群青のマグメル ~情報収集と感想

『群青のマグメル』と第年秒先生を非公式に応援

群青のマグメル 第10話振り返り感想 ~明暗分かれる

第10話 拾人の時 20P

原題:降临空想之国的拾人者(直訳:ダーナの繭に拾人者が降臨する)

前回はあれほど猛獣相手に活躍してみせた探検家達のうち3人があっさりエリンに殺されてしまいました。強身薬や個人の装備程度では対抗できないほどエリンは強力なのだと明示されます。しかもこの場面で出てくるのはエリンの中でも特に不気味な外見をした種族でなかなか恐怖心を煽られます。余談ですがこの2頭身タイプのエリンはおそらくシアバ類という名前の種族ですね。

前回気絶してそのままになっているボルゲーネフを除いて、打つ手の無いまま5人の探検家がエリンに囲まれます。そして状況をきちんと把握できないままむやみに逃げようとしたマックオレムと広はすぐに惨殺されてしまいました。エリンに死体を食べられてしまい、完全に生存の可能性が潰されるという描写もかなりエグいです。

反対に敵の正確な実力を分析できる一徒、冷静に現状を把握するキミアイオン、実力差を目の当たりにしつつも怯えず立ち向える蛍火の3人が生き延びています。2人の死に対する反応でもキミアイオンは広を一度は止めようとする配慮を見せ、蛍火は無策な2人に憤りを持ち、一徒は他人の死などどうでもよく自分の目覚めつつある能力にしか興味が無い、と3人の個性がよく表れています。

そのキャラの立った3人が絶体絶命か、となったところで救助の専門家であるヨウが登場します。前回は扉絵でしか出てない分、今回は薄暗いダーナの繭の中に天井を破って光とともに降臨するという印象深い出番となっています。

今回の扉絵は漫画で主人公がいつも同じ服装なのは同じ服ばかり何着も持っているからだという定番のメタネタですね。ヨウの場合はマグメル用の装備はともかく実は私服も何種類か持っていたりはするのですが。

群青のマグメル 第9話振り返り感想 ~人類が未知に挑み続けることは愚かな行為か

第9話 エリン 20P

原題:探险者的空想(直訳:探検者の空想)

今回はヨウが出てこず、前回の後半から続いて探検家9人とエミリアのそれぞれの現状を描くものとなっています。

ここで探検家9人の中で特に焦点を当てられたのが広という少年探検家です。彼は過去の探検の失敗で自らの実力不足を思い知りマグメルに挑むことを自戒しましたが、ダーナの繭というマグメル以上の未知が現れたことで、マグメル以上の危険が待ち受けていることを知りつつも極星社からの依頼を受けてしまいます。3P目の中段のコマはダーナの繭の噂で持ちきりになりながらもあくまで他人事として日常の生活を送る町の人々と、街にいながらもどこか往来から浮き立つように過ごしている広少年の姿が描写されています。自戒しつつも結局は他人と同じような安寧の中には生きられない探検家としての性を持つことが表れている場面なのでしょう。

しかし広少年自身が実力不足の自分がダーナの繭に挑んだ理由を明確には理解できず、自分を愚かだと思う気持ちを募らせていきます。そしてその予感通りにこの後の話で彼は死んでしまうのですが、彼だけでなく彼が自分とは違うと判断した4人の腕利きの探検家も同じ運命を辿ってしまいました。人類が未知に挑む時には絶対の安全などなく、つまり未知に挑む行為というのは賢い選択とは程遠いところに存在するものなのだと提示されます。

広少年のエピソードは前回のヨウがダーナの繭に突入する際に自分は賢くはなれないと拾因に悔いていた理由を別の視点から補強する形となっています。ヨウは拾因から人の世界に帰るように言われたこともあり、拾人者として依頼人を仲介する形とはいえマグメルから離れられず今まさにそれ以上の未知に挑もうとしている自分を彼の願いに背いていると考えているようです。しかし一方で拾因はヨウに世界を救うようにも願っていたことを鑑みるに、ただ挑まないことを望んだわけではなさそうです。完全に推測となりますが、未知に挑みかつどんな手段を使ってでも生き延びることができるというのが拾因のいう賢い人なのではないかと感じます。いずれにせよ賢くなれというのはヨウの生命を慮った言葉である可能性が高そうです。ではそんな拾因自身はマグメルの最奥で何を手に入れようとして死んだのでしょうか?あるいは死んだことで何かを手に入れたのでしょうか?

