群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル 第8話振り返り感想 ~拾又之瞳

第8話 ダーナの歓待 20P

原題:空想一梦(直訳:空想一夢)

ヨウの夢の中に子供のヨウと一緒に「イン」と呼ばれる謎の人物が登場します。これまでほのめかされるだけだったヨウの過去が明らかになり始めると同時に新たな謎が出てきました。

ヨウと「イン」つまり拾因が話していたのは拾因の家族についてです。ヨウが彼らの所在について問い掛けると拾因は「わからない…… もうこの世にいないから」と返答します。これは日本語版だと少し意味深なものに読めてしまいますが、中文版のニュアンスだと、拾因の家族はもうこの世にいない、つまり死んでしまったと素直にとらえたほうが良さそうです。

拾因はシルエットのみの後ろ姿で家族を守ることができなかったと淡々と語ります。そして自分の愚かさを嘲る時にやっと顔の輪郭が浮かび上がり、彼の本心が顕になったことが暗示されます。拾因は過去に自責の念を感じてしまうことがあり当時も深い後悔を滲ませていたことがわかります。拾因が死亡したことが明らかになった現在でも彼が何かを画策していたらしいことは『群青のマグメル』のストーリー全体の要となっていますが、その目的・動機の焦点は「守れなかった家族」というものにありそうです。ちなみに日本語版で「家族」と訳された語句は中文版では「家人」となっていますが、この言葉は日本語の家族よりやや指す範囲が広くて、比喩的なものだけでなく辞書的なものとしても「仲間」という意味を含んでいます。

拾因がヨウに賢い人になれと言葉をかけるとともに、彼の黒い瞳を切れ長のまぶたがゆっくりと覆い隠す描写があり、ヨウの淡い色の瞳から切れ長のまぶたがゆっくりと開かれる描写が続くことで時間は現在へと戻ります。明らかにヨウと拾因の類似性を示唆する描写ですが、それは単なる師弟の繋がりという枠を超えたものを表しているように思えます。だとすれば2人の本当の関係とは一体何なのでしょうか?

ヨウは拾因に対して賢い人間にはなれそうもないと申し訳なく思いながらダーナの繭に突入します。