群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル 第20話振り返り感想 ~キャラクターの能力の個性

第20話 現と幻 20P

原題:空想之幻(直訳:空想の幻)

ダーナの繭編ラストバトルのヨウ対クーです。このバトルでのクーには変なこじつけが出来そうな描写もあるのですが、とりあえずそれ抜きでの感想です。

第7話で拾人館を急襲した異形のエリンの正体が人型の幻想構造だったと判明し、その本体かつ特別性が何度も強調された聖国真類だということで、クーの敵としての格の高さが十分示されます。しかもエミリアを人質に取られた上に目の前で危害を加えられた(加えるふりをされた)ことで撤退はできずこの場で立ち向かうしかないと明確になり、ラストバトルのお膳立が完全に整えられた状態となります。

ちなみに第20~22話でヨウが「エミリア」と口に出して言う部分のほとんどが中文版では「客人(お客さん)」となっており、ヨウが個人的な知り合いを助けようとしたというよりも拾人者として救助対象者を助けに来たという印象が強いです。前回ヨウが拾人者をしている動機を話したことを受けて、ヨウが自分の仕事に文字通り命懸けのプロ意識を持っていることを示す場面ですね。読者としては救助対象者がよく知っているエミリアである方が盛り上がりますが、ヨウは仮に全く知らない人が対象者でも必死に助けようとしたのでしょう。

 クーの幻想構造である喰い現貯める者はゼロによると一応は独立しての戦闘もできるそうですがヨウのような実力者と戦えるほどではなく、基本的には銃火器などの構造を出現させる際の仲介として利用されています。クーは能力上あまり動かずに遠距離から敵を攻撃できますが、動かずに敵を圧倒するというのは中国でも武侠ものを中心として伝統的な強者の描写であるそうです。日本においては山田風太郎をはじめとする忍術ものが能力バトル漫画に大きな影響を与えていると言われるように、中国では武侠ものの伝統である気功で触れずに相手を吹き飛ばす、法力による怪光線、御剣術といって氣で空中に多数の剣を浮かせて飛ばす攻撃法などの魅せ方が今時のバトルものでも取り入れられていると言います。クーの能力はこうした伝統的で派手な魅せ方と現代中国で定番のミリタリー要素の両方が、日本の少年漫画的な能力バトルに組み合わされています。

対してヨウは銃火器系の現実構造はあまり持たず、香港アクション映画風の体術や頭脳面での活躍が中心で技巧派な印象がありますね。今回も一旦はクーの大火力に追いつめられますが、因果限界を遮蔽物として利用して背後から燃料車構造で攻撃を図るという機転を発揮してくれます。