前回今回と広少年以外の探検家の見せ場もあり、この時点では誰もが活躍できそうな描写があることで逆に誰が死んでしまってもおかしくないという緊張感が生み出されています。しいて言うなら噛ませ犬的な雰囲気のあるボルゲーネフが一番危険そうに見えましたが、彼はそのギャグキャラ的な性質をもってダーナの繭編を生き延びただけでなく、最後まで生き抜けそうな予感さえ漂わせています。ちなみに中文版ではこの時にボルゲーネフが後に詳しく説明される危険生物ランクの分類に基づいた発言をしていて、この設定は早い時点で存在していたことがわかります。

活躍の目立つキミアイオンは他のメンバーに対して冷静に判断を下しながら、ボルゲーネフに対してエポナの涙を摂取しただけにしては強いという評価をします。これは彼の構造者としての才能が多少なりとも身体強化に働いたためでしょう。蛍火に対して自分と同じと感じたことは日本語版だと抽象的な分意味深ですが、中文版を読むとマグメルでエポナの涙より効果の高い強身薬を摂取したことが同じだと具体的に示されています。おそらく彼女たちは中文版でのみ度々言及される強身薬である狂王蛇の血清を摂取したのでしょう。ただ、2人がマグメル深部での活動に成功できたのは構造者としての資質が表れたためだということは示唆されていそうです。

そして9人の探検家は探索を進める中でエリンというこれ以上ない未知と危険に出会ってしまいます。

この時エミリアもエリンと出会ってしまいます。それは人間の女性の服を着た1人のプーカ類で、人間を食べて回っていたらしいところをもう1人の何者かに一蹴されてしまいます(エリンの単位が「人」でいいのかは微妙なところですがとりあえずこう表記します)。プーカ類は後に出てくる個体も多くが人間のものと同じ衣服を着ていますが、どうやら捕食の効率を上げるために食べた人間の服を奪って着て人間の気を惹く単語を喚いているようです。プーカ類は基本的に人間と異なる言語を使っている表現がなされていますし、この場面のプーカ類も2単語しか人間の言葉を話せていない上に中文版では人間の言葉を真似しようとしていることをクーから馬鹿にされています。普段は人間の文化とは接点が薄いと描写されていることから、人間と同じ服装は人界に来てから手に入れたものと考えるべきでしょう。クーはこの時点では正体不明ですが、結果的に敵のエリンを退けてエミリアを助けたことで味方の登場として読者が期待を持てる引きとなっています。

群青のマグメル 第8話振り返り感想 ~拾又之瞳

第8話 ダーナの歓待 20P

原題:空想一梦(直訳:空想一夢)

ヨウの夢の中に子供のヨウと一緒に「イン」と呼ばれる謎の人物が登場します。これまでほのめかされるだけだったヨウの過去が明らかになり始めると同時に新たな謎が出てきました。

ヨウと「イン」つまり拾因が話していたのは拾因の家族についてです。ヨウが彼らの所在について問い掛けると拾因は「わからない…… もうこの世にいないから」と返答します。これは日本語版だと少し意味深なものに読めてしまいますが、中文版のニュアンスだと、拾因の家族はもうこの世にいない、つまり死んでしまったと素直にとらえたほうが良さそうです。

拾因はシルエットのみの後ろ姿で家族を守ることができなかったと淡々と語ります。そして自分の愚かさを嘲る時にやっと顔の輪郭が浮かび上がり、彼の本心が顕になったことが暗示されます。拾因は過去に自責の念を感じてしまうことがあり当時も深い後悔を滲ませていたことがわかります。拾因が死亡したことが明らかになった現在でも彼が何かを画策していたらしいことは『群青のマグメル』のストーリー全体の要となっていますが、その目的・動機の焦点は「守れなかった家族」というものにありそうです。ちなみに日本語版で「家族」と訳された語句は中文版では「家人」となっていますが、この言葉は日本語の家族よりやや指す範囲が広くて、比喩的なものだけでなく辞書的なものとしても「仲間」という意味を含んでいます。

