎と魅力にあふれた新大陸の紹介から始まります。そして主人公と思われた探検家がいきなり秒殺されるというブラックユーモアにあふれた展開がそれに続きます。本当の主人公であるヨウが日常のこととしてその死に対処することでシニカルなおかしさが生まれるのですが、同時にマグメルが非常に危険な場所でこの作品の世界観そのものもなかなかにシビアであることが提示されます。
話の本筋はマグメルや拾人者の知識が少なくて読者目線に近いエミリアを通じて、この時はまだ謎の多かったヨウの一端に触れていくことですね。ヨウの顔も今より悪人風で得体が知れないように描かれています。そんなヨウがやはりよくわかりませんが何かすごい能力を見せることで、エミリアはヨウに強く惹かれるようになります。エミリアはヨウの謎と魅力にあふれた姿をマグメルに重ねます。読者にとっても第一部はヨウとマグメルの両方の真実がシンクロしながら明らかになっていく内容となっています。
キャラクターや設定が把握できるようになって『群青のマグメル』独自の魅力が明確になるのはもう少し先ですが、初読当時も絵や演出の上手さのおかげでとりあえず先を読んでみようという気持ちになりました。スケルガーゴンが倒されるシーンだけでなく、その直前のヨウが構造の能力で穿甲弾の発射台を作るというややもすれば地味になりそうなシーンに力を込めて演出していることにも、主人公のキャラクターを魅せることに対するセンスを感じました。スレンダー妹タイプのゼロとグラマーお姉さんタイプのエミリアという2人の魅力の異なる女性がどちらも可愛らしく描けているのも少年漫画としてポイントが高かったです。
連載が続くと良かれ悪かれキャラクターや設定が変わってくる作品は多いですが、マグメルは新しくわかるようになったことで印象が変わる部分はあっても根本的な軸にブレはないですね。連載初期の内には全体のストーリー構成はできていたそうなので、きちんと各要素について練り上げているのがうかがえます。
日本語版関連ではこの回は書くべきこと多いので箇条書きにします。
- ジャンプ+で掲載している第一話は以降の回と違って描き文字が中国語のままか活字となっていますが、単行本収録分ではちゃんとした描き文字に修正されています。
- 16Pで「サ◯ヤ人」という言葉が出てきますが原文では「泰坦(タイタン)」 です。タイタンとは一般名詞としては巨人のことですが、『群青のマグメル』でタイタンといえば双生タイタンらエリンのことを指していると思うべきでしょう。
- 19Pの「帰ってくるのは1/3」は翻訳の際のミスで、単行本では「帰ってくるのは2/3」に修正されています。
- 20Pでマグメルの「万無斥力」の設定の一部が説明されますが、日本語版では「斥力」を「拒絶する力」と意訳したため31話の説明が少し回りくどくなりました。「万無斥力」は「万有引力」のもじりでしょう。