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『屍者の13月』第6話感想 ~屍者は語る

第6話 千年の極悪 42P

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西暦1906年の伝承と西暦525年の事実が食い違う事情を法屍者である三眼が語りました。

語られる真相

三眼によれば、実は西暦525年の村人たちは正体不明の屍疫に追い詰められるあまりに白大の家族を惨殺して食らってしまったそうです。時代を考えれば十分にあり得ることです。内容の残虐性もさることながら、サイコホラー的な演出にも抜群の迫力があります。村人が殺害を思い立ったシーンなど思わず息を飲みました。

生き延びた白大は三眼の瀕死の体と丹薬を利用して何かしようとしています。しかしそのことがかえって後世まで彼の名を貶めているデマを膨らませてしまうのでしょう。

白大は主人公である高皓光の遥か過去の人間です。これから凄惨な暴力の連鎖の果てに亡くなったとしても、自分としてはその悲劇を「お話」として割り切って味わうことができます。ただし彼の顛末が、主人公である高皓光や白小小の未来にに及ぼそうとしている影響については、心が寒くなるものがあります。

おしゃべりな屍者

三眼が自分から謎の事情について詳しく語りだしたことは少々残念です。メタ視点からは西暦1906年の伝承と西暦525年の事実の食い違いという謎を知ってはいても、作中の人物は誰もその謎の存在自体を知りようがない状態だったのですからなおさらです。自分としてはできれば高皓光の活躍によって謎に迫ってほしかったです。せめて白小小の歌っていた童謡に実はヒントがあるなどして、メタ視点からでもいいので謎解きを楽しみたいところがありました。

しかしこの後に高皓光の大活躍が待っているのでしたら話は別です。三眼が村の悲劇について語りだしたのは、高皓光たちや白小小を含む村人の悪意をじわじわと育てるためでしょう。大きくなる苗木を見るのが趣味というのはそうした彼の性根を示しているようです。このまま三眼の思い通りになるのは癪なので、どうにか高皓光の活躍でやり込めてほしいです。それに三眼は自分が姜明子と互角に戦ったように語るなど話に脚色を加えていますし、まだ本当の真実はわかりません。

死の因果

白大が村人たちで人体実験を行い死なせたというデマは、1000年以上先の子孫である白小小たちが迫害される原因になってしまいました。デマが伝承される一方、三眼が現れるまで村人は自分の家も含めて家族のように暮らしてきたと白小小は語ります。だからあくまでデマは生贄を選ぶための口実として再認識されたのだと考えられます。白大の家族が少しのきっかけから惨殺されたのと同じです。

ただ、先祖が罪を犯したのだから自分たちは罪を償わなければならないと白小小が一貫して言い続けていたことは、この局面では大変危険です。白小小は村のためにもそう思い込もうと努めてきたのでしょう。歴史や血族関係を重んじる文化的な背景もあります。しかし加害者被害者関係が逆転した現状では、先祖の因果応報という考え方は三眼が村人たちを弄ぶ格好の口実にされかねません。

私はたとえ本当に先祖が罪を犯していたとしても、白小小の一家に村人が生贄の役目を押し付けたことはやはり卑怯だと思います。だから逆に、先祖が罪を犯していようが村人をその点で罪に問うことは理不尽であるはずです。もちろん村人たちの卑怯な行いは咎められるべきです。白小小もこの村にはとても置いていけませんし、身の振り方を考える必要があります。しかしそれは元凶であり実際の仇でもある三眼を倒した後で改めて考えるべきことでしょう。

そうすると、三眼に立ち向かおうとしている高皓光が村人から縛られてしまい、何もできずにいる現状が本当にもどかしいです。今この場で村人の神経を逆撫でし続けることはどう考えても不利になるばかりですが、ただ法術が使えるだけの子供だった高皓光に多くを望むのは酷ですし、正義感自体はまっとうなものだけに、難しい問題です。