群青のマグメル ~情報収集と感想

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群青のマグメル第38話感想 ~乱戦を制するのは

第38話 構造戦 20P

追記 原題:第三方登场 (直訳:第三者の登場)

前回からクーンという聖国真類が構造の能力によって理解しようとしている何かを巡ってのバトル回です。基本的には2対5、ラストはより多くの頭数が加わってのバトルということで、相当な乱戦となっています。

ミュフェの構造者としての力も読者に対して初めて披露されます。ミュフェは現実構造者ということですが、これまでに人間が出現させたリアル系の現実構造とは異なり、エリンらしいケレン味のある現実構造を出現させます。デザインはいわゆる巨大ロボットのようであるだけでなく、角や瞳孔など聖国真類(というかクー?)のモチーフの装飾が施され武器も山刀風と独特のものであり、民族特有の呪術人形のような趣きがあって面白いです。一から聖国真類が製造した物を元にしているのか、人類が製造して聖国真類が鹵獲・改造した物を元にしているのかは定かではありませんが、聖国真類が高い技術力を持っていることもうかがえます。また、今回ミュフェが構造するのは巨大人型兵器や刃の大量に付いた盾など無骨な物ばかりですが、彼女の紋章であるらしい蝶々のマークは女性的かつ繊細でギャップに可愛らしさがあります。

クーの方は久々の手加減無用での殺し合いということで相当にテンションが高く張り切っています。前回の仲間の女の子にオタク扱いされ押し倒されかけていた姿とは全く違う戦士としての面を存分に見せてくれます。バトルにおいては流石戦闘種族といった高揚ぶりで、これと比べるとダーナの繭でヨウと闘った時はヨウの調子に合わせながらきちんと抑えていたんだと今更ながらに思いました。大量のミサイル類や火器類の構造による破壊力やそれを可能とする構造力の技量も非常に高く、いずれの敵対勢力からも名指しでマークされているだけのことはあります。ただ、エリン同士の闘いだと身体耐久力のこともあって重火器だけでは決め手となりにくいようです。今回転霊類を殺害したのも至近距離からの首の切断によるものでした。なんだかんだでクーも小回りを効かすことはできるのですが、力を誇示したがることもあって大味な攻撃を好むところは詰めの甘さを招きがちです。ヨウがいればこのあたりを補い合えるので上手くいくんですけどね。
そしてエリン同士のバトルもクライマックスか、と思われたところで乱戦を利用して目標物を手中に収めたのは人間である神明阿一族配下の構造者たちです。初めて読んだ時は違和感がありつつも流してしまったのですが、読み返すと4P目の唇に傷のある含み笑いの口元と6P目の聖国真類を舐めたような目線で批評しつつ隙をうかがう両眼が彼らのリーダー格のものであるとわかり、背筋をゾクゾクさせてくれます。感知力が高い描写をされているクーにも気付かれなかった点から、彼ら4人の中に気配を消す機能を含んだ幻想構造の構造者がいそうです。

今回のように、残酷ではあっても正面対決を好むエリンに対し、人類が策略を仕掛けることで自らの悪辣さを顕にするという構図は『群青のマグメル』では度々強調されるものです。そのこともあって私は最終的なラスボスは原皇よりも神明阿アミルの方ではないかと思っているのですが、現時点では唯の空想ですね。また一勢力相手なら十二分に対抗できても、もう一勢力に背後をつかれてしまうという構図は、今の聖国真類が置かれている立場をそのまま表すものでもあります。黒い瞳のヨウのこともあり、クーたち聖国真類の行く末には不安感が高まりますが、それが読者の先の展開に対する興味を煽ってもくれます。
前回神明阿の動向を探ることを決めたヨウに対し、クーの方は神明阿から目標物を奪い返すことが当面の指針となりそうですが、この目標物とは何なのでしょうか。黒い渦巻きの描かれ方やフォウル国の配下は構造者が死ねば逃げるしかないと言われていることから、構造力関連の物なのは間違いないのですがそれ以上はまだ明確にはできません。もしかしたらこれが神明阿のいう拒絶する力を回避しつつ大勢の人類をマグメル深部へ送る方法と関係がある物で、第8大隊の後始末のための目標とも同一の物なのではとは考えていますが、確証はないですね。とりあえず、対神明阿という点でヨウとクーの早めの合流が期待できそうなのは嬉しいです。