拾因がヨウに賢い人になれと言葉をかけるとともに、彼の黒い瞳を切れ長のまぶたがゆっくりと覆い隠す描写があり、ヨウの淡い色の瞳から切れ長のまぶたがゆっくりと開かれる描写が続くことで時間は現在へと戻ります。明らかにヨウと拾因の類似性を示唆する描写ですが、それは単なる師弟の繋がりという枠を超えたものを表しているように思えます。だとすれば2人の本当の関係とは一体何なのでしょうか?

ヨウは拾因に対して賢い人間にはなれそうもないと申し訳なく思いながらダーナの繭に突入します。

群青のマグメル 第7話振り返り感想 ~インとヨウを知る者

第7話 急襲 20P

原題:空想之敌(直訳:空想の敵)

『群青のマグメル』初めての本格的なバトル回です。第1話から謎に包まれた能力を持つ構造者として圧倒的な強さを発揮していたヨウですが、今回は敵も構造者ということで今までのようにはいきません。しかもマグメルの原住者といういかにも強敵であるのを予感させる種族が出てくることで、読者にとっては一気にバトル物としての華やかさが期待できるようになりました。

シチュエーションも大勢の人間が生活する市街地の上空で街1つを簡単に壊滅できてしまうような敵を誰にも知られることなく撃退する、という大変燃えるものです。ミサイル(龍息穿甲弾)対ヨウの手装構造の正面対決という構図も熱いですね。バトル物の作品の世界観を構築する上で意外と重要になるのが現実的な武器・兵器がどのくらい脅威となるのかの提示ですが、『群青のマグメル』は比較的に武器・兵器の位置づけが高いです。現実構造の性質上、構造の基になったものの格好良さがそのまま構造者の格好良さに繋がるということもあって、武器・兵器の見せ方には気を使っている印象があります。

そして撃退した敵がヨウの過去のことを知っている?ということが先の展開に興味を引きます。「イン! そして… ヨウ!」の台詞は今見れば拾因とヨウのことなのですが、拾因がシルエットだけで初登場したこの場面だと、初読時はインヨウの名前を力を込めて呼んでいるようにしか見えませんでした。この引きが次回の拾因の初の本格登場に繋がるのですが、2人の名前にはただの偶然でない関係性を勘ぐりたくなってしまいます。

ダーナの繭の探検隊の側では一徒とキミアイオンが何かの陰謀が動いているとこを察知し、有能さを読者に印象づけます。しかし一徒は陰謀や金銭よりも見知らぬ脅威に対して明らかに心惹かれています。ある意味で探検家の鑑と言えるかもしれませんが、惹かれ方がどうにも危険な方向性に見えるのが今後の展開でも気がかりです。

群青のマグメル 第6話振り返り感想 ~顔の見えない顔見せ

第6話 幻想の繭 20P

原題:降临!空想之国!(直訳:降臨!ダーナの繭!)

ダーナの繭編の第1話です。ダーナの繭編が前回の喰い現貯める者の登場を予告編としていたことからわかる通り、このシリーズで一番重要なのはクーの仲間入りですが、その後の『群青のマグメル』全体の展開に関わる様々な要素がダーナの繭編で初めて出てきます。

そして新キャラクターが大勢登場して顔見せをする回なのに、後に主要となるキャラクターが2人(1人と1体)顔を隠しています。『群青のマグメル』は謎解きの要素が散りばめられていて、こういう演出が結構多いですね。この2人の場合は顔を見せない演出をミスリードに使っています。

喰い現貯める者の場合は、ヨウが喰い現貯める者をエリンの幻想構造物と気付かずにエリンそのものと勘違いしたことや、頭の周りについている紐状の組織のせいで、シルエットだけの状態では双生タイタンとの区別が付けづらくなっています。あの厄介そうなエリンを倒せたと読者が思ったら実は……という展開ですね。

神名阿アミルの場合は同じくこのシリーズで初めて出てきて顔をわかりにくく演出している人物である拾因と意図的に混同させようとしてあります。神名阿アミルの最大の特徴のあの目が出てきていない上に、ダーナの繭編のラストシーンで神名阿アミルがヨウのことを知っているらしい口ぶりなのも余計に拾因と思わせるための布石となっていました。アミルの目を出すまでは神名阿一族の名前も出てきていなかったのもそのためですね。名前は出なくても一族の紋章はこの話でも印象に残る登場の仕方をしていてことあるごとに描写されるので、一族の勢力範囲の大きさそのものはうまく伝わるようになっています。

わざと読者に勘違いさせるといえば、極星社からダーナの繭からの救助依頼を受けた9人もいかにも凄腕そうな紹介の仕方をされていますが、その内の5人があっさり死んでしまうのを知ってから見るとなんだかブラックユーモア的なものを感じてしまいますね。

群青のマグメル 第32話までの相関図

単行本収録時の表記変更に対応しています。

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画像の引用

イン ヨウ 31話 14P
ゼロ 2話 15P
拾因 29話 20P
クー・ヤガ・クラン 31話 14P
聖国真類集合図 32話 17P
聖国真類の瞳孔 22話 19P
エミリア・チェスター 1話 48P
極星社社章 1話 20P
神名阿アミ 31話 19P
神名阿一族の紋章 6話 15P
一徒 13話 10P
ボルゲーネフ 13話 10P
キミアイオン 13話 10P
蛍火 27話 3P
ルシス 10.5話 16P
黒獄小隊長官 29話 20P
黒獄小隊隊員上 29話 20P
黒獄小隊隊員下 29話 20P
黒獄小隊隊員集合図 31話 7P
原皇ブレス 29話 8P
原皇ブレスの紋章 26話 1P
フォウル国集合図 29話 6-7P

 

日本から中国の漫画を合法的かつ無料で読む

2018/05/14 追記

『拾又之国』の公式配信サイトの変更

『群青のマグメル(拾又之国)』のアニメ化発表に先立って、「漫画行+」での『拾又之国』の公式配信は終了しました。現在は「快看漫画」という無料漫画配信サイトで条漫版(中国では一般的なフルカラーで1コマずつを左から右(→)に進む縦読みに配置したウェブ配信用の形式)が独占配信されています。快看!(快看漫画)は日本でのアニメ化発表サイトでも下部にクレジットされています。なお色塗りや左から右に進む形式に合わせた一部のコマの反転などの条漫化の作業は専門の業者に外注しているそうです。現在は第26話(『群青のマグメル』の第25話に相当)まで配信されています。

www.kuaikanmanhua.com

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以下の内容は2016年6月3日当時のものとなります。

 

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中国大陸の漫画家である第年秒先生は2007年に読み切りでデビューして以来、ずっと中国で漫画を執筆し発表し続けています。発表作品の内で『5秒童話』と『拾又之国(邦題:群青のマグメル)』は日本でも翻訳されていますが、未翻訳の作品も何作もあります。特に未翻訳の『長安督武司』は第年秒先生の連載デビュー作であると同時に代表作でもあります。これらの作品を日本に居ながらにして読むことはなかなかハードルが高そうに思えますが、読んで理解するためには中国語の習得が必要としても、ただ絵を眺めるだけでいいのなら実は比較的容易に触れる事ができます。というのも中国は違法ダウンロードが横行しすぎていることも手伝い、日本よりずっと早いうちから、ほとんどの出版社は公式にウェブ上での漫画の配信を始めていたからです。もちろん配信で気に入った漫画を購入したり課金したりすることが期待されています。

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中国の悪質な違法ダウンロードサイトの数は非常に多く、日本人がそれらと公式配信を見分けるのはなかなか難しいです。『拾又之国』も公式配信の方法は後で詳しく触れる1種類しかないにもかかわらず、タイトルで検索すると大量の違法サイトがヒットします。誤って違法サイトにアクセスするとウィルスやマルウェアに感染する可能性が高いです。そこで今回は私が確認できた限りでの中国の公式配信サイトを紹介すると同時に、未翻訳の第年秒先生の漫画を軽く紹介してみたいと思います。詳しい紹介はその内に機会があれば行いたいです。

布卡漫画(ブッカーマンガ)

2019/03/20 追記

第年秒先生の中国での所属企業が変更となったため、このサイトでの掲載は現在停止されています。

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 珠海布卡科技有限公司という会社の運営する無料漫画配信サイトで、閲覧に登録の必要はありません。日本の漫画もかなりの数が正式な許可を受けて中国語訳で配信されています。特に一迅社の漫画が充実しており、コミック百合姫の独占配信などはこのサイトの売りであるようです。

 

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パソコンで見る場合は画像の横幅だけがウィンドウサイズに合わせて縮小されるので、迫力は損なわれますがモニターの解像度が低くて潰れてしまう方はスマートフォンのブラウザで見るのをおすすめします。この場合は横幅が固定で縦幅が変動します。スマートフォンのアプリはインストールしようとした際にセキュリティ上好ましくない挙動をするおそれがあるという警告が出たので試していません。

第年秒先生の漫画では『長安督武司(长安督武司)』を33話までと、読み切りの『二想(布卡漫画では二想与念儿という表記)』と『史上最弱英雄伝説(史上最弱英雄传说)』の合計3作を配信しています。全てフルカラーの漫画です。

布卡漫画の『長安督武司』は雑誌の印刷時に使用したデータをそのまま使用しているらしく、単行本収録のものと台詞に違いのあるコマがある他、写植にずれのあるコマが散見されます。また第12話に乱丁があります。有妖气に掲載されている『長安督武司』は簡易モノクロ版ですがこうしたミスは修正されているので、そちらも見てみることをおすすめします。色塗りの不慣れなごく初期の回はかえって簡易モノクロ版のほうが見やすいかもしれません。

長安督武司

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左から右(→)に読みます。

現在でも中国大陸においては第年秒(当時の筆名は胡偉)先生の代表作です。『漫画show』というフルカラー漫画雑誌で連載していました。『漫画show』の看板漫画で第7回金竜賞の最優秀少年漫画賞を受賞するなどなかなかの人気作であったようですが、第39話の時点で『漫画show』が急遽廃刊となり連載を停止せざるを得ない状況のまま数年が過ぎています。この廃刊の際にはきちんとしたフォローがなかったらしく、中国の漫画産業がまだまだ未成熟であることをうかがわせます。

中国唐代(おそらく626~635年ごろ)の長安を舞台としており、武術や絶学(いわゆる仙術的なもの)などの登場する歴史バトルファンジー漫画です。初連載だけあって連載中の画力・演出力の向上が凄まじいです。とりあえず1話分だけ眺めてみるなら総集編的な内容で表現力の安定してきた第27話がおすすめです。帅气=格好良いという意味だとわかっていると第27話の内容が少し理解できます。

ストーリー

世に悪の武がはびこる中、朝廷はこれに対抗すべく大陸全土から絶学の才を持つ武人を集結させた。悪の武を監督・制裁する彼らは督武人と呼ばれ、彼らの組織は督武司と命名された。

主人公の雲心暁はある日突然に離れて暮らしていた双子の弟の雲心耀が殺害されたことを知らされる。長安の督武人であった弟の仇を討つために、弟の残した絶学の能力の移植を受けて犯人と目される真武会の動向を探る雲心暁と長安督武司の面々だったが、長安の神話とさえ評された最強の督武人である雲心曜の死には奇妙な点が幾つも存在した。そして雲心暁自身が誰にも言うことのできないある思惑を秘めていた……。

メインキャラクター

雲心暁(簡体字:云心晓)

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主人公にもかかわらず一番謎の多い人物。

いつもにこやかで社交的な性格だが、時折ひどく冷酷な一面を覗かせる。本心を誰にも明かさずに何かを計画しているようだが、弟の雲心耀と幼なじみの十楠を想う気持ちに偽りはない。

武術に関しては素人で、弟の奇骨(いわゆる仙人骨)を移植されたがまだうまく扱うことができない。作中でのまともな戦闘は未経験で、敵を倒したのも奇骨の力を暴走させた1度きりである。

人前では使用しないが絶学の修行を積んでいたという疑惑がある。

 

馬特·忒弥斯(発音:マート/マット・テミス、簡体字:马特·忒弥斯)

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西域(シルクロード周辺地域)人*1。おそらく18歳。長安督武司司長であり、見た目に反して中原の礼節をわきまえ部下の面倒見も良い。死亡した雲心耀の友人であった。

現在の長安督武司では最も実力のある武人であり、敵の真武会との戦いの最前線に立つ。一流の武術による立ち回りを得意とし、高速移動とその応用の擬似瞬間移動の絶学も習得している。

 

艾絲·美拉達(発音:エス・メラルダ、簡体字:艾丝·美拉达)

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西域人傭兵団の出身でギリシャ語も理解できる。明るく自由気ままで猫のような性格。

非常に好戦的で若干サド気質がある。擬態の絶学により化け猫や虎の力を身にまとうことができる。尾に見立てたワイヤーなどを自由に操作し強力な攻撃を繰り出すことも可能。

 

十楠

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雲心暁・雲心耀兄弟の姉弟子で幼なじみ。柔和な性格だがしっかり者。2年前に十楠、雲心耀、現在は敵側についたとみられる夜凌空ら3人で山を降りて長安で暮していたが、その2年間の記憶が欠落している。

ほとんど仙術と呼べるレベルの医術を習得しており、雲心暁の奇骨移植手術で助手を務めた。

 

二想

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右から左(←)に読みますが、途中まで台詞は横書きです。

2016/07/08に日本でも公開され、こちらに詳しい記事を書きました。

史上最弱英雄伝説

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左から右(→)に読みます。

2019/03/05に日本でも公開され、こちらに詳しい記事を書きました。

有妖气

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中国の漫画投稿サイトですが、日本のPixivやニコニコ動画などと同じように出版社による公式配信の漫画もあります。しばらく読んでいると登録を促すポップアップが表示されますが、リロードなどをすれば登録しなくても読み続けることができます。ニコニコ動画のようなコメント機能があり、邪魔になるのでしたら非表示にしてしまったほうがいいでしょう。

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第年秒先生の漫画では『長安督武司(长安督武司)』が簡易モノクロ版ながら39話分全て掲載されています。一部の番外編もカラーでこちらにのみ掲載されています。また、著作権契約の問題上更新を続けることはできませんでしたが、第40話と第41話の下書きも公開されています。問題の解決する数年後に更新を再開する予定だそうです。

漫画行+

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『拾又之国(邦題:群青のマグメル)』の掲載誌である漫画行の唯一の公式配信アプリです。

Android版はGoogleを通じて配信されていないのでスマートフォンの設定からセキュリティの項目を選び提供元不明アプリのインストール許可を有効にして、apkファイルから直接インストールする必要があります。自動更新に対応していないので自分でアプリのアップデートをする必要もあります。

動作は重いわけではないのですが、かなり癖のある挙動をします。

まず、漫画行は左開きの漫画雑誌にもかかわらず、アプリは右開きの本を前提とした作りになっています。ページのめくり方自体は設定で変えられるのですが、ページ位置バーの表示などはそのままです。見開き表示にすることもできません

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特定のページが読み込めない場合はリロードボタンを連打するか後日読み込み直すと改善される場合があります。

そしてオフラインにすると、アプリを起動していなくてもその度に警告が表示され大変うざったいです。

ちなみに第20話以前の話では乱丁も多いです。

『拾又之国』だけでなく、『5秒童話』や『多米诺杀手(邦題:殺し屋ドミノ)』も配信されています。

*1:作者のコメントによると马特はエジプト神話の正義と掟の女神マアト(玛亚特)から、忒弥斯はギリシャ神話で同女神に相当するテミス(忒弥斯)から取っており、西アジア系を想定しているという。